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折々のチェスのレシピ(627)少しだけ高度な知識をあなたに
今度は別のポーンで紐付けてきた場合です。
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前回のように黒の左辺が開いていないため、すぐにメイトできるような嬉しい筋はありません。その代わりに、保留していたdファイルのポーンがすぐに使えるという利点があります(保留していたポーンをどこで使うかは常に課題ですので)。
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黒がここで大きく形勢を損ねないためには二つの選択肢しかありません。まず、d4の地点で駒を捌き合うことです。
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ここからしばらく黒には有効な攻め手がなく、守りを重視した駒組みにならざるを得ません。つまり白が着々と手を作ることができます。その進行例が、
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これです。これ以外の駒組みになっている時には黒がかなり形勢を損ねている可能性が高くなります。
もうひとつの選択肢は、
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ナイトで浮き駒のポーンを狙ってくる手ですが、Nc3ですぐに受けつつ白はナイトを展開できてしまいます。
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この形になったら白は急いで手を作っていく必要はありません。比較的最近ご紹介しましたが、
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手待ちのような手を指しておきます(いずれ左のルークが使いやすくなるという含みもあります)。黒はここでBe7とするぐらいしかないので、
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守りの性格の強い一手を入れておくことも可能です。
黒のどちらの選択肢でも白がのんびり駒組みができるのは、ひとえに黒がd6としてしまったお陰です。それにより黒は駒の展開に自ら制約をかけてしまっています。これと異なる展開であっても黒がdファイルのポーンをd6としてきた場合には、白は駒組みを急がず、十分な体勢を整えるやすいことが多いです。
ちなみに、
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Bc4やBe3とビショップの活用を考えることもできますが、相手の出方を見てからでも遅くありません。例えば、
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ここでBc4とすればよく、この先黒は窮屈なままの駒組みを強いられ、ミスが出やすくなります。