【R12:WORKS】独自性にこだわった歌詞と 世界観を表現するMV制作の裏側
gt.山口宗治郎(やまぐち・そうじろう)とvo.新井一徳(あらい・ただのり)によるアコースティックユニット、flosstRINGs(フロストリングス)。彼らのオリジナル曲の作り方や、20年5月に公開した新たなMVの内容を訊いた。
誰もやってない楽しいことを、僕らだけでやりたい
flosstRINGsの楽曲は、全て新井が作詞している。
「前に宗治郎くんと『恋愛系の内容じゃないほうがいいよね』と話したことがあって。どこにでもあるような歌詞にならないよう、世界観にはこだわっています」と彼は言う。
たとえば『hu-bot』は、感情の薄れた人間と感情豊かなロボットを対比して「どちらのほうが『生きている』と言えるか」を歌っている。
「世界中を探せば、似たようなテーマの曲があるかもしれません。だけど宗治郎くんのギターがあるので、どんなテーマでも、僕らならではの仕上がりになっていると思います」。
作曲は新井が担当したものと宗治郎が担当したものがあり、3:7ほどの比率だ。ふたりの曲の作り方がまったく違うのも面白い。
新井は音楽的なコード理論に詳しくないため、「鼻歌で思いついたメロディを録音して、書き起こしていくことが多いですね」。
一方の宗治郎は、コード進行から曲を作るタイプだ。
「お洒落なコードとか、普通じゃない進行が好きです。メロディはインスピレーションで作っていきます」。
楽しそうに語る宗治郎に対し、新井は少し困った顔をした。
「宗治郎くんの曲は、結果として、メロディも普通じゃなくなるんですよね。『こういくの?』みたいな。難しくて、複雑です」。
たしかに、flosstRINGsの楽曲には耳馴染みのない音が多く感じる。
「でも、これは悪口じゃないですよ。僕なりにリスペクトをこめた褒め言葉です。ありがちな『良いメロディ』とは違うから、把握するまで時間がかかるけど、慣れてくると『フロストっぽくていいな』ってなるんです」。
新井の声を受けた宗治郎は、「僕は歌わないんで」と、どこ吹く風といった様子だった。
彼らのYouTubeやTwitterなどのSNSには、オリジナル曲以外にも、幾つかのカバー動画が上がっている。この選曲を行っているのも宗治郎だ。
「僕の技術の限界はありますが、アコースティックでアレンジしたら面白そうな曲、フロストっぽくやれそうな曲を選んでいます。たとえばhideの『ピンクスパイダー』は、1998年にリリースされたロックナンバーですが、全く違うアレンジをしてみました」。
また、新井が歌ったらカッコよさそうだ、と考えてカバーしたのが近藤真彦の『ミッドナイト・シャッフル』だ。
「僕はランニングベースをしながらコードを弾くのが好きなんです。苦手だけど。複数の音がいっぺんに鳴ってジャズっぽいから、ミッドナイト・シャッフルに合うと思って」。
オリジナルにしても、カバーにしても、『フロストらしさ』を重視しているふたり。「まだ誰もやってない楽しいことを、僕らだけでやりたいんですよ。お洒落にね」と笑っていた。
新MV『ディナータイムの大冒険』について
ふたりがユニットを結成するきっかけとなった最初のオリジナル曲『DANCE on the LEAF』は、YouTubeにてMVを視聴することができる。
この制作経緯を訊くと、宗治郎は「僕の知り合いに映像関係の人がいて、ソロで動画を作ったことがあったんです。そしたらイックンが『flosstRINGsでもMVを撮りたい』と言い出して」。
新井は「形に残したかった」のだと語る。
「単純に、好きな曲なんですよね。徐々にオリジナル曲が増えてきて、ライブでやらない曲もでてきましたが、これは毎回やってます。ライブの最初に持ってきても、最後に持ってきても合うんですよ」。
19年冬には、新たなMVを撮影した。
「これから代表曲にしていきたい『ディナータイムの大冒険』という曲です。食卓の上に様々な料理が並んでて、どれも色鮮やかで、テーマパークのように賑やかで…そんな舞台を、小さくなった女の子が走り回る歌です」。
やはり、一風変わったテーマである。話を聞きながら、編者は『不思議の国のアリス』をイメージした。
MVの撮影は、某所のキッチンスタジオにて、約半日かけて行われた。
「夕方5時にスタジオへ入って、終わったのは夜中の3時でした」。
何故、そんなに時間がかかったのだろうか。「僕が絵コンテを切ったんですけど、めっちゃ細かかったんですよ」と宗治郎は説明する。
「2秒ごとに『ここで僕の横顔』とか『ここでイックンが〇〇をする』とか、撮影の注文が多かった。こだわりまくりましたね」。
MVにはflosstRINGsのふたりだけでなく、楽曲の主人公である『小さくなった女の子』も合成で登場する。彼女が駆け巡る食卓上の料理も、新井が入念に準備したとのことだ。
彼らの音楽はもちろん、その世界観をあますところなく楽しめるMVを、ぜひ視聴してほしい。
Text:Momiji
INFORMATION
flosstRINGs 公式YouTubeチャンネルでは、オリジナル曲のMVはもちろん、ライブ映像やカバー動画など多数配信中!