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【インタビュー】コミュニケーションをなめらかにすればビジネスはもっと良くなる(後編)
前編はこちらからご覧ください。
※2022年11月のインタビューを再掲しています。
「いつでも話し掛けていいですよ」オーラを出すのがハッピーなコミュニケーションの秘訣
さしみ:次は、人とコミュニケーションとるときに、どういうところを大事にされているかについて伺いたいと思います。
橋本:二つあって、一つは「いつでも話し掛けていいです」「いつでもウエルカムです」という空気を出すこと。これは受付の時からずっと大事にしていることです。
受付に私はずっといたわけですが、取り次ぎだけだったらレセプショニストみたいな機械があればいいし、内線電話1台でも目的は果たせるわけです。
でも、私がいる受付という立場には、コンシェルジュ的な要素もあると思っていて、お客さまが何か困ったときに尋ねたい、相談したいという要望に応えられることも役割だと思っています。
社内の人が愚痴を言いに来るということもあるのですが、それも含めて受付はオアシス的な場所であり、役割でもあるんですね。
私も今では、逆にいろいろな受付にお邪魔することが多くなりました。行くたびにやっぱり受付をすごく見てしまうんですけど、「話し掛けるな」オーラを出している人が意外と多いんです。
自分がお金をもらって受付としてこの場にいる価値とは、「何か困れば相談できる」「何かあれば話を聞いてくれる」「何か相談したら解決してくれる」ということにあり、それが受付の本質だと私は思っています。
「いつでも話し掛けてください。何か困っていることはありませんか」と語りかけているような表情であったり、あいさつであったり、本当に細かいことの繰り返しなんですけど、「いつでも話し掛けていいですよ」という空気を出すことは、今もすごく大事にしています。
これは社内外でも、道端でも常に意識しています。
さしみ:道端でも? もう、「日常的に」ということなんですよね。
橋本:そうです。これは習慣なので。(笑)
さしみ:「できるビジネスマンの要素とは何ですか」と聞いたときに、経営者の方などが「いつでも話し掛けられるようにしておくことだ」とよくおっしゃっていました。それが全員できていくと、コミュニケーションが非常に円滑になりますよね。
橋本:そうですね。みんなハッピーになれると思います!
さしみ:それに対して、最近いわれている心理的安全性にも関わることですが、「この人に言ったら怒られそうだから言わないでおこう」みたいな心理状態になると、コミュニケーションをとるどころではなくなりますね。
橋本:そういうのは私、すごくもったいないと思うんです。
「この人、絶対機嫌悪いから今話し掛けるのはよしておこう」みたいに思われると、それは話し掛けようとしていた人にとっても、話し掛けられなかった人にとっても機会損失じゃないですか。
さしみ:まさしくそうですよね。トラブルにもなりますしね。
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リアクションはなるべく早く!が機会を逃さないカギ
橋本:その通りです。
そして大事にしていることのもう一つは、なるべく早くリアクションをする、返事をすることです。
これは先ほどの話にあった「心理的安全性」という話にもつながると思っています。例えば、オンラインだとネットワークが固まるといった現象が起きたりしますが、人は何か質問したり話し掛けたりした後に無言になられると、すごく不安になるものです。
今は非同期コミュニケーションが増えつつあるのですが、リアルタイムにLINEとかメッセンジャーとか、チャットベースで会話ができるツールも増えてきているので、なるべく自分に何か話し掛けられたり連絡が来たりしたときには、可能な限り即レスするようにしています。メール以外はですが。
さしみ:メールは対象外なんですね。
橋本:メールはチャット形式ではないので、やっぱりどうしてもリアルタイムに開いて返信するというのは難しいです。
でも、仕事でほぼ使うチャットはメッセンジャーとSlackなので、今すぐには答えられない内容だったとしても、「ちゃんと見ました。確認して改めて連絡しますね」などのワンリアクションをなるべく早くするようにしています。
そうするのは単純に「忘れてしまうから」という理由もありますが、埋もれてしまってスルーしてしまっているみたいなことにもなりかねないからです。それで、なるべく見た瞬間にすぐに返すということを意識しています。
即答できない場合でも、すぐにリアクションをして「後からちゃんと対応しますね」というスタンスを伝えることは、信頼や安心感を得るためには有効な方法だと思っています。
さしみ:確かに、レスポンスが遅いと機会損失にもなりますしね。
橋本:なりますし、絶対に印象としてプラスではないですよね。
さしみ:メールだとやりにくいということが、チャットツールや他のテクノロジーでは解決できるからこそみんなのレスポンスも早くなり、その習慣ができる。これは今、レセプショニストが提供されているサービスの特性にすごく親和性があると感じました。
橋本:そうですね!ちゃんと統一感が出せている気がします。
アップデートも価値観を持ち続けることも、どちらも大事
さしみ: 起業し、CEOとしてビジョンを広げていく。そんなお立場の中で、事業やサービスなど「こういうのがあったらいいな」と思い付くのはどういう瞬間ですか。
橋本:それは日常にちりばめられていると思っているので、「こういうとき」という限定的な表現がすごく難しいのですが、夢に見たものを「これ、使えそう」と思うことはありますね。夢は結構アイデアを思いつくのに有効です。
さしみ:お告げみたいな感じですね。
橋本:脳内がもう、そうなってしまっているんですかね。(笑)
あと、私は週3~4回ぐらいランニングをしているんですが、イヤホンで音楽は聴きつつもスマホやデジタルからちょっと解放される時間なので、頭をリセットして「今週やらなきゃいけないことなんだっけな」などと結構仕事のことを考えたり、プレゼンの流れとかを考えたりしています。
そういうときにひらめいたりすることもありますし、会食とかでいろいろな経営者の人から話を聞いている中で、「この話を自分の会社とか事業に落とし込んだら、こういう使い方ができそうだな」とか思うこともあります。本当に結構、日常にちりばめられているんです。
さしみ:日常で意識していないと、夢には反映されないですよね。意識しているので夢で出てきたり、無意識にひらめいたりするんですね。
橋本:そうですね。もちろん毎日ではないですけど、ありますね。
さしみ: ビジネスコミュニケーション能力を上げるためにやっているトレーニングや日常的に受けているサービス、読んでいる本、なるべくこういう人に会いにいくなど、やっていることはありますか。
橋本:人に会うことですね。
幅を広げるためにこれから新たに出会う人、一定数起業する前から会っている人、両方に会うようにしています。
量でいうと圧倒的に前者のほうが多いんですけど、昔の自分を知っているとか、起業する前の自分を知っているとか、そういう人と会うことも大事にしています。
さしみ:アップデートしてしまって「昔付き合っていた人には会わない」という方も結構いるとは思うんですが、それでも会われるというのは、そういった縁を大切にしたい気持ちがあったり、新しい気付きがあったりするからですか。
橋本:どちらもあります。人はもちろん変わっていく部分があって、それもすごく大事なことだと思うんですけど、変わってはいけない部分もあると思っています。
でも、日々目まぐるしく生活していたり、会う人が変わってきたりすると、自分でも気付かないうちに変えてはいけない部分や変わってはいけない部分をなくしていきそうな気がします。
昔から私を知っている人などに会うと、昔の自分に引き戻してくれる瞬間があり、ちゃんと昔からの価値観を大事にしなければならないと思えます。それは結構大事なことだと思っています。
さしみ:価値の根源は、しっかり確かめた上でやっていかないといけませんよね。人とコミュニケーションを取ってどんどんアップデートするのはいいですが、「大事なことを忘れてない?」という状態になると、ビジネスをやっていく上でもどんどん自分を失ってしまっていくようで、ちょっと怖いですよね。
橋本:そうですね。そちらの方が大事で忘れがちです。
アップデートは意識しなくても、どんどんされていくじゃないですか。
自分が努力をしたりいろいろな人に会ったり仕事をしたりしていると、いろいろな人から刺激をもらって自動的にアップデートされる部分があるとは思うんですが、変えてはいけない根幹の部分は必ずあるはずです。それを自分で意図的に守っていかないとアップデートばかり大事にしてしまい、どんどんアップデートにシェアを占められてしまいます。
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大事なことは「らしさ」を持ちながら成長し、掛け合わせること
さしみ:そういうところは、採用を拡大して会社を大きくしていく上で、昔からいる社員さんも新しく入ってくる社員さんも大事にしなければいけないということにも通じると感じました。社員さんに対しても、「大事なことを忘れないで欲しい」といった思いがありますか?
橋本:みんなにそうであってほしいと思っています。
「スタートアップで働く人は成長意欲が大事」というように言われます。もちろんすごく大事なんですけど、やっぱりその人らしさみたいなところはなくしてほしくはないです。
「その人らしさを持ちながら、成長できる部分は成長していく」。それが「掛け合わせる」という感じがしていいなと思います。
さしみ:成長と拡大があるからこそ、その土台はしっかり意識しないといけない。それは、リブランディングをしていく上ですごく大事にしている価値観なんですね。
橋本:そうですね。結局、コミュニケーションは人と人が取るものなので、やっぱり人が大事なんです。
さしみ:人を大事にしないと、結局何も成り立たないですよね。
会いにいく人と迎える人がいたり、相談する人と受ける人がいたりする。だからこそ、昔の人にも新しい人にも会うし、価値観も昔のものも新しいものも大事にする。それもコミュニケーションの一つだということですかね。
橋本:確かにそうかもしれないです。コーチングみたいかもしれないですけど、「自分との対話」みたいなことですね。
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ビジネスコミュニケーションのアップデートで、 わたしを、みんなを魅力的に
さしみ: ビジネスのコミュニケーションが円滑になっていくと、社会や組織はどのように変わっていくのでしょうか。
橋本:ポジティブに変わっていくと思っています。
コミュニケーションが弾むと、テンションが上がるじゃないですか。人はテンションが上がると頑張れるし、ポジティブにもなれると私は思っています。社会全体がポジティブになるともちろんビジネスは加速するし、幸福度が上がるし、やっぱり余裕が生まれると思うんです。
そうすると人にも優しくできたり、今まで気付けなかったことに気付けるようになったり、今まで使えなかった時間を新しいことに使ってみることができるようになったりします。そういう循環ができる気がしています。
さしみ:「余裕」という言葉がありましたが、橋本さんご自身も誰からいつ声を掛けられてもいいようにしているということも余裕のひとつなのかなと思います。
レセプショニストが提供されているサービスが広がることによってみんなにもちょっと余裕が生まれ、そのちょっとの余裕がうまく仕事が進むきっかけとなる。やっぱり「余裕」が橋本さんご自身にもあるので、サービスにも反映されるというのかも知れませんね。
橋本:余裕があるからそうなっているのかどうかは分からないですが、私が「すてきだな」と思う人は、心の余裕がある人です。お金があるとかではなくて、魅力的な人には心にゆとりがある。私もそういう人になりたいと思ってやっています。
さしみ:なるほど、それは素敵なことですね。受付の体験から、魅力的な人の心の余裕についてまで、本日はビジネスコミュニケーションに関して伺いました。ありがとうございました。
橋本:ありがとうございました!