夜道を1人で歩いて帰る。
仕事がそれなりの速度で終わった時は、
夜道を1人で歩いて帰る。
バスで帰ってもよいのだが、
ほぼ一日デスクワークの日々だから。
スーパーや病院のある通りをぬけると、
住宅が疎にあるだけの田んぼ道が続いていく。
用心もかねて、
何も音がしない時間がわびしいのもあって、
鞄の中に入れたままのスマホを、音量に気をつけながら起動して音声を聞き流す。
昨日は歴史ものの合戦解説動画。
今日はAマッソのラジオ。
足元に何かが乗った。
下を見ると大きなコオロギが靴からズボンへ渡ろうとしている。
そういえば、微かに鈴虫の鳴き声がする。
今日はどうやら1人ではなかったようだ。
首根っこをつかみ、羽ばたきやすそうな角度でトスを上げる。
月に照らされたうろこ雲に向かって、
丁重にお帰りいただいた。
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