▶︎Vol.3 ABWとはモノなのか? コトなのか?
フリーアドレスの話も、時系列でようやく「今」に追い付いて来ました。
ABW(Activity Based Working)。
昨今のオフィストレンドど真ん中のワード。
結論から言いますと、本当に素晴らしいソリューションです。
これこそが「真のフリーアドレス」とさえ感じます。
オランダのVELDHOEN社が提唱するABWですが、ワーカーがオフィス内で行う業務を「10の活動」に分類し「それぞれに最適な空間を設計する」というソリューション。
詳細は、国内でVELDHOEN社と提携してコンサルティングサービスを行うイトーキさんのサイトや、VELDHOEN社の歴史や背景を紹介したコチラのサイトをご覧ください。(※上図もイトーキさんのサイトから引用させていただきました。)
知的労働におけるワーカーの生産性を向上させるために、業務内容だけでなく業務を行う人数にも着目しており、「個(ソロワーク)と組織(チームワーク)」「インプットとアウトプット」「オンとオフ」を明確にすることで『オフィスという場』のツールとしての機能を最適化しようというアイデアなのですが、「場を創造し提供する」という視点で見ると非常に分かりやすいソリューションです。
しかし、、
私は「ABWオフィス」と呼ばれるオフィス設計の現状には、少し疑問を持っています。
上図に示された10の活動を全てオフィス内に設置することは、果たして本当にABWなんでしょうか?
前回までの記事で「オフィスはワークプレイスのツールのひとつ」という表現をさせていただいていますが、ABWをオフィス内で完結させてしまうのは、ワークプレイス設計という視点で見ると「オフィスの部分しか設計していない」とも言えるように感じます。
もちろん、VELDHOEN社が提唱した時点では『オフィス設計に取り入れるべきソリューション』という視点でプロモーションされていますので、オフィス外ワークを想定していたか?は分かりません。
しかし、今世界が置かれている状況を考えれば当然想定すべきですし、オフィス外ワークにも十分に適用できるソリューションではないかと感じます。
オフィスがツールのひとつだとして「オフィス外にはどのようなワークプレイスツールがあるのか?」を書き出すと、主に下記のようになります。
● 自宅
● カフェなどを含む、座席とネット環境を持った公共スペース
● シャアオフィスおよびコワーキングスペース
● その他、ワーカーが業務を行った全ての場所
(駅のホーム、タクシーの中、公園のベンチなど多数)
これらについては、改めて説明の必要もないと思います。
しかし、これらの場所で業務遂行を可能にしているのはインターネットであり、クラウドサービスであることを忘れてはいけません。
そして、様々な業務特性に合わせたインターフェイス(操作性)によって、ブラウザ(PC画面)上で「誰でも効率よくデータを扱える」ように設計されたSaasの数々。
社内に物理的なデータサーバーを置くこともサーバー管理者を雇用することなく、ワーカーにPCさえ貸与すれば場所を問わずに業務を遂行でき、組織内の最低限のコミュニケーション(1次的な報連相レベル)まで完結できるのは、これらのサービスによるものです。
これらのサービスは『場』や『空間』ではありませんが、それらを超越して「ヒトと仕事」を結ぶツールとしてなくてはならない存在となりつつあり、もはや『ワークプレイスにとっての重要インフラ』であると言えます。
上記ワークプレイスの数々にクラウドサービスを掛け合わせ、「必ずしも出社を前提としない」という条件を付与した場合(※マネジメントとセキュリティの問題は別途考察)、ABWというソリューションは「オフィスを超えたワークプレイス全体でのフリーアドレス」を実現する可能性を秘めています。
それにも関わらず、10に分類された活動の全てをオフィス内に凝縮してしまうのは、ワーカーにとって最適なフリーアドレスの実現とは言えないのではないでしょうか?
もちろん、マネジメントとセキュリティの問題は経営として無視できません。
行動が把握できないワーカーが居ては困りますし、毎日カフェやシェアオフィスなどオープンな環境で業務をされたら情報漏洩のリスクは高まる一方です。そして、感染症対策についても継続的な施策を求められています。
しかし、だからと言って「オフィスか自宅で」という二者択一に収める必要はないですし「自宅よりもオシャレで機能的なABWオフィスでハイブリッドワーク!」というワークプレイス設計は少し短絡的な気がします。
場と空間の選択肢は、もう少しアレンジができる筈です。
ワークプレイスは今こそアップデートされるべきなのではないでしょうか?
もちろん様々な事情があると思います。
家具メーカーさんやオフィスデザイン会社さんは、オフィス内に機能やソリューションを統合した方が収益を上げやすいのは当然ですし、オフィス仲介業者さんも同様でしょう。
そして、Vol.1の記事で書かせていただいたようにマネジメントと制度変更のスイッチングコストが大きな負担になってしまうケースも多い筈です。
加えて、オフィスデザイナーの皆さんは建築内装における空間設計のプロフェッショナルですが、クラウドなどITサービスやSaasについては「専門外」という方が多いのが現状だと思います。
しかし、インターネット上で展開されるクラウドをはじめとする数々のサービスは、すでに『(擬似的・2次元的な)場や空間』という機能を持っています。
チャットツールのタイムラインやオンライン会議、オンラインストレージやグループウェア上での情報共有は、3次元的付加価値が不足しますが「場の代替」としての機能を果たしています。もはやインフラとしては不可欠な存在です。
これらを統合した設計していくことが「これからのワークプレイス環境設計」に求められる要件なのですが、恐らくオフィス環境デザインとITテクノロジーの隙間を補完して接点(翻訳機能)となれる人材が不足しているのが最大の原因だと感じます。(これは『DX』についても全く同じことが言えます。)
手前味噌ですが、私のオフィスインフラ関連(通信ネットワーク・ITサービス・オフィスデザイン)のソリューション提供経験は、こうした状況において少なからずお役に立てるのではないかと自負しております。
(「なんだステマか・・。」とお感じになった方、何卒ご容赦ください!!)
ABWも、ワークプレイス環境も、オフィスも、まだまだ伸び代があるということですね。
次回より、「では、どうすれば良いのか?」という部分に焦点を当てて考えていきます。
「大企業だからできるんだ!」とか、「◯◯の業種だからできるんだ!」のようにお考えの皆様のヒントになるような記事にできればと思いますので、ご意見やご要望などございましたら、ぜひコメント欄やコチラまでご連絡ください。
今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
一部でも皆様の参考になれば幸いです。
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