子と個
先日,全国算数授業研究大会「今こそ問う,個を大切にする授業とは」に参加した。その中で,ある先生が,次のようなことを投げかけていた。
非常に重要な視点だと思う。
また,教育の文脈において「個」という言葉をよく耳にする。
自分でも「個」という言葉をよく使うときがあるが,「子」との違いについても疑問に感じた。
そこで,今回は,上のような視点に加え,まずもって「個とは何か。」「どういう意味が込められているのか。」について考えいきたい。
調べる前の「子」と「個」の使い分け
・「あの子は」というときは,「子」
・子を大切にする
個を大切にする
→こう書くと,違うことははっきり分かる。
前者は子どもを大切にするという意味合いが強く,後者は個性や個人の考え,一人一人を大切にするという意味合いが強いように感じる。
・一人一人の子を大切にする
一人一人の個を大切にする
→どちらかというと,前者の「子」の方がしっくりくる。
・個が強い
→個性が際立っている。一人一人の意思や考えがはっきりしているというような意味合いで使うことがある。
・子を育てる
個を育てる
→前者は子育ての意味が強いように思う。後者は,個性や個々の力を育てる意味に捉えられる。
では,実際,「子」と「個」の違いについて辞書や教育書から探っていきたい。
辞書による「子」と「個性」
「子」だけでも意味がたくさんあるが,よく使われるのは①の意味が自分は多い。
「個」に付随する「個人」や「個性」については以下のように記載されている。
「個人」の補説も面白い!もともとは,「一個の人」から始まっているかもしれない。
教育書に出てくる「個」
2冊の教育書に出てくる「個」の用いられ方から,考えてみる。
どちらの引用も深く考えさせられるものがある。上田(1972)に指摘されていることは今の教育にもつながる。「教育機器がもてはやされる今日」ひとりひとりの子に教師の眼がつきささっていないのではないか。見えやすいところだけで捉えていないか。自分への問いかけとして帰ってくる。
上記のように教育書を読んでいると,「個」と使われるのは,集団や全体の対として個という言葉が使われていることが多い。先ほどの「ある集団に対して,それを構成する個々の人」という意味合いである。
では,「個を一人と読み替えても同じなのか?」
個人的な感覚で言えば,読み替えると意味が変わってしまうと考える。上田(1972)の「個」には,一人一人を育てるという思いだけでなく,個性の意味合いも感じるからである。
ここまでを整理すると,最初に捉えていた考えとそこまで相違がないように思われる。
何のために「個」を大切にするのか?
↑の投稿ともつながる話である。
”教師も子どもも愉しむ”ために個を大切にするだと思う。
個人や個性を大切にしないで,一人一人が授業や学級を愉しむことができるだろうか?
個を大切にしない限り,”教師も子どもも愉しむ”瞬間は増えていきにくいだろう。
授業や学級を,教師も子どもも愉しむ経験を積み重ねていくことで,
一人一人が学びの深まりや広がりを感じ,その瞬間を生きてほしいと思う。
まだまだ問いは尽きない。
この二つについても,時期をみて整理していきたい。
【引用・参考文献】
富山市立堀川小学校(1973)『個の成長ー可能性の開発を目指して』,明治図書出版株式会社
上田薫(1972)『個を育てる力』,明治図書出版株式会社
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?