懐かない元野犬との生活2 (元野犬と夫)
夫はあずきサンのことが大好きだ。
あずきサンはそうでも無さそうだけど。
夫とあずきサンの出逢いは私があずきサンと初めて対面した後、夫を連れてセンターを再訪した時だ。
譲渡は事前に同居家族全員と犬が対面する事が条件なのだ。
あの時私は夫があずきサンを気に入るかどうかとても心配だった。
実はこの数週間前、野犬の仔犬の譲渡会に夫と参加した。
そこにいたのは人懐っこくて可愛らしい仔犬達。
参加者皆んな仔犬達を撫でたり舐められたりとキャッキャしながら触れ合っていた、夫以外は、、、。
夫は仔犬に近づこうともせずに言った。
「チョットああいうのは苦手」
⁇⁇
どうも良くわからない。
実は夫あまり犬が好きではないのかもしれないとその時は思った。
取り敢えず仔犬は諦めた。
そんな夫が果たして警戒心強めのあずきサンを気に入るのか。
2度目の対面のあずきサンはやっぱり怯えて隅っこで縮こまっている。
スタッフさんにオヤツをあげてみてと言われてもあのチュールをもってしても中々こちらに近づかない、手強い。
夫はかなりの無口でリアクションが普段から薄いのでこんなあずきサンを見てどう思っているのか彼を見ても全く読めなかった。
その後も一緒に散歩をしてみたり(嫌がっている)チョット撫でてみたり(嫌がっている)して無事対面は終わった。
センターを後にして恐る恐る夫に聞いてみた「どうだった?」
夫「可愛い!引っ込み思案な所がウチに合ってる」
あの警戒心MAXな様子を引っ込み思案と捉えている!
ウチに合ってる発言は私達夫婦の社交性に欠けていて友達が少ないところに似ているって意味だろう。
兎に角気に入ってくれた。
という訳であずきサンはウチの子になった。
ウチに来た当初のあずきサンは私に咬みつくだけではなくハーネスやリードを噛んで破壊、クレートから出ない、人がいるとごはんを食べない等懐く以前にそもそも慣れてくれない。
何度か心が折れそうになったけれどその度に夫は
「知らない所にいきなり連れて来られて知らない人間が何人もいたら怖いに決まっている」
「懐いてくれなくても全然構わない、事故さえ起きなければ」
「ここが自分の居場所だって思って貰うようにしてあげないと」
と常にあずきサンの味方だった。
その頃私はあずきサンが懐かない事に悩んで何か良い方法はないかとググりまくっていた。
そしてあるトレーナーのビビリ犬を懐かせるやり方として家の中でも常にリードで飼主と繋げる、という方法を見つけた。
それを続けると犬はそのうち飼主の側にいることに慣れてくる、という事らしい。
夫にこの方法を伝えてみたら
「俺があずきでそんな事されたら絶望する!」と言われた。
確かにそうだ。
散歩を拒否せず毎日行ける様になった時は嬉しくって思わず「ドッグランに行けるかなぁ」などと言って「何言ってるんだ、不登校の子がやっと学校行ったら文化祭頑張れって言われるようなもんじゃないか!」と夫に叱られた。
動物病院で診察台に乗せるのにあずきサンを抱っこした時はビックリしたあずきサンに顔を咬まれた夫。
口の横から血が流れていた、、、。
後であずきサンに「顔はやめてね」とそっと囁いていた。
私がトイプードルの迷い犬を一晩だけ保護した時の夫はずっと不機嫌だった。
とても人懐っこい犬で私に飛びついたり顔を舐めたりと凡そあずきサンが絶対にしない様なことをしてくる子だった。
でも夫は決してトイプーに触ろうとはしない。
あずきサンは他犬が苦手なのでグイグイくるトイプーに辟易してずっとクレートの奥に避難していた。
翌朝飼主さんがトイプーを引き取りに来てやっとあずきサンはクレートから解放された。
夫は「ここはあずきの場所なのにあの犬に駆逐されて可哀想だった、あずきがまだ乗ったことのないソファに乗ってきて厚かましい」と怒っていた。
勝手に保護した私に腹立てて不機嫌なのかと思っていたら犬に怒っている、、、。
犬を好きではないかもと疑った事もあったが今はわかる、寧ろ夫は本物の犬好きだ。
と言うより本物のあずきサン好きと言うべきか。
正直あずきサンは夫のことがそれ程好きではない。
家族で唯一夫にだけは近寄られると唸ることがある。
そんな時の夫はチョット寂しそうで気の毒だ。
それでも夫はあずきサンに好かれなくてもいいと思っている。
そのまんまのあずきサンを受け入れているのだ。
そして彼女のことを大事に大事に想っている。
私はそんな夫に感謝している。
咬みついたり懐かなかったりすることに不満や文句を言われたらあずきサンも(そして私も)辛かったと思う。
登山が趣味の夫はあずきサンと私3人で低山を登る計画をたてている。
あずきサンがほんの少しでも喜んでくれたら夫もきっと嬉しいだろう。
今から楽しみだ。