【469文字の物語】 #8せつない、あるいはかなしい
♯8 マジックアワー
カナと私は親友だった。
高校の同じクラスで、吹奏楽部も一緒。
部活終わりは、よくふたりで河原の土手に座って夕焼けを見た。
「この時間帯って『マジックアワー』って言うんだって。魔法みたいに空の色が変わってすごくきれいだよね。私、この時間が一番好き」
ってカナは話していた。
カナは活発で、明るくて、おもしろい子だった。
カナといるときが、一番楽しかった。
いろんな話をして、笑い合った。
なのに、私たちの関係は壊れてしまった。
高3の6月、きっかけは些細なことだった。
カナがほんの冗談で言ったひとことが、その時の私は許せなかった。
謝ってくれたのに私は許さなかった。
ただの冗談だってわかってたのに。
関係を修復する機会がないまま、カナは学校へ来なくなってしまった。そして学校を辞めた。
カナを追い詰めてしまったことに罪悪感でいっぱいだった。
マジックアワーになると、カナのことを思い出す。
特に空がきれいな日には。
胸が痛む。
今頃カナはどうしているだろうか。
ごめんなさい。
勝手な願いだけれど、
カナには幸せでいてほしい。
今日も夕暮れの空はとても美しい。
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