[連載小説] オオカミは もうそこまで来ている #7 南海トラフの足音 耐震基準の落とし穴
何年か前、おじいちゃんの所に、役場から耐震診断の人がやって来た。
資料を片手に、ちょっと見回しただけで
「ここは、2000年以降の建物だから大丈夫」と言って帰って行った。
夏美はそれを聞いて
( 地震で倒れる心配はないんだ ) と、安心したのを覚えている。
なのに なんで父さんは「耐震基準」を心配しているんだ?
というのが、最初の疑問だった。
ところが、いろいろ調べているうちに
耐震基準は、自分が思っていたのとは違う事が分かった。
表向きは
「2000年耐震基準は 耐震等級1 。震度7 で建物が倒壊せず命を守れる」とある。
ところが、専門家によると、国の考えはこうだ。
「大地震が発生したときに即座に家が倒壊し、命が奪われることはないが
家が壊れずに、そのまま住み続けられる事を保証するものではない」
「命や健康、財産は守るが、家はそれらを守る単なる箱である」
なんという 無茶苦茶な理屈だろう。持ち家こそ最大の財産ではないか!
ひどい業者のホームページになると
「耐震等級1は 命を守る最低基準。一度倒壊をまぬがれるのがやっと。
2度目の震度7では倒壊するのは当たり前」としれっと書いてある。
まるで、「知らないのがアホ」といわんばかりだ。
法律と一般素人の間をつなぐべき立場の者が、なんて言い草だろう。
将来 家を建てる時、こんな会社には絶対頼まない。
まだ恋人もいないのに、なっちゃんは新居を建てる気になっている。
知らなかった。
自分で調べて初めてわかった。こんな事 誰も教えてくれない。
だって「家が倒壊しない」と言われたら
修理すればそのまま住める、家は残ると思うのが普通じゃないか。
それが、「次の揺れで倒壊する。もう住めません」なんて、家が壊れたのと同じじゃないか。
震度7でも、運が良ければ持ちこたえるのだろう。
だが地盤がゆるく、キラーパルスで共振が起きたらどうなるか?
揺れる時間が長かったら、どうなるか?
震度7が立て続けに起きたら、どうなるか?
生命は助っても、住む家がなくなるのだ。
とりあえず、家が倒れなきやいいのか。
生命さえ助かればいいのか。
住めなくなっても、それでいいのか。
それが安全な家だって? そんなバカな話があるもんか。
その後、どうやって生きてゆくんだ!
たぶん、私達のほとんどは、その事を知らずに
( 最新の耐震基準だから大丈夫だろう ) と思っている。
ところが、2000年基準には、限界どころか、こんな落とし穴まであったのだ。
「2000年以降の建物だから大丈夫」と言われたおじいちゃんの家は 耐震基準1 のはずだ。専門家の言う通りなら、予想される震度7で安心していられるわけがない。
この事を知った時、夏美はゾッとすると同時に、めちゃくちゃ腹が立ってきた。
コロナ以降 流行っている「安心安全」という標語は、2000年基準ではまったく通用しないのだ。
心ある専門家は言う。
…………………………………………………
2000年基準 震度7に 一度だけ耐え傾いても命を守って その後の余震で倒れる
住み続ける事を前提にしていない
耐震等級1 ➡︎ 国がいう安全な家
それに対して 熊本地震で 2回の震度7に耐えて無傷か軽微な損傷のみ
全てが住み続けられる状態で残った
耐震等級3 ➡︎ 私達が考える安全な家
⚠️九州熊本 基準通りなのに なぜ倒れたのか?
耐震基準1の正体 ➡︎ 1回目でガタガタになり、2回目の揺れで倒れた
⚠️能登半島 新耐震なのになぜ壊れたのか 耐震基準1はその程度のもの 過信するな
国の考え方と 私達の考え方には大きな違いがある。
両方の間に立つ建築業者でさえも、この違いを認識しているものは少ない。
ほんとにそうだ。 父さんは大工だから、れっきとした建築業者なのに
2000年基準の耐震等級1を、震度7でも住み続けられる安全な家 だと思っていたんだもの。
いったいどうすればいいんだ?
唯一の救いは、最新の2000年基準を超える耐震等級3の建物には、ほとんど被害がなかったという事実だった。
● AI検索 資料
耐震等級が高い住宅は被害を軽減することができ、例えば2016年の熊本地震では、耐震等級3の木造住宅は倒壊がゼロであり、80%以上の建物が無被害という結果が報告されています。
地盤や基礎の状態も被害状況に大きく影響し、軟弱な地盤に建てられた住宅はより大きな損傷を受ける可能性があります。
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