【336文字の物語】#7 せつない、あるいはかなしい
#7 マリーゴールド
タカシ君は、あいみょんが
好きだった。
ドライブではいつも
あいみょんが流れていた。
特に好きだったのは、
『マリーゴールド♬』
いつもふたりであいみょんと
一緒に歌ってた。
タカシ君はちょっと音痴で、
よく音がはずれてた。
ふたりで笑いあいながら歌ってた
あの頃。
未来なんかこわくなかった。
幸せだった。
何がタカシ君を
変えてしまったんだろう。
彼はある日突然、別人のようになってしまった。
あんなに優しかったのに、
あんなに私を大切にしてくれてたのに、
いつもイライラして、
怒ると手がつけられなくなった。
私にはわけがわからなかった。
ただ戸惑って、怯えて、
私が悪いのだと自分を責めた。
タカシ君を失うことが
怖かった。
私は弱いから、
疲れ切ってしまって、
徐々に心が壊れていって、
私が私でなくなった。
タカシ君は
私から離れていった。
それはマリーゴールドが
風に揺れながら、
咲き誇っている季節のことだった。
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