【S03:COLUMN】静謐の歌姫
エリザベス・フレーザーの歌声が好きである。
その特異な、意味性を放棄したボーカルスタイル(これに関しては聴くのが早い)には現実逃避的なところがあって、音楽に人生の慰めを見出していた僕に訴えるものがあった。
後になって彼女が幼児期に虐待を受けていたこと、かつての自分と同じ立場の人間に向けて歌っているとインタビューで語るのを聞いた。悲しみと優しさが歌われていたのだと分かった。
ボーカルを務めたコクトー・ツインズ解散後、各所の客演でこそ存在感は見せたものの彼女は表舞台からフェード