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【臨床研究日記 09 】論文を批判的吟味(CA)しながら読む

大学院で学んだ公衆衛生学・疫学の知見を元に、健康的な社会を作りたい理学療法士のジローです。

臨床研究の状況を逐一日記にまとめています。

前回は、研究の概観を知るために、システマティックレビュー(SR)を読んでいきました。

SRを読むことで、包括的な情報収集や、その領域の全体的な傾向がわかるようになります。

↓↓ システマティックレビューの読み方(ガイド)



今回は、個別の介入研究・観察研究について、論文に目を通していこうと思います。

さて、論文に目を通すとして、ザザザザーーーーーっと読んでいて、
頭に残っていますか?何かにまとめておいた方が良いとは思います。

そこから得た知識を、どのように臨床や研究に役立てていこうと思っていますか?

なかなか、読んだだけでは忘れてしまいますし、
記憶の中に埋もれてしまいます。

後輩「ジローちゃんは、いつも英語の論文を読んでますよね?」

ジ「読むと言うようり、チェックしてんだよね」

後輩「チェック??何を?」

ジ「論文を、批判的に吟味することで、研究結果が正確で信頼できるかどうか、また、その結果が臨床実践にどのように適用できるかを判断してるんだよね。これを、Critical Appraisal : CAって言うよ」


■  Critical Appraisal (CA)とは?


改めて、医学論文の批判的吟味(Critical Appraisal)とは、研究の質や信頼性を評価するプロセスです。

研究結果が正確で信頼できるかどうか、また、その結果が臨床実践にどのように適用できるかを判断するために行います。



■  CAで何をチェックしているの?


1、研究の質

すべての研究が同じ基準で実施されるわけではなく、研究デザインや方法の違いにより、結果にバイアスや誤りが含まれている可能性があります。

研究が適切に設計されているか、どのように解析されたか、倫理の面は担保されているか、安全に実施されたかどうかなどを評価し、研究の質を確認します。

2、臨床で使えるか

研究で得られた結果が、自分の臨床環境や特定の患者集団に適用できるかどうかを判断します。

※私の場合は、回復期リハビリですが、集団が回復期リハビリでなければ使えないという訳ではありません。(逆に、集団が回復期リハビリであっても、全く適用できない場合もあります)。

その研究がどのように実施されたかを詳細に吟味し、その研究結果が自分の臨床現場で役立つかを評価します。

3、バイアスの混入

研究には、無意識のうちにバイアス(偏り)が含まれることがあります。これにより、結果が誤解を招いたり、間違った結論を導き出したりする可能性があります。批判的吟味を行うことで、これらのバイアスや誤りを特定し、研究結果の信頼性を判断できます。

バイアスの混入しない研究は無いと言われます。どのようなバイアスが混入しているかを知っていれば、人に説明したり、研究で参考にする場合に惑わされずに済みます。



■実際にどのようにチェックしているの?


大学院(疫学・衛生学分野)では、授業の最後の一コマで必ずCAがありました。持ち回りで、自分の研究分野の論文を紹介し、皆で批判的吟味をしていました。

具体的に、大学院のでCAで使用していたフォーマットは、概ね以下の順でした。

Ⅰ  Summary (論文の要約)

1.Research hypothesis:本研究における仮説は何か?意外と本文を読んでいても、仮説が読み解けない論文もあります。

2.Study design:研究の目的に合った適切なデザイン(例:ランダム化比較試験、コホート研究、ケースコントロール研究など)が選ばれているかを確認します。

3.Study subjects:研究の対象集団は?後で、選択バイアスや外的妥当性を検討することになります。

4.Data collection:どのようなデータを収集しているか?データの種類や、収集方法などを記載します。「曝露指標」「アウトカム指標」「共変量」に分けると、後で検討しやすいです。主に測定バイアスや、内的妥当性の検討ができるかもしれません。

5.Data analysis:データの解析方法、統計手法などをチェックします。仮説を検証できるような解析手法や検定になっているのかを検討します。

6.Conclusions:仮説に合った結果と言えるのか(言い過ぎていないのか、間違った解釈になっていないのか)。

memo:要約では、あまり深入りせずに、論文で述べられていることを要約して記載しています。ただし、読み込んでいる間に、上記のようなチェックをそれぞれ課して読んでいるように思います。


Ⅱ Strength of the paper(本研究の強み)

大体、考察の第3段落くらいに書いてありますが、この研究者が思っている研究の強みと、こちらがジャッジした本研究の強みについて記載しておきます。


Ⅲ Weakness of the paper(本研究の弱み)

Chance(偶然誤差):研究に参加したサンプルのサイズが十分であるか、統計的検出力が適切かを確認します。結果が偶然によるものではないかを判断するため、P値や信頼区間を解釈します。

 bias(バイアス):それぞれバイアスが混入していないかをチェックします。「交絡バイアス」「選択バイアス」「測定バイアス」に分けてチェックすると読み返した時に理解しやすいです。

memo:それぞれのバイアスがどのようなものか、どうチェックすれば良いのかが解らないんだよ!とツッコミを受けそうです。また機会があれば、ブログの記事にしようと思いますが、たちまち、知識が必要な人は、ロスマンか、ビヨーンザベーシックが理解しやすかったように思います。

↓↓ ロスマン

↓↓ ビヨーーーーン ザ ベーシック(Beyond the Basics)


Ⅳ Balancing of the paper

今まで読んだ感覚で、本研究の質を Strong>Weak か、 Strong<Weakを判断します。

強みと、弱みのどちらが多かったかを参考にします。

Ⅴ Judgment

この研究の批判的吟味を終えた後の感想を一言書いておきます。
(臨床に役立つ視点があるが、バイアスが多い研究であった。など)

Ⅵ Suggestion for improving the paper

この研究を、より良くする意見があれば書きます。自分が、研究をハンドルする時に役立ちますし、とても良い思考のトレーニングになります。


ここまでまとめおけば、一つの論文から得られる情報が違うと思います。
読み込んだ論文は、この形にしてPCのメモに残しています。

調べた論文を全てこのフォーマットに変換するのは辛いので、事前の検索が重要です。↓↓


今、新しい研究に向けての論文読み込みに時間をかけていますが、このようにまとめながら読み進めています。

私も、取り掛かり(研究仮説:PECOの作成)までに、隅々まで目を通そうと思います。

最初は時間がかかりますが、ポイントを絞って読んでいるので、慣れると逆に早いと思います。


論文の読み込みをしている誰かの役に立てば幸いです。
私も、今、盛り盛りで読み込んでいます。


あっと言う間に立ち上げから1ヶ月程度経過してしまった。研究以外が忙しすぎて、中々前進しませんが、亀の速さでコツコツ続けていきます。

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