【ちいさなしあわせ】 #4ぷくぷく(463文字の物語)
#4 ぷくぷく
ぷくぷく、ぷくぷく……
森の泉では、今日も小さな泡のぷくぷくが生まれている。生まれたてのぷくぷくはちょうどいい風が来るのを待って、風に乗ってふわふわと旅に出てゆく。
ぷくぷくは、元気のない人や悲しみに沈む人、時には淋しい動物の背中にそっと着地する。大切な人を亡くて悲しみに暮れる人や、自転車にうまく乗れなくて悔し泣きする子や、親鳥とはぐれてしまったツバメの坊やに。
ぷくぷくは背中に着地して、しあわせをもたらす。そーっと背中に着地するので、その存在には気づかれることはない。でも、ぷくぷくが背中に乗ってくれると、ふっと気持ちが軽くなったり、勇気がわいて気が出たりする。稀に風のいたずらで、4つのぷくぷくが同時に同じ背中に着地することがあり、その時は特別な「し・あわ・せ」がもたらされ、一生分の幸せに恵まれると言われている。
ぷくぷくは自分の役目を終えると、そっと消える。そしてまた新しく生まれたぷくぷくが、風に乗って誰かのもとへ飛んでいく。そのようにして、ぷくぷくは世代交代しながら、しあわせをもたらし続ける。
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