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アスリートと生理100人プロジェクト VOL.13 : 世代を超えたチームメイトが語り合う、 リアルな生理問題とその向き合い方


「普通はこうあるべき」をなくし、全ての人が自分の心と身体にあった生き方を選択できる社会を目指す「アスリートと生理100人プロジェクト」。生理を切り口に、競技も個性も悩みもちがうアスリート100人の生き方をお届けします。

第13回目のゲストは文京区が拠点のサッカークラブ・文京LBレディース所属の田中尚子さん、菅原絵里さん、河西静香さんの3人です。

文京LBレディース(以下「文京LB」)は、文京区と東京大学運動会ア式蹴球部の連携によって2015年に創設されたクラブです。中学生から50代まで、そしてサッカー初心者から全国大会経験者までと、多様なメンバー構成が魅力のひとつでもあります。

今回は、このクラブで活動を続けるみなさんに、生理についての悩みやその向き合い方、そしてみなさんが感じる「普通はこうあるべき」についてお伺いしました。

個人差があるからこそ浮かび上がる、多様な生理の受け止め方

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——今日はみなさん、よろしくお願いいたします! まずはみなさんのプロフィールを教えてください。

田中:私はテレビ番組の制作会社に勤務して22年くらい経ちます。今は現場にも出ますが基本的にはプロデューサー業をしています。小学生くらいからはずっとスキーをやっていて大学では体育会のスキー部に所属。実は40歳過ぎてからサッカーを始めました。

菅原​​:私は臨床心理士をやっています。今は現場を離れ、心理系の専門職に向けた専門書を書く仕事をしています。サッカーは小・中学校とやっていたのですが、高校・大学では全くやらず、大学院のときに少しかじって。そこから文京LBレディースができて入部して。トータルすると15年くらいのサッカー歴です。

河西​​:私は今大学2年生です。サッカーは中学の時に始め、文京LBレディースができて参加しました。スポーツはやるのも観るのもめちゃくちゃ好きなので、スポーツ系の学科で楽しく勉強しています。

——ありがとうございます。では早速本題へ。みなさんの生理痛やPMS(月経前症候群)についてお伺いしたいのですが、みなさんは生理のときに身体的な悩みはありますか?

河西:めちゃくちゃおなかが空きます。いくら食べても永遠に食べ続けられる(笑)。

——それは生理中ですか?

河西:生理前も最中も。食べても、食べてもおなかがすくというか。

菅原:それはすごくわかる。おなかがいっぱいになる感じがしないよね。

河西:そうそう。

菅原:私は普段食事には気を付けているんだけど、生理のときは食べ過ぎてすごく身体がむくむというか。それがすごく嫌かな。

田中:私も生理になると甘いものが食べたくなりますね。生理になると下腹部や胸が痛くなって、それがとても不快で。でも歳を取ると共にその不快感は軽くなった気がします。あと34歳で子どもを産んで、それ以降はしばらく生理は止まったし、再開してからも女性的な痛みもずいぶん減りましたね。冷え性もよくなったし、出産していろんなものが変わったような気がします。体質的なこともあるのかもしれないですけどね。

——菅原さんや河西さんは下腹部や胸の痛みなど生理痛はありますか?

菅原:私はちょっとお腹が重いくらいで、あまりないかもしれない。熱っぽいとか身体が火照るとかはあるけど、痛くて動けないとかは全くないですね。

——なるほど。「痛くてどうしようもない!」ってことがないってことですか?

菅原:それが全くないんです。

——それはうらやましい!

河西:実は私も菅原さんと同じ感じなんです。

田中:そうなんだ。それくらい生理って個人差があるものなんですね。

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——そういう違いを知る機会ってなかなかないですからね。ちなみに、みなさんはどんな生理用品を使われていますか?

田中:基本は生理用ナプキンですけど、私は大学時代からタンポンを使い始めました。当時のスキーウェアは今の素材と違って身体にフィットする素材だったから「ナプキンのラインが出てしまう」って気になっていて。なおかつ頻繁にトイレにも行けないからタンポンを使い始めました。

河西:私はタンポンは使ったことがないですね。(菅原)絵理さんは?

菅原:26歳くらいから使い始めたかな。その頃って生理前に貧血っぽくなったり生理で体調を崩したりして体の変化を感じていた時期で。そんなときに年下の子からタンポンがよいと教えてもらったんです。すごく出血が多いタイミングで使ったら少し心配が薄れた感じがして。でもいまだにタンポンは苦手だから、できるだけ使いたくはないんですけどね。

競技中に生理が…あなたならどうする?


——みなさんは文京LBでサッカーを楽しんでいらっしゃいますが、一方で競技をする上で生理に関する悩みってありますか?

河西:試合前にユニフォームで着る白のパンツに生理の血が着いちゃったチームメイトが、そのパンツをトイレで洗っていて、「ああ、厄介だな」って思いましたね。白のパンツはみんな嫌いだと思います。

菅原:ホント同意。

田中:ユニフォームの色は気になりますよね。

——文京LBのユニフォームは水色(シャツ)×白(パンツ)ですが、それは誰が決めているんですか?

菅原:スタッフの男性陣が決めたと思うんでですけど、「白パンツは嫌だ」って話は結構出ていますよね。

河西:そう。みんなで話していますね。

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——白いユニフォームではよく起こる問題ですよね。菅原さんは何か競技をする上での悩みはありますか?

菅原:私は文京区LBレディースができて2年目〜4年目に3年間キャプテンをやっていて、生理のときに体はそんなにきつくはないけど、気分がすごく落ち込んでしまい……。立場的に期待されているのに、気持ちがそれに追いつけないときはつらかったですね。イライラもしちゃうし。チームメイトは私が生理なんて知らないから、単に「キャプテン、今日イライラしている」と思われてしまい、チームの雰囲気を悪くしちゃうことがありましたね。

——なるほど。立場的にもなかなか難しい問題ですよね。田中さんは40歳を過ぎてからサッカーを始められましたが、生理で困ったことありますか?

田中:私はトイレに行くタイミングに悩むかな。サッカーって練習が始まると途中で抜けづらい競技じゃないですか。スキーも同じだけど、スポーツに集中しているようでトイレが気になってしまうことはありますね。それでも歳と共に出血量は減っていくので、染みたり漏れたりする心配はそこまでしなくていいけど、生理はあるから万が一染みちゃっていたらどうしようって。そういう不安はあります。

河西:それ分かります。特に試合だとモチベーションをあげなきゃいけないんだけど、頭の片隅で「いつトイレに行けばいいかな」と思ってしまいますね。

菅原:確かに試合前は思うよね。でも私は練習中だとトイレに行きたくなったら「トイレ行ってくる」って伝えて行くんです。自分が言うと「私も」って言う人が出てくるんから、やっぱりみんな我慢しているんだなって感じますね。

——そういう生理や体のことで悩んだときに、相談できるチームメイトってパッと思いつきますか?

菅原:思いつきます。(田中)尚子​​さんにも相談したことありますよね。

田中文京LBは年代も関係なくいろんな話をしますよ。

——素敵ですね。困った時にそっと悩みを相談できる相手がチームにいる環境は安心感が違いますから。

菅原:文京LBのコーチはずっと男性なのですが、今のコーチはキャプテンに心と体の話を聞いてくれるようになりました。コーチなりに「今日、この子は調子が悪い」とか「今日メンタル的にイマイチだな」とか、そういうことを考えてすごく気を遣ってくれています。ただ、彼らがより私たちの体や心の状態を理解してくれるようにはどうすればいいかって課題もあって、そこは難しいところですね。

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——そういった共有ってなかなかうまく伝えづらいですよね。みなさんはそういった競技中と普段の生活で生理の悩みに違いはありますか?

菅原:サッカーをするときの方が生理は気にならないかも。サッカーに集中しているからだと思うのだけど。

河西:言われてみればそうかもしれないですね。家で何もしてないときは、「あっ、生理だな」って思うけど、サッカーのときは忘れているというか。

田中:私もボールを追いかけているときは気にならないけど、さっき言ったトイレに行くタイミングは頭から消えないですね。仕事は環境に慣れていることもあって「あのタイミングでトイレに行けるかな」って予想ができるから精神的には楽かな。

——私からすると、みなさんの「楽しいから生理を忘れる」ってとても羨ましいです。普段、私もサッカーをしていますけど、実は“楽しいを超えてつらい“みたいな時があるんです。プロになってサッカーが楽しいだけでは済まれない状況になると、ある種で生理痛が言い訳になる時があるというか。だから私も楽しい気持ちだけでサッカーをしていたら生理痛のことを忘れるときがくるのかなって。そういう気持ちでグラウンドに立てることがすごく羨ましいなと思いました。


世の中には男性優位の視点がまだまだある

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——ここでクラブについてのお話を聞かせてください。私は文京LBほどいろんな年代の選手が同じチームでプレーするクラブって見たことがないですし、チームとして結束力が高いところも魅力だと感じています。みなさんにとって文京LBってどんな場所ですか?

河西:普通に生きていたら絶対に関わらなかったであろう人と出会って、必然的に話す機会が生まれる場なのですごくラッキーだと思います。最近まで学生だったチームメイトが社会人になることも多いので、人生の先輩として将来のことを相談もできるのもうれしいですね。

菅原:それってすごくいいことだよね。(河西)静香もそうだけど「中学生だったあの子が大学生になって、今ではお酒を飲むようになるなんて……」ってとても感慨深いというか(笑)。みんな一緒に成長していくようなプロセスを歩んでいることもこのクラブの大きな魅力だと思います。

田中:あと、私みたいに40代を過ぎてサッカーがやれるチャンスを与えてくれる場所ってことも素晴らしいところです。年上・年下なんて関係なく、「そういう視点もあるんだ」ってみんなとの会話で得るものがたくさんある。それはサッカー以外のことでも。それって素晴らしいし素敵だし、私にとってもこのクラブはものすごく大事な場所ですね。

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——めちゃくちゃ素敵ですね! みなさんから“文京LB愛”があふれていて、心から素敵なチームなんだなと思いました。では最後に、これまでのゲストの方々もお伺いした質問をさせてください。私たちReboltは世の中に存在する「普通はこうあるべき」をなくすべくアクションし続けています。これは、創設者である私と内山が「女の子はこうあるべき」「女性はこうあるべき」という「普通」によって、生き方を奪われてきたと感じてきた経験から生まれています。そこで、皆さんが日々の中で感じた「普通はこうあるべき」をお聞きしたいです。

河西:私たちって着替えのときに簡単に服を脱げないじゃないですか。男子ってその場でバッと脱いでバッと着替えるのが許されるけど、私たちはいちいち更衣室に行かないといけない。

菅原:そうですよね。私たちのカテゴリーだと更衣室がない会場が結構ありますよね。そこに矛盾を感じていて。外で着替えられないから試合後の汚れた服で電車に乗らないといけなくて、それはちょっときついなって思いますね。

——そうですよね、物理的に困ることもあるし、「そもそもなんでダメなの?」っていうところもあるから、どこに着地点を見つけるかは難しい問題ですよね。田中さんは何か思いつく「普通はこうあるべき」はありますか?

田中:私はテレビ東京の『FOOT×BRAIN』というサッカー番組の制作にも関わっているのですが、女性視点の企画がもっとメディアでも増えていけばいいと思っています。スポーツの世界も含めて世の中には男性優位な視点がまだまだあるのかなと思います。

——本当にそうですよね。なでしこリーグの選手も口を揃えて「自分たちは取り上げてもらえない」って言っていますし、それが普通になってしまっているのだなと感じていています。ただ、そうは言っても地道に増やしていきたいですよね。

田中:今回、こういう話をして、番組で生理を取り上げたいと思いました。世界の半分の人は基本的に生理を経験をしていると思うととても大事なテーマだし、男性も知る必要があるなってすごく思いました。

——『FOOT×BRAIN』で「アスリート×生理」の企画をぜひ見てみたいです!

田中:その時はご協力をお願いします!

——もちろんです! みなさん今日はありがとうございました!


--------編集後記--------

「それ分かる」と共感が生まれる瞬間があれば、「そうなんだ」と気づきが生まれる瞬間もあり、改めて生理にまつわるモノゴトの捉え方は三者三様なんだと感じずにはいられないインタビューでした。生理の話を通して、3人それぞれの生き方を知る機会にもなり、結果として文京LBというクラブの魅力も伝わる記事になっているのではと思います。

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画像:FOOT×BRAIN 公式Twitterより引用

ちなみに、今回のご縁をきっかけに、2021年9月18日放送のFOOT×BRAINにも出演させていただきました。サッカー番組としては初めての生理特集、SNSでは「この番組のように、もっと生理の話を気軽に話す機会があればいいのに!」等の感想もたくさんいただき嬉しい限りです。

改めて、田中さん、菅原さん、河西さん、ありがとうございました!

(編集:船寄 洋之)(訊き手:下山田志帆​​)


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