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恋の思い出
僕が専門学生のころの話です。
僕には当時、4年ほど前からお付き合いしていた恋人がいました。
ある日、僕と同じ学校に通う女性からデートに誘われる場面から、物語は始まります。
その女性は、別の学科の大人しめの方で、かろうじて名前を知っているくらいでした。
「もし良かったら、デートしてください。」
ー 付き合ってる子がいるから。ごめん。
「それは知ってる。どうしてもダメ?」
ー うん、ダメだね。
(どう考えてもダメだよ。)
「じゃあ、彼女さんがよければいい?」
ー それも、難しいんじゃないかな。
(…この子、本気で言ってるの?)
(恋人公認のデートがあり得るとでも?)
そんな感じで、やんわりお断りしました。
その後、当時お付き合いしていた恋人に、ありのまま話したところ…
「一回くらい行ってきたら?そこでしっかり話して諦めてもらえば良いんじゃない?」
あり得た。
こうして僕は、恋人公認で他の女性とデートをすることになりました。
デートといっても、ショッピングモール内の和食屋さんで食事をするだけという健全プラン。
オシャレなバーでほろ酔いになってしまっては、勘違いや間違いのリスクがあります。
色恋の話はなく、和やかな時間を過ごしました。
僕は改めて「お付き合いはできない」とお伝えして、何事もなくデートを終えました。
それから2ヶ月ほど経った頃には、その女性と学校で顔を合わせると、お話するようになっていました。
そしていつの日か…
「あれ?なんか妙に意識しちゃうぞ?」
と思い始め…
「これが浮気心というやつか?まずいぞ。」
「こんな気持ちで付き合ってて良いのか?」
考えた末…
4年間付き合っていた恋人とお別れしました。
本当に申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
なんとなく半年間は男女交際をしないことを決め、学校の友達にも、あの女性にも、恋人とお別れしたことは伝えませんでした。
「ホタルを観に行こう」
ある日、あの女性に誘われました。
その年はホタルが異常発生しており、無数の光が飛び交う壮観な夜でした。
ホタル観賞の盛んな地域は街灯がないうえに、ほぼ新月だったため、あたりは真っ暗。
並んで歩いていると
その女性はスッと僕の手を握りました。
「これは、私が勝手にしたことだから…。」
実は独り身の僕に、その手を解く理由はなく
「まぁ、これだけ暗いと危ないしね。」
と、浮気男のような台詞を吐きました。
少し後ろめたい気持ちと、胸の高鳴りを抑えて。
独り身になって半年が過ぎた頃。
臨床実習のため、その女性は郊外に下宿していました。
週末のレポート課題を一緒に片付けるという名目で、僕はその女性の下宿先に行きました。
お互いの課題をしながら、会話をしたりお菓子を食べたりして、すっかり夜更けに。
そこで、実は半年前から恋人と別れていたことを明かしました。
その女性は顔を上げることなく、小さな声で呟きました。
「じゃあ…今日は帰らなくていいんだね。」
ということで、今日はみおいちさんの「恋の思い出企画」に参加させて頂きました。
※ 泊まっただけですよ。念のため。