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☆映画「怪物」について書いてみる~怪物だーれだ~


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1 監督、脚本、音楽

監督:是枝裕和 (「万引き家族」)
脚本:坂元裕二 (「花束みたいな恋をした」)
音楽:坂本龍一 (「ラストエンペラー」)
 
 奇跡のコラボレーション」と呼ばれた3人。是枝監督は脚本家坂元裕二と初タッグだが、「今、一番リスペクトしている」と語った。この3人がタッグを組んだら、間違いなくいい作品ができるだろう。観客動員数とか、マスコミにもてはやされるとか、有名な賞を獲るとかいう意味ではない。多くの人の心にいつまでも残り、そして深く考えさせられる作品という意味で。
 私は期待を持って劇場へ見に行った。見終わって「期待以上だった」と思った。2023年6月2日に公開されて間もなく見た映画「怪物」は、あれから1年4か月以上経った今も私の心の中に存在し続け、映画が投げかけた問いを考え続けている。
 この映画は、国際的にも高い評価を受け、第76回カンヌ国際映画祭では、脚本賞を受賞した。
 音楽を担当した坂本龍一は、2023年3月にこの世を去り、これが最後の映画音楽作品となった。映画用に書き下ろされた曲も2曲ある。2023年1月には次のようにコメントしている。「怪物といわれると誰が怪物なんだと探し回ってしまうんだが、それはうまくいかない。誰が怪物かというのはとても難しい問いで、その難しい問いをこの映画は投げかけている。さて、その難解なテーマの映画にどんな音楽をつければいいのだろう。救いは子どもたちの生の気持ち。それに導かれて指がピアノの上を動いた。正解はない」
「Aqua」のやさしいピアノの調べはこの映画にこれ以上ないほどにマッチして、切なく、温かく響いた。「Aqua」を聞くたびに映画の最後のシーンを思い出す。2023年5月31日には、サウンドトラック「怪物」もリリースされている。

2 ストーリー

 大きな湖のある郊外の街。ひとり息子を愛するシングルマザー、生徒思いの教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起こる。よくある子ども同士のケンカに見えた。しかし、当人たちの主張は食い違い、次第にメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子どもたちは忽然と姿を消した……

3 怪物だーれだ?

 登場人物それぞれの視点を通した「怪物」探しの果てに訪れる結末。
 見終わった時、「怪物だーれだ?」の答えが見つかるだろうか。その答えは、見た者に、日常で忘れがちな視点を考えさせることだろう。
「怪物さがしの果てに、私たちは何を見るのかーーー」
 これはパンフレットに書かれた問いだ。まさに何を見るのか? それがこの映画からのメッセージなのだと思う。
 私自身は映画を見終わった時、私なりの答えが見つかったかのように思えた。でも、それは仮の答えだった。だからあれ以来「怪物だーれだ?」の答えを今も探し続けている。

4 主なキャスト

・安藤サクラ(麦野早苗 湊の母) ※是枝作品「万引き家族」でも主演
・永山瑛太(保利道敏)
・黒川想矢(少年 麦野湊) ・柊木陽太(少年 星川依里)
    ⇒少年役のふたりの演技が光る
・高畑充希(鈴村広奈)
・角田晃広(正田文昭)
・中村獅童(星川清高 依里の父)
・田中裕子(伏見真木子)

実力派俳優たちが素晴らしい演技を見せ、どの役も見るものを惹きつける。その中で、特に2人の少年の姿は、(大人になってしまった)私の心を捉えた。少年たちと同年代が見たら、どう感じるのだろう。

5 ロケ地

 メインロケ地は長野県諏訪地域。諏訪湖と温泉で有名な地域である。
 少年たちが通う小学校は旧諏訪市立城北小学校がロケ地。監督は、この映画のロケ地の中で特に印象に残った場所を旧城北小と答えている。職員室や保健室が撮影に使われたのは、諏訪市立城南小学校。湊と依里ふたりしか知らない廃電車があった場所は諏訪郡富士見町の旧藤沢隧道とその周辺。
 諏訪湖について是枝監督は「夜の諏訪湖は真ん中に真っ黒な大きな穴が開いているように見えて少し不気味。映画全体を貫くテーマと夜の諏訪湖が重なりました」と述べている。
 是枝作品に長野県をロケ地にするものが多い理由について監督は、初めて撮ったドキュメンタリー作品が長野県伊那小学校だったことを挙げている。






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