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秘密

増えたな。漠然とそんな気がする。
きっとそのほとんどを私は憶えていないし、もう思い出せないものもあるだろうけど。
記憶の中に蓄積された秘密が、ある日急に浮かび上がってくることがある。
そのたび、また時間が経っていることに気が付く。

私は口は堅い方だ。
最初にそれを言われると、とたんに口が軽そうに思えてしまうのは何故だろう。
まあ、私は口が堅い。安心してほしい。

噂話は嫌いじゃない。聞くのが好き。
ただ、実はあんまり興味がない。
私はみんなが楽しそうに話している空気の中に混ざるのが好きなのだ。

正直に言おう。
私は別に他人の近況なんか知ったこっちゃない。
元同級生や通っていた学校の先輩後輩も、その後の人生で関わらなければもうただの他人である。
友達は別だけど。ずっと友達だよ!…ね?そうだよね…?
興味のない他人の彼氏彼女、就職先、結婚、子供、そんなもの全部どうでもいい。

だけども意識しなくても耳に入ってしまうから、勝手に羨むし勝手に焦る。
そんなの関係ない、私は私の道を行くって、いつもそう思っているのに。

それは置いといて、書きたいのは、ナイショの話についてだ。

本当に大切な話を聞いたら、私にだけ教えてくれたことであれば、私はその人としかそのことについて話す気はない。
当たり前だ。

私は口が堅いけれど、秘密と見せかけた自慢話ならば別に誰かに言っても構わないだろうと思っている。
言わないでねって言われない限りはね。

ただ、その人の大切な記憶に関わることや、気持ちを揺さぶるような出来事を、他の誰かに話すような真似はしない。
そこは、私のポリシーだ。

たまに記憶を掘り返して、またはふいに思い浮かんだときに、秘密をくれた人のことを考える。
それくらいが秘密とのちょうどいい付き合い方だ。
私はそうやって、何人か思い返す人たちがいる。
懐かしい人や、もう会えない人も。
最近はそのたびに、時の流れを感じて切ない。

普段は忘れているのに、ふと思い出すと、なんだか懐かしく思えて。
生きていると、秘密が増えていく。
分けられるものも、分け与えたものも。
これが、歳を重ねるってことなのかもしれない。
そう思えた、今日のこと。

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