🍎偏差値45の教員。先生になる

校長室に行くと、校長の他に教頭と部活動担当の村田先生が座っていた。学生時代に怒られたことを思い出す。村田先生が口を開いた。
「率直に聞くけど、部活動持ちたくないの？」
「何でですか？」
「職員会議の発言を聞いて、松島先生からやる気が無い先生と組みたくないから顧問を変えてほしいと言われたんだよね。」
「はぁ、そうですか。」
「部活動は一応ボランティアだから、校長から命令したり、勝手に配属を決められないんだよ。」
「はぁ。」
正面に座ってる校長と教頭を見ると、会話の内容をノートにメモしているだけで口を挟む気配はしなかった。
「松島先生いい先生だけど、熱心すぎて女子生徒と合わないんだよ。だから、若い女の先生と組んだ方が良いと思ったんだけど。」
「はぁ。そもそも私、バスケとかしたことないですよ。」
「うん。それは関係ないんだよね。未経験でも部活動顧問になるのは普通だからさ。ただ、部活動持ちたいの？持ちたくないの？」
「別に私は何とも思ってません。松島先生が嫌なら変えてもらっても良いですし、都合の良いところに入れてください。でも、部活動がボランティアなら持ちたくないです。」
「持たない、という選択肢は無いからさ。持ってもらわないと困るんだよね。」
「はぁ、そうですか。」
話の辻褄が合ってないことぐらい、私にでも理解できる。村田先生の体型が体育教師なのに中年太りで不摂生な生活が目の下にも表れているのと同じぐらい話が矛盾していた。これが、教員の真の姿なんだな、とか俯いて自分の手を眺めている教頭を見ながら考えていた。
「じゃあ、先生はどこの部活でも良いんだよね。」
「はぁ、まぁ、そういうことで良いです。」
「わかった。ありがとう。」
と、言われて校長室から出るように促された。職員室で仕事をしている松島先生と目が合った。私は聞こえないように舌打ちをするので精一杯だった。子供じゃねーんだから直接言えよ、とか思ったが何も知らない私が悪いので素直に自分の席に戻った。


職員室の机には折りたたんだ黄色い付箋が貼られていた。
若手の飲み会を今日しませんか？19時半に焼肉モウモウに集合です。連絡先はこちらです。　青井
と、書かれていた。