恋愛のアクセル
先日、中学時代の同級生の男性達とフュージョンのLIVEを聴きに赤レンガ倉庫に行った際、ふとある恋愛について思い出した事があった。
ステージでベースを演奏している男性がとてもイケメンだった。
そんなイケメンのベーシストを見て、20代後半でバイトをしていた銀座のジャズライブのお店で専属で演奏をしていたベーシストの男性もイケメンだったことを思い出した。
そして、バイト仲間の同い年のキョウコちゃんが彼にゾッコンで、付き合ってすぐに半同棲を始めたことを鮮明に思い出した。
なぜ鮮明に思い出したか、それは、遥か昔の27歳の私の感想が、
「27歳でバイトしていて、保証のないミュージシャンと恋愛するってスゴイな」というちょっと辛辣なものだったから。
でも、そんな世知辛い感想を持つほど、その頃の私は切羽詰まっていたのだ。
私は30歳までは自分の夢に邁進すると決めて、10代後半からバイトをしながら演劇活動をしていた。
30歳までと期限を決めていたのは、両親に孫の顔を見せてあげたいという殊勝な気持ちも多少あったけど、シンプルに「年とってからの貧乏は絶対に嫌だ」という気持ちが絶大だった。
うちは宗教にハマった祖母が借金をこさえてしまった影響で、プチ貧乏だった。
貧乏と思わせないように母は精一杯頑張ってくれていたのでプチくらいに思ってはいたけど、その母の影響で私の脳裏に【金持ち俗悪説】が刷り込まれた。
まあ、お金儲けの宗教に騙された祖母の尻拭いをさせられていたのだから、母が「金儲けは罪悪だ」と思う気持ちは理解できる。
祖母は祖父の後妻で、私が幼い頃は母に対する嫁イビリが酷かった。
その祖母が介護状態になった時、それまでのイビリや借金返済を背負わされた恨みから、立場が大逆転した。
その時に、貧しい年寄りで生きる辛さを目の当たりにした私は、お金儲けに対するブロックと同じくらいに、年とってからの貧乏への恐怖が刷り込まれた。
だけど銀座での夜のバイトは、そんな私の価値観を一変させた。
母に刷り込まれた【金持ち俗悪説】が、一瞬にして覆されるほどのカルチャーショックを受けたのだ。
バブルに向かう経済的に追い風の時代だったから、経費使いのエセ金持ちもいっぱい混じっていたけど、音楽事務所が経営しているジャズライブがメインのクラブだったから、ジャズ好きの落ち着いた客層で、「本物の金持ちは俗悪なんかじゃなく、めちゃくちゃカッコイイじゃないか」と、プチ貧乏な27歳の私は思った。
そしてそんな私は、30歳を目前にして7年間半同棲状態だった演出家の彼との生活の先の見えなさに、将来への不安を大きくしていて、「このままでいいのか?」と悩んでいる時だったから、キョウコちゃんの恋愛に対して大いに疑問符が浮かんだのだ。
恋愛感情は長続きしないものだというのは、10代の頃から身近な大人たちを見ていて思っていたし、その後の生活の方が圧倒的に長くて、その生活には確実にお金が必要だということを強く思っていた。
だからアラサーの私は、将来を見据えて、恋愛のアクセルから足を離したのだった。
だからと言って、すでに金持ちな相手を選んだのではなく、生きるパワーが強そうな相手を、ほぼ野生の勘で選んだ。
そんな結婚生活は破綻したけど、でも、私が一番恐怖を抱いていた【年とってからの貧乏】だけは避けられた。
だからあの時の決断を後悔はしていないけど、私の同い年のキョウコちゃんに対する感想が世知辛かったな〜と、イケメンのベーシストを見て思い出したのだった。
アラサーというのは結婚を見据える時期だから、人生の中で一番仕事や恋愛に関して悩む時期だと思う。
だから若い頃のように、勢いで恋愛のアクセルを踏み込んだりしないものだ。
だけど、結婚生活のパートナーとして選ぶ相手には、どうしても恋愛要素を求めてしまうから、そのジレンマで、なかなか恋することもできず、結果結婚にも至らないというケースが多い気がする。
というのを、自分のアラサーの頃を思い出した時に放映スタートした『バチェロレッテ3』を見て、余計に感じた。
『バチェロレッテ』というのは、ハイスペックな男性を大勢の女性が奪い合うという『バチェラー』の逆バージョン。
そしてそのシリーズの第三弾が、prime videoで今月スタートしたのだけど、『バチェロレッテ』史上もっとも炎上する結果になってしまった。
まるで、『東大卒の女性はモテない』という通説を裏付けるような展開で、恋に落ちない男性達が離脱していく結果に。
誰一人恋愛のアクセルをちゃんと踏まないまま、不完全燃焼で終わった。
たったの一度もキュンとしない、稀有な恋愛リアリティーショーだった。
そんな大不評の『バチェロレッテ3』よりも面白いと評判なのが、最近Netflixで配信スタートした男性同士の恋愛リアリティーショー『BOYFRIEND』だ。
確かに!こちらの方が俄然面白い。
共通のセクシュアリティを持ったイケメンの男性達が、共同生活の中で、同じように抱える悩みや不安や戸惑いを、お洒落な暮らしの中で淡々と、でも赤裸々に語っていく。
これは私の個人的偏見だけど、結婚という枠に囚われないからこそ、ごく自然に恋愛のアクセルが踏めているような気がする。
でもね、本人たちは、まだ日本の法律では認められてはいないけど、ちゃんと家族になりたいと思っているんだけどね…。
恋愛観や結婚観って人それぞれだけど、他人と深く関わりたいと思った時には、自己開示してアクセルを踏み込む準備はしないと、何も進まないんだなぁと、同時期に公開された2つの恋愛リアリティーショーを見て感じました。
書き出しからはちょっとズレた着地をしましたが、恋愛から遠のいた立場から、ちょっと俯瞰して見て、恋愛観について書いてみました。
ちなみに、前述の中学の同級生の男性達は、ずっと恋愛アクセル踏みっぱなしの人生で、私を焚き付けてきてちょっと迷惑してます(笑)。
でも、1人はようやく落ち着いて、コロナ禍前に20歳年下の可愛い奥さんをもらったけどね。
最後グタっとなってしまいましたが、お読みいただきありがとうございました。