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本音の対話を重ねてきたからチャレンジできた

rebornの揺さぶるメディア(仮)は、【認知変容によって企業価値を再定義する】をテーマにしています。

今回は、rebornのお客様である株式会社アグレスの福山武さんにお話を伺いました。アグレスは、長野県にある日本で最大の作付面積を誇るほうれん草農家です。そこで1年前に発足した「開拓部」という新規事業を担当する部署で福山さんは働かれています。現在廃棄野菜を活用したカレーペーストを販売するなど、農業の枠を超えた価値提供を行う開拓部ですが、実は開拓部の誕生にはrebornが深く関わっていました…。その経緯を、担当者であるreborn株式会社の田中健士郎とともに振り返っていただきました。インタビュアーは同じくreborn株式会社の小松千波です。


家族を支えるには、仕事を辞めるしかないと思っていた

小松:武さんは「開拓部」という新規事業を担う部署で働かれているんですね。農家さんの中では珍しいポジションかと思いますが、開拓部が出来た経緯について教えてください。

田中:開拓部の誕生のきっかけは、実は武君がアグレスを退職するっていう話が出たことろがスタートだったよね。

武さん:そうですね。当時は家族との時間を優先しないといけない時期で…。奥さんが3人目の子どもを妊娠中だったんですけど、体調を崩してそのまま流産してしまったんです。さらにその後結核にかかってしまい、これはもうアグレスでの仕事を辞めるしかないと考えていました。社内に退職の申し出をして、お世話になった人たちに挨拶も済ませたタイミングで田中さんから電話をもらったんです。「やり方を変えてもう少し続けてみない?」って。

小松:社外の人間が直接退職の引き留めをするというのも珍しいですよね。田中さんはその時どういう思いだったんですか?

田中:当時武君とは一緒に仕事をする機会は少なかったんですが、社内研修などで対話させてもらう中で、全体を俯瞰して見る能力がすごく高いと感じていました。それって組織においてすごく重要なスキルだから、なんとかして仕事を続けて欲しいと思っていたんです。農作業の現場だとどうしてもフレキシブルな働き方を実現するのは難しいので、それなら新規事業のチームを発足させてそのメンバーに加わってもらおうと打診しました。

小松:rebornの大切にしている価値観の中に、「AかBか」ではなく「AもBも」で考えるというのがありますが、まさにそのような発想で生まれた案だったんですね。
大胆な案のように思いますが、柔軟に組織体制を変更したアグレスさんもすごいですね。

田中:元々アグレスさんには、農業に留まらず新しいことにチャレンジする風土がありました。これまではそれを小さな規模で採算度外視でやっていましたが、これを期に事業部化して、しっかり利益も追っていくことを提案したんです。社長である梓さんとも対話を重ねて、アグレスさんもrebornも覚悟を持って新規事業に向き合っていくことを合意しました。

武さん:農業に限らず仕事を続けるのは難しいと感じていたので、まさか新しく部署ができて、自分がそこで働くとは思ってもみなかったです。


欠点だと思っていた自分の性質を前向きに受け入れられた

小松:田中さんから話があった時点で退職の意向はかなり固まっていたように感じますが、どのように受け止められたのでしょうか?

武さん:僕は普段、自分で決意したことを人から説得されて変えるっていうことはまずないんです。でも、これまで田中さんを初めとしたrebornメンバーとの対話を通じて自分がどんな人間か理解して受け入れられてきだ経緯があったので、今回も田中さんがそう言うなら自分にも出来ることがあるのかもしれないと感じていました。

元々自分は何をやっても目立たない「普通」の人間だなと感じていて。仕事も好きだし、一生懸命やるけど、どこかのめり込めずに失敗しない範囲でやっている自分にモヤモヤしていたんです。でも、田中さんにそれは能力であって欠点ではないと教えてもらったんです。

田中:武くんはメタ認知能力が高いが故に、自分が出来ることが何かよく理解していたんです。そしてそんな自分のことも客観視できるから、「自分はがむしゃらに頑張っていない」という自己評価になってしまっていました。でもそれができる人って、現状を疑って改善していけるからすごく貴重なんですよね。

小松:田中さんとの対話を通じて、自分の性質に対する認知が変わって、自己受容が促されていった経緯があったんですね。
新規事業においてメタ認知能力ってすごく活かされますよね。熱量が高い分どうしても盲目的になってしまったり、会社の方向性と足並みが揃わなくてうまくいかないなんて話もよく聞くので、広い視野で舵取りできる人がいるのは強みになりますね。


「コンサル」ではなく同じ目標を背負う「当事者」

小松:これまでとは全く異なる領域へのチャレンジだったと思いますが、実際新規事業に関わってみてどうでしたか?

武さん:ずっと現場で農作業をやってきたので、デスクワークなんてしたことなかったんです。PCもほとんど使ったことがないし、営業のやり方も全く分からなかった。でもその0→1を田中さんはずっとフォローしてくれていました。その方法もいわゆる「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」というようなやり方で、自分でやる意識を持たせてもらえることが自分としてはありがたかったです。

田中:rebornがお客様に関わる時に意識していることとして、「当事者としてやる」でも「オーナーシップを奪わない」という考えがあります。rebornは自分たちのことを「コンサル」「伴走者」「支援者」とは思っていなくて、便宜上そういった言葉を使うことはあるけれど、自分も同じ目標を背負ってやる意識を大切にしています。でも、相手の思考力や意思決定の力まで奪わないように、長期的に開拓部を育てていく視点を忘れないように気を付けていました。
実際1年足らずで生産体制がしっかり整って、目標をきちんと追っていくサイクルも出来上がっているので、本当に素晴らしい成長だと思います。

武さん:発足当初は「商品だけ出来ている」というような状況だったので、ここまでの1年間は覚悟を決めて開拓部を形にすることに注力してきました。やり方が分からなかった営業についても、「まずは人に会ってみる」といったスモールステップを設定することでひとつずつクリアできたかなと思います。

小松:rebornでは「現時点で何ができるか」というスキル面は重要視しないところがありますが、それが表れているエピソードですね。「在り方」さえ整っていれば人はどうとでも変化していけるというのをまさに武さんが体現していると思います。


根底にあったのは「本音の対話」

小松:武さんは今後どんなことを目指していきたいですか?

武さん:開拓部に関わらず、社内でもっと一歩踏み込んだ対話が活発に行われるといいなと思っています。これまで自分が田中さんと関係を築いてこれたのは、いつも本音で対話できていたからだと感じています。だからこそ、今後は自分から社内の人たちと本音で話す役回りを担っていきたいです。
働く人の仲が良い方がいいし、それは誰もが同じ気持ちだと思うんですが、その状態を作るには上部だけの会話ではなく時には言いにくいこともちゃんと伝えることが必要だと思っています。

田中:その点はrebornとしても特に力を入れているところです。人に本音で向き合うってすごくエネルギーのいることで、向き合わなくてもその場では波風立てずにやり過ごせたりするんですよね。その方がスムーズに事が進む感覚すらある。でも、高い目標に向かっていく時ほど、お互いの覚悟をしっかり確認する必要があるし、そこをおろそかにしていると本気度の低い人でもいられる環境になりがちです。
武くんはどんなタイプの人にもスッと懐に入って対話できるスキルが高いので、本音の対話という文化を醸成するキーパーソンとしても活躍してもらいたいと思っています。

小松:まさに俯瞰する力が発揮される領域ですね。
ここまでお話を聞いて、退職を決意していた時点から180度異なるような現在地に武さんがいるってすごく感慨深いなと思いました。

武さん:本当に予想もしていなかった未来でしたが、今の環境がある以上は、自分も周囲に影響を与えながら成長していきたいと思っています。


終わりに

武さんと田中さんの間には、取引先としての関わりというよりも、同じ会社で働く仲間のような雰囲気を感じました。rebornがアグレスさんに提供している価値は、はっきり目に見える形になっているものは少ないですが、本音の対話を通じて人の心に種を植え付けるような作業なのかもしれません。そしてそれが花開くと、文化という形で一気に浸透していきます。
今年度からは組織開発の領域を超えて、事業推進の面でも関りを持たせてもらっているrebornですが、すでに「在り方」を大切にする姿勢や「本音の対話」が根付いている開拓部においては、より数値的な結果となって現れていくことと思います。引き続きrebornはアグレスさんと一緒にありたい姿を実現していきます。

最後までお読みいただきありがとうございました!
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ライター:小松千波
アートディレクション:小松千波

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