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網代のイケてる宿で読者泊がしたいのだが...

網代と書いて、”あじろ”と読む。
網走と書いて、”あばしり”ではない。

いっとき、伊豆半島の南にある下田にハマってて、「もう東京を捨てて、下田に移住したろか」と思うほどハマってた。
ならば、「一週間、宿に泊まって、そこからこっそりリモートワークしたろ」と思いたち、コッソリ温泉宿から打合せもプレゼンもお届けしたことがある。
とはいえ、根っからの小心者である僕は、海辺の温泉宿に泊まっているのがバレないように、細心の注意を払ってお届けしていた。ZoomでカメラONの際も、どこかわかりにくい画角を見つけ、すました顔で登場。
ところが、思わぬ大敵がいた。それは、船の汽笛!スマートな打合せが進む中、海からボーーボーーっと遠吠えのような大きな音が鳴り響く。「あれ?今何か聞こえました?」「・・・いや、僕は聞こえなかったですね」って、自分やろ。

すっかり前書きが長くなってしまったが、熱海から下田に向かうJR伊東線に乗って、列車に揺られ10分ほど経つと、視界に昔ながらのコンパクトな温泉街、その先に、穏やかな海が広がっている。「おー、伊東線サイコー」と叫びたくなるシチュエーションだ。
すると、列車は止まり、「網代~網代~」(網走ではない)とアナウンスが。
車窓から見下ろす網代の町が、海と山に囲まれて、コンパクトで、ちょっと鄙びていて、とてつもない旅情に襲われて、つい降りたくなるのだが、まだ一度も降りたことがない。
以前、伊東線の僕の前に座っていた、そこそこいいお年の「お前らぜったい不倫だろ」と、心の中で15回は突っ込んだカップルの男の方が、ちょうど駅に差し掛かった時に、「網代は、いいんだよな。また来たいな」と女の方に優しくささやいているのを聞き、不倫カップル(にちがいない)の、埋められない距離の寂寥感みたいのも相まって、ますます、網代という町の旅情が増幅してきて、行きたさが募るけどなんか行かない場所ナンバーワンに君臨するようになってしまった。

だがしかし、先日、Xで、20代と思われるカジュアル系のファッションスナップを頻繁にアップしているオシャレ女子が紹介していた宿に、うっかり心を奪われてしまい、調べてみると、それはなんと偶然にも網代(網走ではない)にあったのだ。

ちなみに、僕は、読書泊というのが好きで、それは、最近流行りだしから、当然僕も、最近ハマり出したのだが、文字通り読書を目的として、宿にこもってひたすら読書をする旅である。願わくば金曜の夕方あたりから仕事をサボって、金土日と連泊するとサイコーである。読書、お風呂、読書、ビール、つまみ、読書、ご飯、お風呂、ビール、酒、酒、酒、読・・・寝落ち、、、な感じを繰り返す、人によっては最高な娯楽なのだ。人によっては。

だから、部屋と外との関係はとても大事で、窓が開いて、やわらかい風が入ってきて、鳥のさえずりや、木々のざわめく音などが意図せず流れ込んでくる中、緑や水辺の景色が広がるような、アルファ波全開な環境が求められるのだ。

すっかり、お待たせしてしまったが、Xでカジュアル系のファッションスナップを紹介している20代くらいのオシャレ女子がオススメしていた宿の部屋の写真をホームページから拝借してみる。

読書をする気分になって、眺めてほしい。




海を眺めながらソファーで読書
さりげなくレコードがある
和室もあります
夕暮れがまた絶景




サイコーです。

宿の名は、「HOTEL 2YL」。オシャレ。
温泉がないのが残念だけど、エモすぎる雰囲気に免じてそれは聞かなかったことにしよう。

しかし、ここで気がついたことがある。
いったい、ここに誰と訪れるか?という問題だ。

うちの妻は、オーセンティックな古き良きホテルみたいのが好きなので、こういうデザイナーズな雰囲気のところがあまり好きではない。だから、「一人で行ってきなよ」という話になる。

誰か、他の女子と行ってみたい気もするけど、そもそも行く相手がいないし、さすがにこのコンプライアンス全盛時代において、それは正直憚られる。言語道断の極みである!

うじうじ言ってないで、一人で行って来いよという声が聞こえてくるが、ホームページの写真の佇まいからして、ここはぜったいに、イケてるインスタを使いこなす若者向けのホテルである。若者のカップルや、若者の女子会や、シュッとしてよこしまな思いなど皆無な男女混合チームが泊るホテルである。そこに、僕みたいな40代のおじさんが一人で泊っていたら、「あのおじさん、きっと何か訳ありね」とか「おっさんがいると、テンションだださがりだわ」とか「おじさま、なんか可哀そうだわ」とか「単純にキモい」とか、洗練された場の空気を濁すこと間違いなしだ。

では、おじさん友達と行くのか?というと、「おじさん二人でここ?」と陰口を叩かれるばかりか、つい、酒盛りをはじめてしまって、やがて口論となり、騒音を垂れ流し、海をうっとり眺めるカップルの雰囲気台無しで、それこそ、出禁レベルの事件である。であるし、読書泊という目的がまるで達成されない。

というわけで、そんなこと誰も何も気にしていない中、僕は勝手に気を揉んでいるわけだが、鄙びた網代という温泉街のデザイナーズな宿でレコードに針を落としながら、デザイナーズチェアにもたれかかって、相模湾の海を借景に、ゆっくりワイングラスを片手に読書をする夢は、いったいいつ叶うのだろうか。(行かれた方、ぜひ、感想をください!)



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