▶︎Vol.1 オフィスはツールではなく「ハコ」だった。
昨年、在宅ワークの導入が進む中で数多く実施されたアンケートに「在宅ワークで生産性は上がったか?」という問いがありました。
通勤からの解放や集中しやすい環境に「在宅の方が断然いい!」と喜ぶワーカーと、存在感を示す居場所を失いモチベーションを下げたワーカーの明暗が話題になった事は記憶に新しく、改めて「組織内コミュニケーション」や「ワークエンゲージメントサーベイ」の重要性が活発に議論されました。
この現象は、パンデミックによって発令された緊急事態宣言が無かったとしても近い将来に必ず訪れるワークプレイス全体が抱える課題だったと言えます。
なぜなら多くのオフィスの経営資源としてのポジションは、
「企業の組織運営とマネジメントの効率を追求した空間であり、ワーカーの生産性を追求した空間ではなかった。」
という定義が最も的確だからです。
つまり、「ヒト・モノ・カネ」という経営資源を安全に保持・運用していく事に最適化された『ハコ』で、あくまでワーカーは「出社が当たり前」「在宅勤務は特例措置」というマネジメントだった訳です。
(もちろん、インターネットやクラウドサービスなどが無い時代は「オフィスにインフラを格納し、ワーカーは通勤を経て業務を行う」というのは当然の話なのですが、現代のテクノロジー進化は書くまでもないので。。)
このインターネットテクノロジー以前の常識が、現在も『オフィス運用の当たり前』として組織運営やマネジメント施策上に根強く残っているという背景が、昨今のワークプレイス課題として大きく存在しています。
3年前の働き方改革法案によるワーカーの生産性向上の施策も、ワークプレイス(=働く場)とマネジメントの相関関係改革は必須であったにも関わらず、多くの場合において「当たり前から脱却できていない中での模索」が続いているように感じます。
現在はテクノロジーの進化によって様々な業務がソフトウェアに代替えされ、書類はデータ化され、連絡や情報共有が高速化されました。
生産性という意味では、凄まじいまでの向上を遂げています。
その影で、生産性向上はテクノロジーの役割であり『オフィスという場』の役割ではないと考えられ、その前提でマネジメントが行われています。
冒頭の「在宅ワークの生産性」に関するアンケートが企業だけでなくワーカーからも非常に注目された事は、こうした背景が要因ではないでしょうか?
その一方で、10年ほど前からオフィス環境に対するソリューションは非常に活発になりました。オフィスというハコを『ツールとして活用しよう』という動きです。
『リクルーティングに有利で離職率を改善するオシャレなオフィス』
『部門間コミュニケーションを活性化するフリーアドレスとオープンオフィス』
『業務特性に合わせて選択できるカフェテリアゾーンや集中ブース』
『ワークスタイルに合わせて活用できるABWオフィス』
こういったオフィスソリューションを導入して、オフィスという場を戦略的に活用しようという動きは年々加速しており、『オフィストレンド』という言葉も活発に使われるようになりました。
しかし、私は敢えて問いたいです。
「トレンドやツールの進化に、制度やマネジメントは追い付いていますか?」
『オフィスはハコ』で思考が止まっている事が、オフィスの外で働くワーカーのマネジメントに影響しているのではないでしょうか?
『オフィスはツール』と考えることができれば「ワークプレイスの中に『オフィス』というツールもある」という発想で、社内制度やマネジメントの改革もできるのではないでしょうか?
もうオフィスは、「数あるワークプレイスツールのひとつ」という存在です。
だからきっと、オフィス自体が無くなることは今後もないでしょう。
(そもそも登記の問題やステイクホルダーへの信用証明という役割は、簡単には無くならない筈です。)
しかし、オフィスというハコの中でしか通用しない組織運営やマネジメントは、ワークプレイスでは通用しないと言えますし、ワーカーから支持されない可能性もあります。
オフィスを『場のツール』と捉え、戦略的に活用することをお勧めします。
今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
一部でも皆様の参考になれば幸いです。
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