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【天音ルート】「グリザイアの果実」をプレイしました
こんにちは、たくやです。
グリザイアの果実をプレイしているので全ルートやったら感想をしたためようかなと思ってメモをしていたのですが、一人一人の内容が多くなってしまいそうなので小出しにしたいと思います。
「グリザイアの果実」、天音ルートのネタバレ注意です。
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天音ルートをクリアした直後の私です。こんにちは。
天音ルート、面白かったです。
一応これがこのゲームの初クリア、という形になるのでかなり長かった印象がありますが、共通部分を考えるとまあ過去編を差し引きにしてもちょうどいい長さだったかなと思います。
天音ルート全体を通してのざっくり感想
一人の女の子が凄惨な事故に巻き込まれ、二次的な被害を受けながら心を病み、そして贖罪として遺族の少年である風見雄二に尽くす…。という展開で、非常に目新しく、面白かったです。
普通の、複数攻略対象がいるギャルゲーであれば、共通ルートでキャラの特徴をつかませ、個別ルートで内面の深いところを小出しにしていき、最後にそれを回収するという構造が多いかなと思いますが、天音ルートの場合は共通ルートで漠然とちりばめられてきた行動やそれに対する違和感が過去編で一気に回収されるという構造になっており、無駄がないというか、シナリオ力が高いというか、とにかくよくできたシナリオだったと思います。
最初は見た目やら行動やらが刺さった幸を攻略しようかなと思っていたのですが、天音の行動の健気さとそれに対する雄二の塩対応が可哀そうで、同情込みで気づいたらルートに入ってましたね…。
最初は「げ……下品な女だ…… でかい声で……」とかベジータみたいな顔つきになっていたのですが、だんだんと素性がよく分からずアプローチを断り続ける雄二よりも一心に思いを伝え続けて尽くしてくる天音の方に感情移入しちゃうような設計になっていたと思います。実際最初の攻略は天音っていうケースも多いんじゃないでしょうか。
…まあこの段階ではそれもある意味で本当の愛というわけではなかったのですが…。
雄二の姉との関連はかなり匂わせが多かったので、なんか重大な過去があるんだろうなぁと思ってはいたんですが、あそこまで重厚な過去編が展開されるとは思っていませんでした。
その割にそのあとの展開が短かったというか一気に風呂敷畳みに行ったような印象で、急に復讐者のおじさんが出てきたり(実際こんな狂い方する人いるか…?とか思ってた)、それを退けたと思ったらささっと卒業してテンポよくエンディングに向かっていきましたね。
もう少し天音が内心を吐露した後の変化なりドラマなどについて深く掘り下げしてくれれば嬉しかったなあと考えていました。
そしてなんとキャラクターが亡くなるまでしっかりとストーリーを描き切るというのは寡聞にして見たことも聞いたこともなかったシナリオだったので驚きました。
雄二が天音に科した「ごめんではなくありがとうと言う」「一生俺のためだけに生きる」という罰が生涯を通じて守られ、それが次世代に対して何かを残し、死を眼前にして自分を許すことができたという展開はかなり良かったですし、過去編の展開を踏まえて、天音自身が他の部員の死を背負っているというテーマを持っていることを加味すると、やはりここまで描くのは妥当性が高いしよく書いてくれたなぁと思いました。
天音が雄二を贖罪という形で愛したのと同じように、雄二が天音を罰という形で愛した、というのは何とも綺麗な展開ですよね。こういう形の愛を描いたストーリーというのも面白いなと思いました。
「周防天音」というシナリオの高い完成度
とりあえず印象的だったのが、天音の行動の納得性の高さでした。
序盤の天音の行動を見ると、急に告白してきたと思ったらお姉ちゃんになろうとしたり、雑に扱われても「面白くない」で済ませたり、付き合ってから急に高頻度の性行為を求めてきたりと、「なんかよく分かんねえけどこいつ、俺のこと大好きすぎる・・!」とか思ってたんですが、過去のトラウマから成る自罰的な行動としてこれらの行動を行っていたんですね。
実際現実世界でもマゾヒストの方によくあるケースとして、低い自己肯定感から自分が幸せだと違和感を感じる、みたいなケースも聞くので納得感のあるパーソナリティだったかなと思います。
もう少しわかりやすいケースでいうと、「物事がトントン拍子で行くと違和感がある」というような発想は誰でもあると思いますが、そこから自分に障害を与えてくれる存在を認めると自分の違和感を払拭してくれる安心感を感じるようになり、漠然と人生全体に対して「自分なんかがうまくいくはずない」と思っている人であれば結果的に自分を責め立てる人や行動を志向することも十分考えられるでしょう。セルフネグレクトと同様の原理ですね。
天音の自罰志向という点から考えると、必要以上にマキナに世話を焼いたり、あえて自分の体を雑に扱う、露出度の高い服装をして商店街でサービスを得たり、自らを「ビッチ」、汚れた存在であると称したりというように、関連するシーンや行動は多かったかなと思います。
このようにパーソナリティの一側面を切り出しただけでもいろいろな行動との関連というか納得感が感じられるので、本当に緻密にストーリー作成を行っているなというのをひしひしと感じ、圧巻でした。そのような意味で、一見して意味のないパートである日常パートにちりばめられた伏線とそれが一気につながる伏線回収で非常に完成度の高いシナリオであったと思います。
過去編
過去編、遭難編に関しては…、シビアというか鬱というか、かなり重い話だったなと思います。読み物として単純にかなり面白かったなという印象が先行していました。
実際ほとんどのキャラクターは本編のシナリオに関係ないにもかかわらず、詳細に描かれており、一姫の考察もその描写の深さを加速させる要因になっていました。
その描写自体が天音のストーリーにどの程度関わってくるのか、という話になるとかなり限定的だと思いますが、その描写のおかげで事件の凄惨さがかなり際立って伝わってきたと思います。エロゲー・ギャルゲーとしてというより、シナリオとして面白いものを書きたい、もしくは天音の感じたことをリアルに追体験してほしいというメッセージが強く伝わってくる紙面の割き方だったと思います。実際一人ひとりに立ち絵が用意されている力の入れようも感じられ、それがあったからこそキャラへの感情移入が加速し、事件の凄惨さがより強く伝わってきました。起きていること自体は遭難系の小説などと比べても大きく変わらなかったとは思いますが、立ち絵やキャラボイスが設定されていることのメリットであるように思えます。
そのおかげもあり、天音のリアルな感情としてだんだん変わっていく部員への恐怖や悲しさ、そして一姫という人間がどれだけ天音にとって重要な存在であったのかが強く伝わってきました。少し冗長なようにも感じましたが、その描写の一つ一つに伏線回収もちりばめられており、重要なものであったと感じます。
天音の「愛」
今回のシナリオを通じて気になっていたのが、「天音は雄二のことが好きと言っていいのか?」という問いですね。
天音自身は雄二の姉、そして残りの部員を見殺しにしたことに対する贖罪や自罰の一つの手段として狂気的にまで雄二に尽くそうとした、というような流れで二人は付き合い始めたんですよね…。それでそのあとから雄二のことが好きになり始めた、というのはう~~~~~~~んどうなんだろうというふうに感じました。
シナリオへの難癖や天音へのヘイトという意味ではなく、それって「愛」なんだろうか?という意味です。もちろん天音は雄二と一緒にいるのがだんだん心地よくなってきて、望まない恋愛を通じて自罰を行うことへの限界を感じていたわけですが、でもそれって自分が置かれた立場に合わせて認知が変容してきた(少し違うけど、誘拐された人が誘拐犯のことを好意的に思うようになるストックホルム症候群のような)結果かもしれないし、雄二に対して時間や労力などのリソースを大きく割き続けた結果として、認知的不協和(こんなに時間をかけたんだから、相手は大切な存在なのだと思い込むようになるみたいな感じ)から愛が生まれたかもしれないし、とにかく「それって本当に『愛してる』ってことなんだろうか?」みたいなところをずっと考えていました。
実際雄二にそこまで尽くすほどの甲斐性があったのかといわれるとう~~んって感じですし、雄二を「贖罪の道具」から「愛する人」に変化させるような強烈なターニングポイントのエピソードがあった言うのも少し難しいように思いますね…。
個人的な解釈ですが、少なくともシナリオの描写が豊富だった学園生の段階の天音にあったのは雄二への愛というより、一姫への愛だったのかもしれないとも思います。過去編で「親友」である一姫には返しきれないほどの恩を受け、それを返すことができない天音は、一姫へ尽くすようにして雄二に愛を注いだ…という風に私には見えました。
実際雄二と一姫を重ねてみているシーンもあったですし、一姫の願いだった「雄二に会ってほしい」という願いに最後まで準じて行動していたとも捉えられます。
こう考えると結局天音は過去の事件に捕らわれたままと考えることもできるかもしれません…。ただそうやって他者に誰かを重ねてその人を愛するというのもまた一つの愛の形かもしれませんし、前述したように、一生かけて贖罪をさせてほしいというのも、ある意味で『愛』の形だとも思います。また、天音から一姫への愛という意味では、天音はずっと一姫の(このルートでは見られてないけど)遺言を守り続けたという意味で、一生涯を通じた純愛であるといえるかもしれませんね。
そのようなことまで考えることができたのもシナリオ、というか天音の行動やパーソナリティ、思考回路の詳細までもがよく表現され、かつその内面や考え方がリアリティの高いものであったからだと思います。よくできたシナリオでした。また、贖罪に伴う愛というような、違和感を覚える人がいてもおかしくないシナリオは挑戦的であったと思います。
とりあえず当面は「グリザイアの果実」をクリアするまで各ルートの感想を小出しにまとめたいと思います。よろしくお願いします。
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