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僕らのレアグルーヴ漂流記

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トマトケチャップ皇帝による音楽コラムです。洋楽に対しての熱い思いや、音楽とともに歩んだ青春の記憶は共感必死。「30歳を超えてやっと邦楽の魅力に気づいた」という彼のメインストリーム…
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#イギリス音楽

【S03:COLUMN】静謐の歌姫

エリザベス・フレーザーの歌声が好きである。 その特異な、意味性を放棄したボーカルスタイル(これに関しては聴くのが早い)には現実逃避的なところがあって、音楽に人生の慰めを見出していた僕に訴えるものがあった。 後になって彼女が幼児期に虐待を受けていたこと、かつての自分と同じ立場の人間に向けて歌っているとインタビューで語るのを聞いた。悲しみと優しさが歌われていたのだと分かった。 ボーカルを務めたコクトー・ツインズ解散後、各所の客演でこそ存在感は見せたものの彼女は表舞台からフェード