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【ちいさなしあわせ】 #3オジギソウ (447文字の物語)
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#3 オジギソウ
ぼくはオジギソウ。大場さんちのプランターに植えられている。世話をしてくれるのはお母さんで、他の家族は興味も関心もない。でも最近、6年生のリク君が毎日ぼくのところへ来る。そしてすべての葉っぱを乱暴に触ってお辞儀させる。ぼくにあれこれと話しかけながら。
「おまえはいいよな。毎日お辞儀だけしてればいいんだからさ」
とか、
「お母さんはすぐに兄ちゃんとぼくを比べるんだ」
とか、
「教室で問題が起きると、みんながぼくを疑う。全部がぼくじゃないのにさ」
とか。
そんな時リク君は悲しそうだ。家でも学校でも落ち着きがなくて、怒るとすぐに手が出てしまうリク君だけど、本当はやさしくていい子なんだって、ぼくは知っている。
「あ、花が咲いてる。おまえ花が咲くんだな。かわいい花だなあ。おまえすごいよ」
ってピンクの花を咲かせたぼくを、リク君はめっちゃほめてくれた。ぼく、すごくうれしかったよ。
それ以来、リク君はもう乱暴に葉っぱを触らなくなった。
リク君だって必ず花が咲く。ぼくはそう思っているよ。
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