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【みちるルート】「グリザイアの果実」をプレイしました

こんにちは、たくやです。

グリザイアの果実をプレイしているので全ルートやったら感想をしたためようかなと思ってメモをしていたのですが、一人一人の内容が多くなってしまいそうなので小出しにしたいと思います。
「グリザイアの果実」、みちるルートのネタバレ注意です。


みちるルートをクリアした直後の私です。こんにちは。

いや~~~~~~~~~~~~~みちるルートめちゃめちゃ良かったです。
みちるはこれまでの共通ルートの中でも、ラムネのような専用の錠剤を携帯していたり、美浜学園に入学しているという背景を考えるとあまりに振る舞いが明るすぎたりと色々気になっていたんですが、いや~~ここまで自分に刺さるストーリーが来るとは思わなかったです。


関係ないけどここの下ネタ面白かった

みちるルート全体を通してのざっくり感想

普段は「ツンデレキャラ」を演じ、教室では明るく感情豊かにふるまっている元気な女の子でしたが、その実内心には強い不安や自分という存在への絶望が満ちていました。外面的には道化を演じて場を盛り上げたり個々人の性格やニーズを把握してサポートしたりする一方で、強いストレスやトラウマを刺激されるような場面では激しく情緒が不安定になり、その度に入れ替わるもう一人の自分への恐怖を感じている…というようなシナリオでした。

いや~~~~~~~~~面白かったですね!
もちろんこの設定自体も印象的ですが、そのような状況からどのような事件が起こり、そしてどのように彼女が自分を救っていくのかというシナリオの展開が非常に良かったです。
それで最終盤にもう一展開あったのが良かったですね、最後まで驚きたっぷりでした。


みちる自身の過去が悲惨なのは言うまでもないですが、そこから発展して組み合わさり、「もう一人の自分の方がうまくやってくれる」という方向に心がシフトしていく多重人格キャラみたいなのは流石に始めてみましたね、しかもその心の動きに強い納得感がありました。

しかもそれを支えるのが担当声優、羽仁麗さんの熱演ですね。
いや~正直R-18ゲームの声優の方ということでそこまで期待はしてなかったんですが、素晴らしかったです(表名義でも有名な方なのでそれも納得といった感じですが…) 。
やっぱり挙げたくなるのはランドリーで癇癪を起こすシーンですかね、あそこのシーンはボイスまで聞かないと細かいシーンのニュアンスが分からないですし、あそこのおかげでみちるの不安定さや何らかの異変が感じ取れます。
そこに限らずとも、ドラマを見ているかのような臨場感のある演技の数々には驚かされました。特に終盤はずっと泣きそうな声をしていて、かなり心が締め付けられる気持ちになりました。
おかげでたっぷりボイスを聞く羽目になり読破に時間がかかりましたね…。

シナリオ面で一番印象的だったのはやっぱりBADENDですよねぇ。
選択肢から考えると病院に連れて行くというのがどこか突き放しているようにも見えて、みちると一緒にどこかに逃げてしまうというのも悪くないかな~~と思って最初に選んだ選択肢はこれだったのですが、まさかあんなことになるとは…。

設定がよくてぇ!演技が良くてぇ!みたいな話を繰り返していますが、一番完成度が高いのはシナリオの組み立て方だと思います。
みちるルートの切り口は雄二のキスということで恋愛方向なんですが、それを彼女の環境の変化というストレスとしても描くことで、ストレスを感じた時に現れるみちるの内面を同時に描写していました。
このようにして「恋愛」と「内面の掘り下げ」が密接にかかわって描写されていて、どちらもがどちらもに働きかけ、連鎖するように展開していくシナリオの進め方は、まさに「恋愛ゲーム」の完成形であったと思います。

またそのため、二人がいちゃいちゃしているようなシーン(みちるの可愛い一面を描写したいシーン)とみちるがそれに伴って苦しむシーン(みちるのシリアスな一面を描写したいシーン)が並行して、どちらも意味があるものとして配置されており、本当にシナリオ作りがうまいなと思いました。

この泣きそうな顔好き


「松嶋みちる」の心と両価性

さて、松嶋みちるの内面については色々なことを考えましたが、他のキャラに比べても結構入り組んでいて、様々な要素から構成されているように思います。
簡単にみちるの内面を理解するのに必要なファクターをまとめると、親からの過剰な期待と失望、家庭教師からの暴力、親友に先立たれた悲しみ、体に複数の精神が宿る不安感・解離(ざっくり自分の体が自分のものではないような感覚)、道化を演じることへの強迫観念…といったところでしょうか。
これらの要因が「自己肯定感の低さ」という鎖で繋がっています。
幼少期の経験や親からの態度から自分の価値の低さを認め、親友の死を通じて自分にとって大切なものが無くなっていく無力感を覚え、そして結果として、愛してもらうために自分の欠点を生かして道化を演じ、何事もそつなくこなすもう一人の自分に交代してほしいと思うようになります。
これだけ多くの要因がありながら一本に繋げてすべてを回収しきるのはシナリオの手腕~って感じですね本当に。

そしてそのみちるを救ったのは自分自身から生まれる「生きたい」という欲求でした。雄二のやった「みちるを殺す」という方法自体は…う~んどうなんだろうというか、結局のところ生物学的なエマージェンシーコールを誘発することによって無理やり生に対する意欲を引き出し、「ほらお前は生きたいんだろ?」というのは何となく恣意的なきらいもあります。
ただそれによって、みちるが自身の感情を自覚するきっかけを作ったという意味では悪くない選択肢だったのかもしれませんね。

あまりじっくりと言及されなかったのですが、結局のところどこまでもみちるを支配しているのは「自分を誰かに愛してほしい」という強い欲求であったように感じます。
だからこそ自分が誰かに愛されるために「道化を演じる」という方法を選択し、トランキライザーを服用して上手くやってくれるはずのもう一人の自分を抑制し、いつまでも死を選べなかったんだと考察します。
親からは愛してもらえず、親友も自分より大切な人のことを考えて死を選んだ、そんなみちるが美浜学園で同級生からの愛を受け取って「生きたい」という感情を強く自覚する…。というような展開だったと解釈しています。

ここが個人的なみちるシナリオのミソなんですが、そのみちるの「生きたい」「愛されたい」といった欲求がこれまでの経験によって否定され、隠されているんですね。つまり、「生きたいけど生きている価値はないから死んだほうがいい」「愛されたいけど自分には愛される価値もない」「愛したいけど自分が愛したものはいなくなってしまうからもう愛したくない」というような、みちる自身の両価性がこのシナリオのテーマであり、みちるの内面の複雑さを演出している部分だと思います。

みちる自身少しアレキシサイミア傾向(自分の感情を認知できない傾向)があるというか、先ほど挙げたみちるの内面のネガティブな後者の部分だけを自覚しており、前者の部分は行動や本能的な側面から現れています。
猫ニャーに名前を付けられないという時に雄二から「名前を付けたい」という自分の側面を指摘されてニャンメルという名前を付けたり、死を眼前にして初めて自分の生きたいという気持ちを把握したりしていました。
つまり、みちるは「愛してはいけない」「生きてはいけない」という強迫観念にだけ支配されていて、自分がどうしたいのかという内面に全く目が向けられないということですね。これもみちるの今までを考えれば強い納得感があります。

みちるの選択したキャラクターである「ツンデレキャラ」もそれを加味したものであると考えられますね。ツンデレ自体がツンとデレの対極的な性格の融合によって成立しています。
そう考えると徹頭徹尾、誰しもが抱えるようなアンビバレントさを体現したキャラクターデザインであり、正反対の信念がどちらも両立しているという精神性を考えると、彼女は真のツンデレだったと考えられるかもしれません。

みちるの内面の話をすると若干自閉症スペクトラムの傾向がある感じもしましたね。BADENDでの自己刺激行動(太陽の光を見ようとし続ける)とか、想定外の出来事に対する対応力がなくて色々なことを把握できる形で管理しようとするメモとか…。

そういえばマキナがみちるにトランキライザーを渡していた、みたいな共通ルート序盤の伏線は回収されなかったですね…。みちるが非正規のルートから抗不安薬を仕入れていたのは大変に良くない行為ですが、それに関してはマキナルートでかな?

シナリオを彩るリアリティ

シナリオの完成度の高さはさんざん言及していた通りですが、それを支えてるのがシナリオ全体のリアリティだと思います。

分かりやすいのはやっぱりみちるの声優の方の演技ですね。
そもそもみちる自身が、おちょけてみせる日常生活のみちる、傷ついたことがあった時のアンニュイなみちる、もう一方の人格のみちる、もう一方の人格のみちるが演じる日常生活のみちる、シナリオ終盤の元気でありながら自然体なみちるなど、同じキャラクターの声帯であっても、演じ分けが非常に大変だったと思います。
それでも、同じ日常生活で道化を演じるみちるにしても両方の人格で演じ分けができていて、本当に声優力が高いなぁと思いました。

同じ演技の話で行くと、前述したような癇癪を起こすシーンだとか、二人きりの時に雄二に対して内心を吐露するシーンだとかは、アニメの演技というよりは映画やドラマのワンシーンを見ているようなボイスだったというのがふわっとした感想です。
客観的に見るなら字幕のセリフ通りではなかったり、ある意味で聞き取りづらいような発音だったりといったセリフは多々あったんですが、それが現場の臨場感を演出するのに影響力を発揮していて、月並みな表現ではありますが、フィクション作品を超えて自分がその場にいるようなリアリティを表現していたと思います。


それに並行してですが、みちるのセリフ回しや雄二への返答もすごく等身大でリアリティがあったと思います。
みちるは自分のことを頭が悪いと評していますが、実際に考え方や言動はすごく感情的なんですよね。
もう一人の自分について雄二に聞いたときに、その女の子のことが好きかどうかを聞いたり、ニャンメルが息絶えた時にその現実を認めるように言うと、なんでそんなことを言うの?と聞いたり、正直な話をすると雄二とみちるの温度感がいまいち噛み合ってないんですね。
でもそのような噛み合わなさというか感情的な側面がみちるの魅力で、かつ、ともすればシナリオに不合理さや無駄な時間を生んでしまうようなやり取りを入れることで、等身大の子どもでもある彼女のリアリティを生んでいるという風に感じました。

冷静に見ると、みちる自身は(ある種の)家庭内暴力、希死観念、多重人格というように、かなりシビアで辛い境遇にあるはずなんですが、みちるとのやり取りの中心にあるのは雄二との恋愛なんですよね。ここも面白いなぁと思っています。
確かに当人になってみれば自分の過去やら心の不安定さなんていうものはあんまり改めて顧みるものでもないですよね。そんなことよりも目の前の好きになった男の子との恋愛の話の方が興味あるし、飼い猫の方が大事です。

そのようなリアリティがシナリオの面白さにも寄与していていると感じたのは、ルート中で何度も触れられた「死」というテーマですね。
みちるルートではニャンメルが車に轢かれて亡くなったり、みちる自身がオーバードーズによって自殺未遂を起こすというシーンがあります。
今まで感情的に恋愛を楽しんだりペットと遊んだりといった等身大の女の子のシナリオで「死」を直接的に描くことで、彼女自身が死んでしまうかもしれない可能性を強く実感させることができていたと思います。


ここら辺の細かい描写も臨場感があってよかった

みちるBADENDの完成度


やっぱりみちるのBADENDについては一言言及しておきたいです!

今までのBADENDは正直そこまで強く印象に残ってないというか、とりあえず分岐を作りましたという感じが強かったという印象は否定できませんでした。
ただ今回のみちるBADは、精神が不安定かつ内心を厚く取り繕っている彼女だからこそ、相手を救おうとして差し出した自分の言葉が拒否され、それが何らかの形で彼女の心に何らかの負担を与えてしまって本人が死を選んでしまった…というのはかなりショックでした。

これ自体は結構現実世界でもあると思っていて、昨日まで普通に話してた人が急に学校に来なくなってしまったり、元気に明るく振舞っている人が唐突に心を病んでしまったりというケースは誰しも経験があるかもしれません。
うつ病に限らず精神的に疲れやすい人の特徴として、過剰に周りの人に気を使ってしまいがちというのがあります。みちるも同様ですね。
そのためちょっとした会話や表情の変化、仕草などからネガティブな解釈をして不安が高まってしまい、そこから何か不快感や不安感を覚えたとしてもそれを取り繕ってしまいます。
そのため、周りの人から見ると行動が急変したように見えますし、客観的には行動の予測ができない怖さや「あのかかわり方がダメだったのかな…」というようなモヤモヤが生まれます。そこがシナリオの選択肢によく織り込まれていたように思いました。
これもやはりシナリオライターの方の「みちる」という人間像や人間一般に対する深い理解とそれをシナリオに落とし込む技術の高さによるものだと感嘆しています。

今までプレイした他のルートの選択肢では展開と選択肢の強い関連が見えないような印象があったんですが、今回のBADは「強いショックを受けて病院に行く彼女に対して、どんな言葉をかけるのか」という選択肢で、「自分の選択肢が彼女の死を招いてしまった」という後悔がダイレクトに感じられました。

ガチで辛かった…



攻略対象の数ももう折り返しになりました!次は多分マキナになると思います。

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