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『もう二度とあれ以上はない』


今週末から公開の、映画ギヴン海へ。
まーー楽しみすぎていて、すでに何十回と観た過去のアニメ、映画を見返しては涙する日々。

何度見ても絶対泣くのだ。もう展開わかりきってて、なんならセリフだって丸覚えなのに。
なのに、泣ける。心が揺さぶられる。

そんなギヴンのなかで、私の推しである村田雨月は、『もう二度とあれ以上はないだろう』と過去の恋を懐古するシーンがある。

愛しているけれど別れるしかない相手との恋をそう表現しているのだが、まあこのセリフが、私にはあまりに身に覚えがありすぎて。

かつての自分も、そう思った恋があった。
そしてそれは、この歳になって恋愛の第一線から退いた今、答え合わせができてしまっているから。

二十歳の頃に抱いた『あれ以上はない』と思った恋を越える恋を、私は結局できなかった。

その恋が終わった後も、色んな恋をした。
付き合った年数でいえば、彼よりも長く付き合った人もいたし、彼よりも見た目がタイプな人も、彼よりも自分を大切にしてくれる人もいた。

けれどやっぱり、あれ以上はなかった。

私とその彼の終わりは、まあグズグズのドロドロのゲスゲスだったから決していい思い出ばかりじゃない。むしろ最後の方が汚すぎて、よかった頃の思い出さえ薄れてしまうくらい。

なのに、あんなにも自分を暴かれて、曝け出して、お互いにあまりにもみっともなく、まるで世界に二人しかいないみたいな恋は、やっぱり彼との恋しかなかった。

彼のどこがそんなに好きだったのか、もうよく覚えていない。というかわからなくなったのだと思う。あまりに最後がグズグズになってしまったから。

大っ嫌いなのに離れられない。
世界で一番大好きなのに消えて欲しい。
なんかそんなふうに思っていた。

書き起こしてみるともう…目も当てられないかんじなのだけれど、当時はそうだったのだ。まったく幸せな恋なんかじゃなかった。
いや、幸せな頃ももちろんあったはずなのだけど。

しかし私にとって一世一代の恋は、間違いなく彼との恋なのだ。自分の200%で挑んだ恋。
好きという気持ちだけでは、うまくいかなかった恋。

ギヴンにおいて、雨月と秋彦(あれ以上はないと言った恋の相手)を見ると、私はどうしたって彼との恋を思い出してしまう。

いやもちろん、作中みたいに才能とか夢とか、立派な理由があったわけではないのだ。

ただただ、私が社会人になって彼は大学生で、時間もお金の使い方も、色んなことが少しずつずれていって、気づいた時にはもうどうしたって噛み合わないところまできてた、ってだけの話。どこにでも転がってる、よくある話。

それでもあの頃の私は、私たちには、どうすることもできなかった。勤務形態や仕事を変えることも、大学やバイトを辞めることも、できるわけなかった。そしてお互いに色んな価値観を変えることだって、できなかった。

今頃彼は、どんな大人になっているだろう。
私がこうもまともな顔して子育てしているなんて、きっと思いもしないだろうな。
私だって彼がスーツ着てまともに会社勤めなんてしてるの、まったく想像できない。

それほど、私たちは幼かった。あの頃の自分と今の自分、感覚的にはそんなに変わっていない(成長していない)気がするんだけれど、彼とのことを思い出すと、自分はちゃんと普通の大人になれたんだろうなぁと思ったりする。

だから、あの時間もやっぱり無駄じゃなかったのだ。
彼と顔を合わせている時間以外はずうっと不安で、周りを巻き込んで、色んな人を傷つけて、とにかくずっとしんどかった。そんな思いしても、なんにも変わらなかった。私と彼はもう別れるしかなかった。

失うばかりでなんにも残らない恋だと思っていたけど、それも無駄じゃなかったってことだ。

無駄にしなかったあの頃の自分、ほんとえらい。若さって無鉄砲でタフですごい。

『もう二度とあれ以上はない』と思った恋は、凄まじい痛みを伴って、私を普通の大人にしてくれたのだろう。

……などと、若かりしあの頃を思い出しては、ほんのりほろ苦い気持ちになったりもする、私にとってギヴンはそんな作品。

個人的に、『あれ以上はない』を越える恋は、きっと雨月にも訪れないと思うのだ。でもそれでも、ちゃんと幸せになれる。無理してるとか強がってるとか諦めてるとかじゃなくて、本当に。

その恋があれば、その恋があったから、気づける恋もたしかにあると思うのだ。

そしてその恋がどれほど幸せであっても、ずっと心の奥底に残ってしまうような恋。『もう二度とあれ以上はない』恋。

それを忘れることは、たぶん、生涯ないだろう。

私はとにかく雨月の幸せを願ってやまない。
たぶん作中でこんなにも多くの人から幸せを切望されてるの、雨月くらいだと思う。

とにもかくにも。映画、楽しみだな。
あと3日…!

(ちなみに村田雨月は全然主人公ではないです、でも今作ではかなり重要人物!)

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