マレーシアを起点として持続可能なコミュニティ形成を不動産業界において実現する起業家
対談企画としてリープラの投資先の皆さんにお話を伺うシリーズ、「起業家の声」の第4弾として、SAMURAI Internetの三上高博さんに、リープラで起業に至るまでの経緯やその中での葛藤、そしてこれからの展望についてお聞きしました。
岡内:まずは自己紹介をお願いできますか?
三上:SAMURAI Internetの三上と申します。東南アジアにおいて 持続可能なコミュニティ形成を不動産業界において実現することをミッションにしています。
事業としては、マレーシアにおける新築不動産のプラットフォーム事業を展開しています。メインのクライアントはディベロッパーです。不動産業界には多くのプレイヤーが存在しますが、持続可能なコミュニティ形成を目指す上で、ディベロッパーはそのハード面での供給を担う中心的な存在です。そのため、ディベロッパーと関係性を築きながら、ビジネスの解像度を上げています。
💡なぜリープラを選んだのか
岡内: ありがとうございます。最初の質問です。リープラとの出会いから起業するという決断に至った背景や経緯について教えていただけますか?
三上:前職はSMSで働いていました。当時、優秀な人材がどんどん入ってきて、自分の実質的な価値が感じられず、居場所がなくなってしまったのです。そのため、次第に退職することを考えるようになりました。ただ、周囲からの見方を気にしてしまうタイプだったため、見栄を張ってしまい、単に居場所がなくなったから転職するのはかっこ悪いと思って、起業を理由に退社しました。起業する方がかっこいいのではないかと考えていたのです。
その時は、高尚な目的は全くありませんでした。起業後は、そのステータスを維持することがメインで、スキルの切り売りをしてビジネスを続けていました。
しかし、時が経つにつれて、そもそも誰に対して見栄を張っているのか、何のためにこれをやっているのかという疑問が生じました。結果的に、自分はSMSで働いていた方が良かったのではないかと感じるようになり、無意味なことをやっているのではないか、と感じ始めました。
そこで抱いた危機感から多くの人に相談しました。相談相手の一人だったSMSの創業者である諸藤さんは全てを見通していたのかもしれませんが、「全く違う環境でやった方がいいのではないか」と言われました。このアドバイスには本当に感謝しています。もし東京で続けていたら、今も虚栄心を捨てられなかったかもしれません。彼のアドバイスで、東南アジアなど全く違う場所に目を向けるようになりました。
今考えると、執着している限り「表裏一体」の右往左往しかできない、という本質的な学びを得られたと思います。今までのヒストリーと、自分の年齢等を考えた際、これ以上、「単なる反省と、その裏返しである改善」というサイクルをしている時間も余力もないと思いました。その上で、それでしか生きてきてなかったので、どうすればよいか分からず、途方に暮れていた、という感覚です。
💡何を目指しているのか。現在、何に取り組んでいるのか?
岡内: 何を目指しているのか、また最初に何から取り組んでいるのか、について教えていただけますか?
三上: そもそも「やったら面白そう」という気持ちで始めたので、当初はミッションドリブンでもありませんでしたし、自己認識も低い状態でした。そのため、初めの3年間はチームに迷惑をかけることばかりでした。
オペレーションを作れず属人的になってしまい組織が広がらなかったり、一緒に働いてくれていた右腕のメンバーをうまく動機づけられず離職してしまったり等です。その頃、初めて自分の自我に向き合わざるを得ない環境に直面しました。ですが今振り返ると、自分一人で向き合うのは相当難しいことだったと感じます。
その時に、リープラと壁打ちし、突っ込んでくれたからこそ、ようやく自分の過去を整理でき、なぜマレーシアに来たのかを言語化できました。今では自分自身の虚栄心についてすらすらと話せますが、当時はそのことすら分かっていませんでした。
岡内: 初期事業である「新築不動産のプラットフォーム事業」を進めていくことで、これまでどのような学びがありましたか?
三上: はじめの3、4年間は本当に失敗ばかりでしたが、次第に自分のことが分かるようになると、人のことやチームのことも理解できるようになり、その結果、クライアントのことも分かるようになってきました。チームやクライアントのことが分かるようになり、それがプロダクトに反映される循環が生まれ、少しずつ利益も出るようになり、成長していけるようになりました。
岡内: 「持続可能なコミュニティ形成」というミッションに近づいている感覚はありますか?
三上: あります。このミッションを達成するためには、自分自身について深く知り、自らが体現できる範囲を広げていくしかないと感じています。ミッションに照らして自分自身のどのような部分が足りないのか、という課題の解像度が高まると私自身がもっと体現できるようになれば、どのような形で達成できるのか、という仮説が立てられるようになります。
💡これまでの成長や学びは?
岡内: 三上さん自身のこれまでの学びや成長、自己変容を伴うような変化について、どのようなものがありましたか?
三上: 自己認識の大切さに気づいたことがこれまでの学びで一番大きかったです。自己認知、言い換えればメタ認知のレベルが上がれば上がるほど、よりチームやクライアントを巻き込むことができると感じています。
岡内: どんな時にそれを痛感したのですか?
三上: マレーシアに来て事業がうまくいかなかった頃、私は全てが嫌になってしまっていました。東京で起業するぞ!と拳を振り上げて東南アジアまで来たものの、うまくいかずダメになってしまうと思った時、もう出口がどこにもないと感じました。言葉は悪いですが、死にたくなるほどの心境でした。その時は「頑張ります」という余力さえないため、ダメなところを改善しようという力はありませんでした。
岡内: そこからどうやって立ち直り、今の状態に至ったのですか?
三上: ライフミッションを紡ぎ出せたことです。その過程で、自らの死生観を明らかにできたことが大きかったです。過去を振り返り、改善しなければならない点はもちろん重要ですが、それだけではやり切れなかったと感じています。
私は「どうせ死ぬし、死ぬ時は一人だ」という死を意識した時、ライフミッションがはっきりしました。一人で死ぬならば、人生をどうしたいかは主観で決めて良い、誰も自分の人生をジャッジしないと気づきました。
加えて、ライフミッションを決める上では、「包括的である」ことを大切にしました。「包括的」でないと、何かの「条件付き」になります。ただ、私達の人生は、何かの条件の時だけアクティブな訳ではなく、無条件に、寝てる時でさえも続いています。限定することで、そこに留まろうとする執着や欲望が付き纏い、現在のギャップに苦しみ、怒りや失望、他責、嫉妬、憎悪、怠惰を産むのだと自己の体験から認知しています。なので、ライフミッションは、一番遠くにある、一番大きな(包括している)ものと捉えています。
日々のラーニングに集中し、ご機嫌な状態で情動の機微をフル活用して学習機会を最大化するためには、自分の自我で限定してしまっている視界を解放する方が合理的と言えます。また自分の見聞きできる範囲も限定的とも言えるので、他人とコラーニングすることも有効な手段とも思っています。
すべてを包括するために死生観からバックキャストし、深く問うた結果”die alone”の対極として、”Even in this uncertain world, live lively together by being mastery of life ”をライフミッションと定めました。
岡内: ありがとうございます。今後、ご自身の学習における課題感、今後より高めたいことはありますか。
三上: 自己認知やメタ認知をもっと上げることで、ライフミッションの拡大を目指したいです。
以前は私はSAMURAI INTERNETという法人を、自身の人格と同一視して捉えていて、自分自身の生きている時間軸の中に閉じて考える対象としていました。今は、法人を別人格として捉え、自分自身のライフサイクル以上に長い時間軸を持つ存在として育てていきたいと考えています。世代をまたいで影響力を持つ会社人格を作りたいということです。しかも、多くの人を巻き込み、法人の影響範囲が大きくなれば、ライフミッションとも繋がるのでとても嬉しいです。
また、皆とアラインしながら世代を超えたテーマに挑戦していくというのは、改めて面白いなと思っています。創業者としての思いは入りつつも、別人格として尊重し、見返りを求めない愛を注いでいく。ライフミッション実現のための修行の場として最適だと思っています
法人を長い時間軸を持つ存在にするためには、自分の認知力を上げ、リーダーとして未来を予測し、戦略目標を立て、具体的な方法論を示し、みんなを導く力を伸ばしていきたいと考えています。これらの能力はまだまだ不足しているので、これからも成長していきたいです。
岡内:貴重なお話ありがとうございました。
三上: ありがとうございます。もし私と一緒に東南アジアで働いてみたい、という方いればぜひこちら(mikami@samurai-internet.com)にご連絡ください。
編集後記
三上さんの目指す「世代を跨ぐ会社作り」という想いは、単なる企業の成長を超え、人々や社会に対して深い影響を与えることだと感じました。この考え方には、複雑な社会課題に対して長期的な視点で取り組む必要性が込められているように思います。これは、リープラのアプローチと深く結びついており、私たちの正社員や投資先も同様に、短期的な成果にとどまらず、長い時間軸での影響力を志向しています。この長期的視点を持つアプローチが、リープラの特徴となっています。リープラの独自の起業アプローチに興味を持たれた方や、長期的なビジョンでの挑戦に関心がある方は、ぜひこちらのフォームまでご連絡ください。私たちは、未来を見据えた共に挑戦し、社会に深い影響をもたらす仲間をお待ちしています。
文責:杉本奈穂