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先日破って捨てた手紙、の、下書き

別れたあと、すぐの頃。
初夏だった。
まだ、彼からやり直そうと言われる前のこと。

いずれ来る冬、この手紙を出すつもりでペンを取った。
LINEでも良かったけれど、まだ心の準備もできていなかったし、文字を書いていた方が落ち着いた。
この街から出ていくその前に、あの人に届けられたらいいなと思って泣きながら書いた。
私が平気になったら、大丈夫になったら。
いつかあなたに渡したいと思っていた手紙。

先々月くらいに、そういえば、と思い出して、破って捨てた。もう、必要ないから。

手紙の中で、私は私の名前を出さなかった。
あの人が私だと気づくか試したかった。
私を憶えているか、確認したかった。
あの人にとって私はどの程度の存在だったのか、結局最後までわからなかったけれど。

私は今、あの人のことを好きではない。
手紙の中に残した気持ちもほとんど消えている。
ただ、好きだったなと、思うだけ。

やり直そうと言われた時、戻れないと言った。
迷いは、ほとんどなかった。

もう、大丈夫。

予定どおり次の春には、仕事の異動でこの街を出ることになった。
だから彼との思い出は、全部、ここに置いていく。

でも本当はね、
最後くらい会って、終わらせたかったよ。




久しぶり。お元気ですか。
私はそれなりに元気です。

言ってもわからないかもしれないけれど、
私です。
私の書く字をちゃんと見るのは、たぶん初めてだよね。

決まっていたとおり、もうすぐ地元に帰ることになりました。
その前に予定が合えば、会いませんか。
最後にあなたと、少しだけ反省会というか、一緒にごはんが食べたいです。
せっかく知り合えたし、人として尊敬もしているので、できれば今度は気楽な友達として、お話ししたいです。

あなたがよければ、友達になってくれませんか。
もし同じ気持ちなら連絡をください。
その気がなかったらこれはもう捨ててしまってかまわないです。
読んでくれただけで、感謝しています。

私は、付き合っていた頃のいろいろを、嫌な思い出だとは思っていません。
悩むことも思うこともあったけれど、ずっと楽しかったよ。

あの時は素直になれなくてごめんね。
たくさんの思い出をありがとう。

どうか幸せでいてください。

しっかり言えていなかったので、
それだけ、伝えておきたいと思いました。

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