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ハートが溢れる学生時代


何者かになりたかった。なれなかった。学生時代から私は私になりたかった。制服のスカートを短くしてみた。先生に怒られた。アイテープをしてみた。変だよ、と言われた。マスカラをしてみた。寝不足?と言われた。

頭良くなりたかった。なれなかった。授業中の先生の話が理解できなかった。質問に正対した答えが言えなくて、変な子だと思われた。ピンクのドクターグリップのシャーペンはペン回しがしやすかった。何かしてないといけないと思って、ペン回しの練習をしていた。字が汚いと言われて、書かなくなったキャンパスノートは最初だけ日付が書かれていた。

自分の言葉で誰かを救える人になりたかった。なれなかった。友達は皆、離れていった。話さないほうが良いんだな、と思った。誰とも話さない日が続いた。

明日が来なければいいな、と思った。明日が来てほしいとも思った。誰かに救ってもらいたいのに、愛され方は知らなかった。周りの人を拒絶して逃げてたけれど、赤と黒のスライド式のガラケーでセンター問い合わせを何度もした。連絡は来なかった。救いは何もなかった。

あの時の自分を抱きしめられるのは今の自分だけになった。そっとギュッと抱きしめたくなった。そんな夜に、これからの夜に、乾杯をしよう。

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