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▶︎Vol.2 フリーアドレスは、ただの自由席?

前回の投稿で、ツールとマネジメントの相関性について記述しましたが「フリーアドレス」もマネジメントの影響を大きく受ける制度のひとつです。

『固定席がないオフィスレイアウト設計 = フリーアドレス』

かれこれ30年くらいの歴史があるフリーアドレスですが、どちらかと言えばソリューションよりもハードウェア先行で導入が進んできた印象です。
つまり、フリーアドレスの効用は数多く訴求されて来たとしても、実際にその効用を活かした運用を実現できているオフィスは少なく、過去には「フリーアドレスデスクだが座席表があるオフィス」が量産されました。

もはや、自由席ですらなかった訳ですね。

インターネットで「フリーアドレス」と検索すると、様々な企業が紹介するソリューションや導入事例に混じって『メリットとデメリット』を紹介するサイトが出てきます。

主なデメリットを分析すると2つのパターンに分類できますが、1つ目は収納の問題、2つ目がまさにマネジメントの問題です。

日本人は「所有が美徳」の文化なので、ワーカーは「自分の席がある」「自分の荷物や書類を収納する場所がある」ことが帰属意識への対価であると考え、マネジメント側は「席順に序列がある」「より多くの荷物や書類を収納できる」ことに加え、「部下が見えるところに存在している」「常に号令をかけられる状態である」ことが与えられた権威であると考えて来ました。

この事が、「フリーアドレスデスクにワゴンを設置する事による固定席化」や「組織編成に紐づいた座席配置の継続」を引き起こし、オフィス家具の設備投資を行ったにも関わらず『デスクが長机に変わっただけ』という事例が数多く誕生します。

前職でオフィスデザイン業務に従事していた時、とある企業の役員の方に「このデスク島さ、6mを片側5席の10席で配置しているけど、人が増えたら1席を狭くして詰めて座らせられるよね?何席くらいまでいける?」って質問された時の衝撃は今でも忘れませんが、おそらく同じような会話が様々な現場でされていたのではないでしょうか?

(余談ですが、、昨今の『DX』にも同じような気配を感じてます。。)

そして10年程前からようやく本格的に『本来のフリーアドレス』が導入されていきます。
この頃、大手オフィス家具メーカー各社がショールームとは別に『ライブオフィス』を開設し、フリーアドレスを含めたソリューションをクライアントに『視覚的に体感してもらう』というプロモーションを次々に展開します。
これは今思えば非常にイノベーティブな取り組みで、「家具レイアウトと空間運用」を非常にわかりやすく訴求していたように感じますし、「ワークスタイルソリューション」という言葉がよく使われるようになりました。
(当時は私も各社のライブオフィスに通い倒しました。懐かしい。)

そして、ようやく組織運用に「チーム」という考え方が浸透し始めます。多様化する顧客ニーズに対応するために、各部署から選出されたメンバーがチーム単位で業務を遂行する形です。
(当時、某メーカーが「バケツリレー型からスクラム型へ」という表現でプロモーションしていましたが、非常にわかりやすい例えでした。)
これにより、「部署毎に座る」のではなく「チーム毎もしくはプロジェクト毎に座る」というオフィスレイアウトがデザインされ、ワゴンの撤廃やパーソナルロッカーの導入、ファイルストレージ(書庫)の削減などが積極的に検討されるようになります。

この辺りのソリューションを「フリーアドレス2.0」と呼ぶ方もいらしゃいますね。そもそも1.0がフリーアドレスだったのか?は微妙ですが。。

しかし、依然としてマネジメント側の課題は存在しており、朝礼や個別ミーティングの重要性が増すとともに、グループウェアなどによる「見える化」への取り組みが加速します。(なんだか、今の状況と似てませんか?)

多様化するニーズへの柔軟性を創出するためにワーカーの自由度を高めた結果、マネジメントサイドの負担が増加(勤怠管理、情報伝達、管理ツールの変化)することになるのですが、これを経営として許容していく企業とそうでない企業に分かれていったように感じます。
(有無を言わさず許容せざるを得ない状況になったのが、昨年からの社会情勢ですね。)

オフィスソリューションの導入も、オフィス家具導入後の運用も、制度設計を含めたマネジメントが非常に重要であり、ワークプレイスが抱える課題は即マネジメントの課題だということがお解りいただけると思います。

「そんなの言われなくても分かっている!」という方も多いかと思いますが、ワークスタイルソリューション自体が「ハード販売主導」で行われて来たことも一因ですし、「オフィスの当たり前」から脱却できずハードに依存して来たという現実もある筈です。

マネジメントというのは『経営資源の戦略的有効活用』ですので、繰り返しになりますがオフィスをツールとして戦略的に活用するための情報収集とエビデンスの蓄積や分析は必須です。
更に加えて、『ヒト・モノ・カネ・場所』という4軸で考察していく必要を感じます。(近いうちに掘り下げて記事に書きます。)


そして、ついに、、
フリーアドレスソリューションは『ABW(Activity Based Working)』に移行していく訳ですが。。

ABWに関しては、本当に思うところが沢山ありますので、次回とさせていただきます。すみません。。


今回も稚拙な文章を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます。
内容の一部でも、皆様の参考になれば幸いです。


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