折々のチェスのレシピ(423)少しだけ高度な知識をあなたに
以前、ダニッシュ・ギャンビットについて何回かに分けてお伝えしたことがありました。そのダニッシュ・ギャンビットを採用した面白い対局がありました。
黒も出だしはダニッシュ・ギャンビットに対する対応は知っているようでしたが、
ここで痛恨のミスを犯します。もちろん白はこの局面でBxf7とするのが古典的かつ実戦的な手です。Bxf7、同キング、Qd5で駒得にはならないものの黒のキングのキャスリングを不可能にできるからです。
しかし、白はそんなことには目もくれず、古典的手筋をやりませんでした。あれっ?と思って記譜を追いかけていくと、白は相当意地が悪いというか、無論チェスではそれでいいのですが、相手が嫌がる手を連発します。クイーンを追われたりしながらどんどん悪い形になってしまう黒がよくわかります。
一局を通じて白は一瞬を除いて互角以下の形勢にはなっていません。見てのとおり指了図では白の勝勢です。ダニッシュ・ギャンビットを採用しながらBxf7を指さないという指し方にもちょっと驚きますが、それ以降の執拗なまでの相手へのプレッシャーのかけ方もなかなか見ものです。
この手は決していい手ではありませんが、相手に今後の対応を迫る意味では黒にプレッシャーを掛けています。このポーンをポーンで取ってもいいけど、そうするとクイーンを交換するよという手です。クイーンがいなくては自信がないプレイヤーだと本局のようにナイトを逃がします。
その後に白はQa4としてナイト取りに当てつつc6のポーンをピンするなど黒からすると対応しなくてはいけないような手ばかりが飛んできて一向に自分の駒組みをさせてもらえません。
今回の例の白の指し手は最善手や次善手だけで構成されてはおらず、むしろ悪手に近い手も含まれていますが、実戦的には相手としたらかなり嫌な手が多いはずです。実際、この対局、白が二分以上残して黒が時間切れでした(ブリッツ)。