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世界の美しい瞬間 36

36 ライン

最近、思うところあってある歴史ドラマを見直した。

正確に言えば、途中から思うような展開にならなそうな暗雲が立ち込めていたので、以前は心情的にそこから観られずに止めてしまっていたのだ。

しかし、もはや以前のわたしとは違うぞ。1話から最終回まで一気観した。

思うような展開ではなかった。しかし、良かった。
ああ言う形で収めるから、心に残るのだ。

そして、以前は全く興味のなかった出演者の俳優さんが実はめちゃくちゃ好みでかっこよいと気付き、彼の登場シーンを何度も観返してしまった。

生まれと育ちのせいで性格にやや難ありだが、武術が強く頭が切れ、純粋だからこその愚かさもあるという設定の役を、印象強く作り上げた役者としての力もさることながら、他の人とはなんか違うぞ、と魅入る。

平服でも鎧でも、職や冠位で礼服が変わっても私服でも、とかく首から背中と腰にかけてのラインが際立って美しいのだ。

今まで気が付きもしなかったが、好みのラインを持つ男性が世の中にはいるのだ、と認識できた。
同時に、私背の高い人好きだったんだな·····と驚いた。(身長に対しての好みはないと思っていた。)

上背のある人にありがちな猫背感がなく、歩く、座る、立つ、武術アクション、全てのシーンにおいて、明確に姿勢の「美しさ」に目が行く。

別のメディアで彼のスーツ姿を見たが、名だたるスターの集まる中でも、背中から腰のラインが遠くからでも分かるほど芸術的だった。

仕事柄というひとつの理由だけでは表せないものが、その立ち居振る舞いにある気がした。
どの瞬間も、芯があるのだ。

性別の枠を越えて、その人の姿勢や一挙一動に、ドラマが進むにつれて、単純に憧れた。

ご本人が、や、あれはカメラ回ってるときだけなんで、と言うことであっても、そもそも持っていないと出来ないものは出来ない。

美しさとは贅肉のあるなし、筋肉のあるなしの問題だけでは解決しない、と言うのが私の美意識なのだと改めて認められたのだ。

面白いことに、あの人のように美しくありたいと憧れ始めてから、ドラマの全59話最終回の頃には、お腹にややくびれが出来て来た。

そして、体のどこを伸ばせば美しいかが、うっすらと染みて来たのだ。

これまで、姿勢を良くする体の使い方や、その道のマスター的な方に間近でお会いして習うことすらあったけれど、日常生活の習慣にはならなかった。

明確な目標が定まると、唐突にそこへ向かい出すものなのだ。

美しく在りたいと祈っていた。

性別を越え、国境を越え、その答えはやって来る。

日本になければ海外にでも可能性はある。土地にないのなら海へ。地球になければ宇宙へ。

自分の中にある盲点に、1番の答えがあることを知りながら。

越えたい線は越え、線引きも自由にできると今は分かる。

自分にかけている限界の線を、破りたい。
そして、自分の中に引いた線を、消して行きたい。

もっと、もっとだ。

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