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【蒔菜ルート】「グリザイアの果実」をプレイしました

こんにちは、たくやです。

グリザイアの果実をプレイしているので全ルートやったら感想をしたためようかなと思ってメモをしていたのですが、一人一人の内容が多くなってしまいそうなので小出しにしたいと思います。
「グリザイアの果実」、マキナルートのネタバレ注意です(カタカナのマキナ表記で行きます)。


マキナルートをクリアした直後の私です。こんにちは。

マキナルート、良かったと思います。
今までの攻略を経てマキナの情報自体も増えていたのである程度素性などのプロフィールについては予想がついていたのですが、展開は思ったよりスケールが大きかったし思ったより男の子な感じでしたね。意外でした。

マキナルート全体を通してのざっくり感想

世界的な大企業、入巣財閥の一人娘として生まれた入巣蒔菜は幼い頃から「神童」と呼ばれて将来を期待されていた。
しかし、入巣家の闇を暴露しようとした父親の死を眼前で目撃すると、それを原因とする心的外傷により長期間のリハビリが必要となり、実質的な離縁状態となった。
彼女自身は映像記憶能力や類まれな美術的才能を持っているが、その一方で父の死以降は十分な教育を受けていなかったために幼い言動が目立つ…といったようなキャラクター像でした。

話の展開としては大きく前後半に分かれている印象でした。
前半ではマキナが今後どう成長していくべきか、雄二がマキナの「父親」としてどのようにかかわっていくべきなのかに焦点が当てられていました。
マキナに「父親」としてかかわっていく中で、雄二はかつての師匠であり、実質的に自分の親代わりとなってくれた日下部を思い出し、その心境に思いを馳せました。
そして、マキナと関わっていく中で自分の生きる意味を「マキナを守ること」だと見出し、日下部が雄二に対してくれたように、今度は雄二がマキナを守るために生きることを決心しました。

後半ではマキナが生きて健やかに暮らしていることが入巣家の人間に知られるところから始まって、正当な跡取りであるマキナの存在を中心として数々の事件が起き始めます。具体的にはマキナがいなくなった後の跡取りであった種違いの妹が爆破されたり、学園周辺の商店街が放火されたり、国家から暗殺命令を出されたりしてましたね。

一番笑ったシーン

ふう…。このルート自体かなりエピソード重視だったので、こうして文章に起こして説明しようとするとかなり文章量が必要になりますね…。

自分の印象としても、とりあえずかなりエピソード重視だったな…というのがあります。
マキナとの関係性や恋愛関係の進展、感情的な掘り下げというよりは、こんな事件が起こって、こんな進展があって、陰謀に巻き込まれて…というような感じでした。そういう意味では割と派手なシナリオでしたね。

加えて、前半の雄二と師匠との関係性の話や、暗殺命令を無視して逃避行を始める話では主人公である雄二の心境やエピソードが中心になっていて、他のルートと比べてもかなり異質だったと思います。かなり長いこと遭難の話をしていた天音ルートとも似てますね…。
とりあえずそこに関する是非をここで話すつもりはありませんが、今までのルートで雄二の気持ちがいまいち分からなかったのとは逆に、今度はマキナの気持ちが理解しきれなかったところはありますね…。雄二の気持ちはかなり繊細に描写されていたんですが…。

マキナの視点に切り替わるシーンやマキナが自分自身について話すシーンも多くないですし、そもそも言語能力の衰えもあって発言がふわっとしているというか、おちゃらけがちなのもあってそういう雰囲気は作りにくかったのかもしれないですね。もちろん、そのおちゃらけは天才ゆえに周囲から孤立せず構ってもらうための処世術であることは説明されていましたが…。

一方でエンディングに関しては、膝を打つような完成度の高さでした。
今まで「教育」という形で触れた「パン屋」と「狙撃」という二つの将来の夢を回収したエピローグ、どちらの選択肢でもエンディングが流れるという変則的な分岐、バットエンドである意味狂ってしまったマキナへの悲しみ、暗殺対象として苦しんできた彼女が9029として暗殺を行うという再帰的なビターエンディングと、色々と考察の余地を残しながらもしっかりと伏線を回収しており、なおかつ文章的な美しさも含んでいる、完成度の高いエンディングだったと思います。かなり好みでした。

あと印象的だったのは、マキナの母である入巣清香のビジュアルですかね…。めちゃめちゃ好みのデザインでした…。
普通にヒロインの母で女社長、能力が高いが無情で冷酷…みたいな説明をされたら湯婆婆みたいなのを想像するじゃないですか…。
そしたら急に好みの女をお出しされて流石にウケましたね。

ただ、初対面の段階では結構な強キャラ感が出てたのに終盤で出た時は監視カメラを切って自室でおかきを食べたり、思いっきり部外者の目の前で人権を軽視する発言をしていたりとかなり小物感が出てたのはさみしかったですね…。見た目が好きだからこそ。
マキナが「子供をそのまま大きくしたような怖い人」みたいな感じで評していたように記憶していますが、確かに言いえて妙かもしれません。
社長として豪胆で無情な選択を取る一面と、感情的な行動がちょくちょくあってや小物感を醸し出すような一面の両方をよく説明していると思います。時系列的に考えると父親が汚職暴露しようとする前から普通に不倫して隠し子作ってますしね…。

ビジュが出た時に今年一でかい声が出た


子供・大人の違いとエンディング考察

さて、とりあえずマキナルートで重要なテーマとなっているのは「大人」と「子供」ですね。

マキナは心的外傷を負ってから十分な教育を受けておらず、言わば「子供」のような状態にいました。もちろん病院にいる老人たちに好かれるように行動が最適化されたという側面や、自身の高い能力をカモフラージュするためという側面があったのは事実です。
しかしまあ実際に言動の数々も幼い子供のようでしたし、作中で本人もどこからが本当の自分でどこまでが作られた自分かわからないという風に発言していました。

そのような流れの中で、周りの発言や価値観から大きく影響を受け続けるマキナとどのように関わり、そしてどのように成長させていくかというのが本シナリオ前半の主題でしたね。
すなわち、「子供」であるマキナをどのような「大人」に成熟させていくのか、が一つのメインテーマだったのは言うまでもないと思います。

そんな中で雄二が出した結論は「色々な経験を積ませ、可能性を広げる」という教育方法でした。
今まで姉に教わってきた勉強方法や師匠に拾われた後の経験を活かし、体力的にも未熟で精神的にもできないことが多いマキナに「父親」としてかかわっていました。


そのようなかかわり方がどのように結実するのか、というのが後半パートの役割であったと私は考察しています。

後半パートでは、雄二とマキナの逃避行の横で「未来」「大人」といったテーマに触れられていました。
リンゴの苗を大事にするマキナの姿は、すなわちはっきりと特定の未来を志向するようになったという変化の象徴になっていました。

そしてその「未来」を取り戻すため、そして雄二に依存しない「大人」になるために一人でホテルを抜け出すマキナの行動には、はっきりと成長を描こうとする意図が感じられました。

そして護身術という形で雄二の教育の成果を披露して自立した姿をある程度まで表現した後は、失敗・敗北という形で終わってしまいます。
ここまでで大人になるための跳躍、その失敗が示され、そしてその後どうなるのかを表現したのがエンディングの分岐であったと私は考察しています。

GOODエンディング(引き金を引かない)においては、雄二はマキナの母である清香の暗殺に失敗し、右腕を犠牲にして生還します。
ここで右腕を失くすというのはつまり、同時に雄二が作り上げた思い込みの産物である「右腕に宿る悪魔」を失ったということを表します。
雄二は自身がかかわった殺人のすべてを右腕の悪魔の仕業だと思い込んでいました。それを失ったということはつまり、今後彼が殺人を行うことはないし、特定の条件下で殺人衝動に苦しむこともないということを意味します。雄二にとってはハッピーエンド感が強いですね。

一方のマキナも9029として(BADENDと比較して)かなり奔放にふるまっており、雄二の照準器を借りるなど子供らしい甘えを見せています。

一方でBADエンディング(引き金を引く)においては、雄二は清香と相打ちになる形で亡くなります。作中にもありましたが、殺そうとするなら殺される覚悟を持てということですね。
そしてマキナは自分だけに聞こえる「雄二の声」に耳を傾け続け、彼の遺体も埋葬することなく店内に放置してパン屋として働きながら狙撃手としての仕事をこなします。
ここでの「雄二の声」は演出面(ザザッと鳴って画面に線が走る演出)から考えても雄二の「右腕の悪魔の声」と類似しています。
つまり、GOODENDとは違って、悪魔が「雄二は生きている」というマキナの思い込みの産物として生まれ、そしてそれが彼女の、幻想の世界への閉じこもりを助長させる存在になったという再帰的な、「過ちは繰り返される」的なエンディングでした。

この二つのエンディングを比較していきます。
GOODでは奔放に振舞っていたマキナが、BADでは粛々と仕事をこなす狙撃手として描かれていました。また、前者では妊娠していませんが、後者では雄二の種を残して妊娠しています。
これらの二つから、GOODENDでは彼女は「子供」のままでいられて、BADENDでは「大人」にならざるを得なかったのだろうと考察しています。

マキナがリンゴの苗を取りに行ったシーンは、「成熟」の象徴的なシーンであったと言えますが、結果的にそれは失敗に終わってしまいます。
ここからも示唆されているように、「性急な成長が必ずしも良いものではない」ということが表現されていたように感じます。
少なくともマキナにとっては、ゆっくりと色々な可能性を探しながら、そして周囲に甘えて依存しながら健やかに生きていくという過程が必要だったのではないか、というようなメッセージ性が汲み取れました。これは学園でも言われていたことですね。

流石にぞっとしたシーン

余談ですが、天音ルートでマキナは学園での留年を限界まで続け、やがて美術の勉強をするために海外へ飛びます。
関係性の深いキャラである天音ルートでしっかりと描かれていたことを踏まえると、おそらく選択肢の提示順にもマキナ→天音の順で攻略することが想定されていて(女子生徒同士の会談もマキナルートの方が描写に富んでいた一方で天音ルートの方ではほとんど説明がなかった)、この美術ルートが正史というかマキナにとってのベストエンドとして描かれているように思います。

きっと学園で時間をかけてゆっくりと様々なことを学び、自分の興味や趣味を広げ、自分の才覚を生かせる未来を見出すことができた…というのが奇しくもマキナ以外の女の子を選んだ天音ルートであったということですね。
実際にマキナルートはどっちのエンディングも「暗殺対象として苦しんだマキナが、今度は他の誰かを狙う狙撃手になる」という再帰的な構造を持っているビターエンドであったと思います。

つまり「お金をあげるからマキナのパパになってください」などという、明らかに常軌を逸した要求を呑むなということですね。そりゃそうだ。


余談ですが、二人の逃避行パートはシリアスとギャグがごちゃ混ぜになっていたり、決着の付き方がマキナの独断による単独行動だったりと、シナリオとしては気になるところが多かったかなと思います…。正直戦力的にはそこまで不利な描写がなかったですし、あの感じだと金銭面だけどうにかして国内を転々とすれば3年くらいは余裕で過ごせそうな感じがしました。

設定面に関しても、例えば「マキナが子供らしいのはなぜか」という問いに対して「心的外傷による教育の遅れのため」「『神童』をカモフラージュするため」「弱い自分を演出して庇護を得ようとするため」のように複数の要因が存在しており、そのどれもが確からしさを持っているために、結局マキナって何だったんだろう…みたいな感じになっちゃいました。
もう少し内面の描写をはっきりさせたりメリハリのあるシリアスなシーンを見せてくれれば、深いところまで見えたように思います。作中ではあんまり神童っぽいところもなかったしね…。

マキナの跡取り関連の事件が起こった理由に関しても、「分家が後継者になると経済が傾くから」みたいな本家・分家周辺の話とその経済効果云々に関しては途中から触れられなくなっていましたし、3年間逃げ続けるみたいな選択肢が逃げてる最中にあがっていたものの、絶対に汚職の証拠を握っているマキナを逃がすわけがないし…といったように、周辺の状況や内面の設定などがごちゃついている所があって、上手く拾いきれてないなという印象を覚えました。


攻略対象はあと一人ですね、個別ルートの感想も次の由美子で最後になると思われます!

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