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女子医大を復活させるOGの会有志りぼんの会(通称りぼんの会)の闘いと想い

りぼんの会は2023年9月に発足した東京女子医大卒業生によるグループで、X(旧Twitter)とNoteには次のように自己紹介しています。

『正式名称は「女子医大を復活させるOGの会有志りぼんの会」といいます。復活OG会をベースに女子医大の再生と復活をアシストする小回りのきくチームを結成しました。りぼんはreborn。りぼんの会と呼んでください。りぼんの会のメンバーは、全員が女子医大を卒業し、学内施設で研修を受け、研修後も残って最前線で働いたものたちです。』

2024年12月12日、東京女子医科大学新理事長の清水治氏によって「東京女子医科大学第三者委員会の調査報告書に対する本法人の今後の対応及び方針について」が発表され、14日にはメディア向け説明会が開催されました。

夢にまで見た女子医大の新しい船出にあたり、これまでの私たちの経緯について簡単に振り返っていきたいと思います。なお、2024年10月23日までの役職名はすべて当時のものです。

「りぼんの会」誕生までの経緯

2021年

女子医大で大量の退職者が出ているという記事が週刊誌に出始めたのは2021年4月ですが、それ以前からすでに、私たちのもとに、学内教職員から、給与の削減や大量離職、ボーナスカット、コロナ時の帰休、厳しすぎる懲戒の増加等、これまでにない異変の情報と困惑の声が頻繁に届くようになっていました。そのような中、2021年冬、私たちは特定機能病院再取得に向けてなくてはならなかったはずのPICU(小児集中治療室)に深刻な異変が起きていることを知り、困惑しました。後の第三者委員会報告書でも指摘されているように、PICU(小児集中治療室)とICU(集中治療科)の2つの確立は、プロポフォール事件後の「医療安全の見直し」という大学再生計画の柱の中で最重要課題に据えられていましたし、特定機能病院認定を取り戻して信用と収支の回復を図るという観点からももちろん最重要課題でした。
 そしてほぼ時期を同じくして、2019年4月から女子医大理事長の任についていた卒業生、岩本絹子氏に刑事問題に発展しかねない金銭が絡む深刻で重大な疑惑がある、という情報が伝わってきました。

2022年

2022年2月、母校のおかれた状況が想像以上に深刻であることを鑑み、いてもたってもいられなくなった平成年度卒業の同窓生数人が立ち上がって活動を始めます。そこに、憂慮していたPICU閉鎖という大事件が起きてしまいました。以来、私たちは、多くの院内教職員や、岩本体制理事会から理不尽な理由で排除されてきた院外職員と連絡を取り合い、必要に応じて協力体制を取るようになっていきました。

しかし、強力な立場にある弁護士をアドバイザー役として迎え、公安刑事などの警察OBを雇い入れ、探偵を雇い、学内弁護士の数も増やすなどして圧倒的にパワーアップした内部監査室の執拗な追及等によって、内部協力者は次々と切り捨てられ、内からの声はもう上げるにも上げられない状態へと陥っていきました。

そんな中、4月についに岩本絹子氏の「疑惑のカネ」を標的とした文春砲が放たれます。こんな騒ぎになるまで、岩本理事会の暴走と岩本氏の不正疑惑を阻止・自浄することが出来なかった。私たち卒業生は忸怩たる思いでした。

 6月、当時の本院ICUトップが辞任、残る専任医師たちも順次総辞職する事態が伝わってきました。臨床の前線で頑張る職員にとって畳みかけるような危機の連続です。
この時、何度も話し合って到達した私たちの結論、それが大学外部卒業生有志による「刑事告発」でした。告発するからには会の名称が必要です。2022年8月、私たちはこの会を「女子医大を復活させるOG会」と命名しました。この頃少し仲間が増え、平成卒に昭和後期卒業生も数名が加わりました。

 2022年9月、女子医大理事長岩本絹子氏を被告発者として処罰を求め、告訴署名人7人、賛同者50人からなるOG会の手によってついに刑事告発が行われました。これが「女子医大を復活させるOG会・告発組」です。

 ICU専任医師が去った9月、「医師・看護師の大量離職」「PICUの解体」「本院におけるICU専門医の大量離職とICU体制の崩壊」「1-1-1-3体制問題」(教室人事を教授1-准教授1-講師1-助教3に限定する教育体制の縮小化。A学長が推進した)等山積する問題を受けて、院内7人の教授らと賛同者418名によって質問書・意見書が岩本理事会に提出されました。この質問書・提言書には後に女子医大教職員職員、OG・OB等署名約3500筆が集められて、理事会・評議員会に提出の上、強く改善を求めましたが、大学側は「保留レセプト問題」などに論点をすり替え、7人の教授らを責めるばかりで、変わろうとする姿勢をまったく見せませんでした。 

 このような中、OG会活動は卒業生の中で静かに、しかし確実に広がり続け、12月、活動グループに団塊の世代周辺にあたる卒業生が相当数加わりました。これが「OG会・提言書組」です。

 告発状提出の後も変わらぬ大学理事会の姿勢をみて、OG会の目標は同窓会である至誠会の改革に移行していきます。当時、岩本絹子氏、B理事、C理事の3人は大学理事会に至誠会枠理事として参画していました。この3人の至誠会理事を解任すれば大学理事会の職も解かれる、従って暴走を食い止められるのではないか。当時の私たちはそう考えました。

至誠会は一般社団法人であり、理事よりも社員に強い権限があります。会員によって選出される社員が一定数集まれば理事会に問題点を挙げて改善を求めるなど請求することができます。これを「社員請求」と言います。OG会は社員請求を使って、岩本絹子氏の会長解任と理事B、C両氏の副会長解任を求めることにしました。

 2023年

話し合いを重ねる中、全国の全至誠会員へ女子医大の再生へ向けた提言書を広めようということになり、2023年1月15日、第一弾提言書を至誠会員にむけて郵送しました。「提言書組」の所以です。この提言書は女子医大至誠会改革の必要性・社員選挙へのご協力依頼・選挙のお礼とご報告で、半年かけて合計第5弾まで送付しています。

提言書送付にあたっては、当初の自己資金が不足したため卒業生に広く呼び掛けて寄付のお願いもさせていただき、最終的な寄付総額は2500万円を超えました。卒業生からのご寄付は、弁護士費用、提言書印刷・郵送の費用等に大切に使わせていただきました。

臨時社員総会については東京地方裁判所の立会人制度も使い、できる限り公正公平に実施されるよう腐心しました。

 とても幸いなことに、この活動のさ中、2022年9月に提出した「OG会・告発組」による刑事告発状が2023年3月27日、警察庁捜査二課についに受理され、私たちの活動の大きな後押しとなりました。

 そして4月2日、臨時社員総会が開催され、ついに岩本絹子氏の至誠会理事解任が決議されました。ここからの変革はまるで雪崩のようでした。それだけ卒業生は事態を深刻に捉え、憂慮していたということです。5月の社員選挙では社員メンバーが一新され、総数約90人のうちOG会に賛同する社員が7割を超えて当選しました。

 6月24日の定期社員総会の理事選挙においてB、C氏他岩本体制は徹底的に刷新され、13人の理事による新体制がスタートしました。岩本体制中、至誠会第二病院と本部の事務長を務めていたX氏は6月末に自主退職し、すぐ7月に女子医大経営統括部の要職に就きました。一方、岩本氏の懐刀のY氏は6月で女子医大経営統括部を退職しています。

 しかし、肝心の大学理事は全く変更されませんでした。岩本氏、B氏、C氏はそれまで「至誠会枠」として大学理事を任命されていましたが、岩本氏ほか大学理事会の手によって大学寄附行為(定款に準じるもの)が速やかに改訂された結果、「至誠会枠」は「卒業生枠」に変更となり、3氏とも結局大学理事を続行することになりました。

 8月になると、大学から至誠会に、A学長とD医学部長名義で「至誠会と縁を切る」という通達が届き、卒業生の情報など全く入ってこなくなりました。

 それでも、岩本絹子氏とその仲間から至誠会を取り戻す、という大きなゴールを私たちが達成したことに変わりはありません。しかし、「OG会・提言書組」がいったんその役割を終えることになったのも確かでした。

 ただ、大学に視点を移してみれば解決すべき問題はむしろ大きくなっており、山積され続けていました。そこで、最も古くから活動していたOG会メンバーが再度集結し、女子医大の再生にのみターゲットを絞った本来のチームに回帰して「女子医大を復活させるOGの会有志りぼんの会」、通称「りぼんの会」を発足させ、正確な情報提供と共有のプラットフォームとしてX(旧Twitter)やNoteのアカウントを新たに立ち上げたのです。すなわち、りぼんの会とはOG会の新参者ではなく、最も古くから活動していた最古参のチームであったということです。

 この後、2023年10月、至誠会は岩本氏と側近X氏、Y氏に対し、総額約1億4千万円の返還を求める民事訴訟を起こしました。

 2024年

3月29 日の警視庁捜査二課による家宅捜索以降の流れは、この文章を読んで下さっている皆様もおそらくよくご存じのことではないかと思います。その結果、4月3日に岩本理事会によって第三者委員会の設置が決定されました。そして4か月にわたる調査の後、同委員会は8 月2 日に調査報告書を発表しますが、そこでは女子医大法人の抱える問題に対する、数々の、とても厳しい指摘が述べられていました。

この報告書を受け、8 月7日に岩本絹子氏は理事会で理事長を解任され、8月16日に女子医大のガバナンスの抜本的な見直しに向けて、新生東京女子医科大学のための諮問委員会が設置されました。
2か月間の移行期を経て、10月23日、岩本氏体制での理事会、評議員会全員が辞任し、同日、山中寿学長他新役員が就任されました。そして12月6日、清水治新理事長が選任され、3病院の院長も決定して新体制の本格的スタートとなりました。

 

りぼんの会の活動 2023年9月―現在まで

りぼんの会Xでは、2023年9月10日の第1報をリリースして以来、2024年12月15日までにメンバー全員で知恵を絞って228件の記事をリリースしてきました。大学や卒業生の紹介、女子医大の中で活躍する現役医師の紹介、私立学校法に関する記事などその内容は多岐にわたります。記事の内容は顧問弁護士にすべてリーガルチェックしていただきました。

 2024年3月29日、大学や岩本氏自宅等へ家宅捜索が入ったのは上述した通りです。家宅捜索の規模を考えると、2022年9月告発2023年3月受理の私たちによる刑事告発もまたそのベースにあることは想像に難くありませんでした。この時はりぼんの会メンバーは大学教育棟の前に赴き、実況中継に近い形で卒業生に現場を伝えました。

 りぼんの会の活動はXやNoteでの情報発信だけではありません。ここで詳細にまで触れる事は出来ませんが、文部科学省訪問、第三者委員会・諮問委員会への発言や提言等も積極的に行いました。

 振り返れば足掛け4年にも及ぶ、手弁当の、厳しい、痛みを伴う複雑な戦いで、正直なところまだまだ書ききれないエピソードが山のようにあります。ただ、今の時点で皆様に知っていただきたいことは、この事件は岩本絹子氏というひとりの卒業生によって引き起こされたものであったけれども、問題解決に向けてひたすら邁進した卒業生たちもまた確かに存在していたということ、私たち「りぼんの会」が母校女子医大の復活のために、誠心誠意、そして渾身取り組んできたことです。

 ここまで私たちの活動に賛同し協力して下さった方々には本当に感謝しています。身を粉にして女子医大の復活に取り組んで下さった職員・元職員の方々、そしていま起きている事態をまっすぐに伝えて下さった報道の方々に改めて御礼申し上げます。皆様の励ましや協力があって、最悪の中にも考えうる最善に近い結果に至ったのが今の大学の姿ではないかと思います。ここに至る道に貢献出来たことを私たちは心から誇りに思っています。そしてこれからも母校の発展に協力していく所存です。

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