🍎偏差値45の教員。先生になる

教員生活も1ヶ月が終わる。20時半に帰宅し、21時半までに夕ご飯と風呂を終わらせて、0時まで勉強する生活が習慣化してきた。朝は6時起き。正直、体は怠いししんどい。それでも、生徒と話すと萎びた葉っぱが水分を補給してイキイキするような感覚になる。

もちろん、その逆もある。私が勤めている曙中学校は、中間テストを控えている。私も初めてのテスト作りで緊張をしている。授業のプリントや生徒に配布したワークを開き問題を作る。
平均点が50点から６０点になるように作りたいが、初めてのテスト。生徒の学力がどれぐらいかわからず、この問題でいいのか何度も印刷して試行錯誤をする。

授業中に、「定期テストが近いから勉強を頑張ってね。毎日、家庭学習帳ノート1ページはするといいよ。ワークから出るからワークも3回は解こう。」と、言った。そうしたら、１組の岡田が
「そんなの無理っすよ。」と、言ってきた。
「いや、無理じゃないよ。」と返答する。
「じゃあ、いつ寝ればいいんっすか。寝る時間無くせって先生なのに言うんっすか。」
と、岡田も引かない。教室が静まり返る。女子の何人かは、目組ませをしてクスクス笑っている。
「あのさ、何で岡田さんはさ、できない理由ばかり探すの。できない理由探してたらキリがなくない。そうやって、できない理由並べて一生過ごすんだ。」と、言ってみた。これもまた、毎日ボロボロになりながら採用試験の勉強をしている自分に言い聞かせていたのかもしれない。学級委員の生徒が空気を察して背筋を正す。
「は？だって、事実ですもん。できないのは事実です。俺、サッカーもあるし。」
「じゃあさ、できない理由を探してそのまま生きて、社会に相手にされなくなってもいいんだ。今、あなたがそこに座ってられるのは、保護者や周囲の大人がいるからね。大人になって、やる前から頑張らない人間と働きたい人はいないんじゃない。そうしたら、自分の椅子無くなるよ。」
やば、言いすぎた。また、カッとなってしまった。

白けた空気の中、教科書の音読をするのは心臓を抜かれた感じになる。5月だというのに、汗臭い生徒の酸っぱい匂いが鼻腔をくすぐる。

授業が終えて振り返りを生徒が書いているとき、少し冷静になった。
「蒸し返すようで悪いけど、やっぱり、先生はさ、やれない理由よりやれる理由を探して欲しいの。出来ないな、と思ったときに、でもまだ時間がある、とか、この問題は解けたからまたできる、とか、そういう思考になって欲しいんです。はい、終わり。」

と言ったら、学級委員が号令をかけた。1番心にくらったのは紛れもない自分自身である。教科書が手汗でシワシワになっていた。