カウントダウンの匂い
初めての彼氏と別れるときも、同じ予感がした。
終わりの近い匂い。
あ、もうこの人は私のこと大事じゃないんだなって、急にわかってしまう。
もちろんその時は悲しいんだけれども、ショックはあまり受けない。自分の方にも、至らない点があったことを重々理解しているし、同じように彼に冷めるようなことも思い当たっているからだ。
別れた原因を私なりに考察してみた。
学生時代のクラスメイトだった元彼をA、1週間前に別れた彼のことをBとしよう。
元彼Aの時は、毎日LINEをしていた。
最初はもちろん楽しかった。純粋に家に帰ってからも話せることが嬉しかった。
けれどそれが次第にスタンプのみの往復になり、終いにはおはようとおやすみだけになった。
スタンプのみになったあたりから、お互いに連絡を取ることが義務みたいになっているようで、前みたいな『この人と話してて楽しい!』って関係では無くなってきてるなと思い始めた。彼もきっと面倒だっただろうが、どちらも律儀なタイプなので切ることはできずダラダラと続けていた。
それでも3年程続いたが、その頃にはわかりやすく終わるんだろうなって気配がしていた。
学校でもクラスが別れてしまい、直接話すこともなくなった。ある朝からLINEのやり取りも一切なくなり、もう別れることは明白で、自然消滅のようになっていたので、最後に彼を呼び出して、別れようと言葉にした。
LINEのことは大きな理由でしかない。
その他にもたくさんすれ違っていた。なのに私たちは周りの恋人たちよりも圧倒的に話をできていなかったと思う。その度にケンカすることを恐れて、自分が傷つくこと、相手から嫌われることを恐れるあまり、見ないふりをした。
付き合っていて何が苦痛で、自分はどうしたいのか。二人ともがそういうことを話し合うことから逃げてしまったのが、元彼Aと別れた原因だと思う。
元彼Bに対しては、その時に比べて相手にも自分にも素直にぶつかっていけていたと思う。
何が嫌だとか、こうしてほしいとか、大部分はちゃんと言えていた。ありがとうもごめんねもたくさん言った。自分の今までの人生の中で、間違いなく一番それらの言葉を彼に対して使ったと思う。
彼も私を楽しませようといろんな場所に連れ出してくれたし、気遣ってくれたし、時には笑わせてもくれた。その気持ちは感じとっていた。
それでも別れることになった。
私には来年この場所を離れて地元に帰るっていう後ろめたさがあったし、彼は自分で決めたことを突き進むタイプだったので、今度は私の方が何も言えなくなってしまったのだ。
一緒にスマホを見ていた時、元彼Bのスマホにマッチングアプリが入ったままになっているのを見つけて『まだ消してないんだ』と聞いた。『消すのが面倒だから』とかなんとか言っていたが、私はその時から彼のことを心から信じられなくなった。
私がいるのになんで?消してよ、とその時強気に言えていたら何か変わったかもしれないが。
今となっては、アプリを消してない時点で誠実さのかけらもない適当な男だったのだと思う。
それでも約十ヶ月続いたが……
恋は盲目とはよくいったことで、彼が私のことを大切にしてくれるのなら、別にここに住んで彼とずっと一緒にいてもいいのかな、そんな人生もアリかなと思っていたのに、ひとつ疑念が生まれるともうだめだった。
価値観が違うのも理由だった。彼なりに私のことを思って提案したことが、ところどころズレていた。その気持ちが嬉しかったからそれでもよかったけれど、次第に我慢の限界が近づいて。時には譲歩してもらうこともあったけれど無理だった。
すり合わせて生きていくこともできるのかもしれなかったけれど、意思が強い彼相手だとほとんど私が折れなければならないことが目に見えていた。
彼氏Bと別れたのは、性格が致命的に合わなかったこと、私が一度も怒らなかったことが理由だと思う。
ケンカするくらい仲のいいカップルが羨ましい。
私にはできなかったことだから。
さらけ出した自分を、相手に受け入れてもらえることの尊さを、どうか大切にしてほしいと思う。
同じように相手のことを大事にしてあげられるあなたも、相手にとってすごく心許せる特別で大切な存在なんだよってことも。
素敵だな。