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ちいさなしあわせ #7 「ミッシェル」  1238文字の物語



 月曜日から始まった年始休み明けの一週間は、地獄のように長かった。
 金曜日には心も体も疲れてしまい、頭がまわらないまま仕事をしていたら、ミスをしてしまった。ミスについて上司に叱られるのは仕方ないが、その後も嫌味を言われ、心ないパワハラまがいの言葉も投げつけられた。
「こんな会社、辞めてやる!」
 心の中で叫んだ。泣きたかったけれど、泣いたら負けだと思って耐えた。
 先輩のハナさんが、廊下でそっと慰めてくれた。そして昼休みのランチに誘ってくれたので、近くのカフェで一緒にランチをした。話を聞いてもらい、気持ちが落ち着いた。
 会社を辞めるのはやめた。仕事は好きだ。それにあの上司以外、みんないい人だ。ハナさんみたいに優しくてよく気がついて、そしてバリバリ仕事もできる素敵な先輩もいる。今、辞めても、今以上に良い環境でやりたい仕事をすることはできないと思った。まだ辞めない。もし辞めるなら、もっと力をつけてからだ。
 午後の仕事は、午前とは違う気持ちで集中できた。 定時であがり、まっすぐマンションへ向かう。去年の、よりによってクリスマスイブの夜に、二年つき合った恋人と別れたばかりの私に、はなきんデートはない。けれど、部屋でミッシェルが私を待っている。早く帰リたかった。 
「ただいま、ミッシェルお待たせ〜」
 私は冷蔵庫を開ける。
「おかえり〜 待ちくたびれたよ」
 ミッシェルが少し拗ねたように笑って迎えてくれた。私は、いい具合に冷えたミッシェルを抱きしめ、
「ごめんね、待たせちゃって。長い一週間だったよー」
 お気に入りのグラスを出して、ミッシェルを静かに注ぐと、一杯目を一気に飲み干した。
「ああ、おいしい。ミッシェル、ありがとう。一週間お疲れ、私」
 二杯目を注ぐ前に、冷蔵庫からカマンベールチーズとナッツを出し、小皿に載せた。
 お酒は飲めないくちなのだけれど、このミッシェルは飲める。日本酒なのに口当たりがやわらかく、甘くて優しい。カクテルみたいだ。アルコール分9度と結構あるのだけれど、飲めてしまう。

 ミッシェルの正式名称は Beau Michelle  snow fantasty   ボー ミッシェル スノーファンタジー。冬季限定。夏季限定のスノーファンタジー イン サマー と併せて、冬季と夏季限定のお酒で、名前の由来は、酒蔵でビートルズの『ミッシェル』を聞かせながら作られたお酒だから。その作り方にもロマンを感じる。
 チーズをつまみながら、2杯目をゆっくり飲んだ。忘年会ならぬ「忘週会」いや、ひとりハナキンか。大人の女性はこういう時間も大切にしたい。私が大人の女性になれているのかどうかは、ちょっと怪しいけれど。
               
                 おわり

🍸️Beau Michelle  snow fantasty 🍸️

・ボー ミッシェル スノーファンタジー 
・冬季限定うす濁り生原酒
・原材料 米(国産)、米麹(国産)
・精米歩合60%(酒造好適米100%使用)
・要冷蔵
・ボー ミッシェル のテーマ「心が少しオドル酒」

製造者 伴野酒造株式会社
品目  日本酒
内容量 500ml

※通年販売のBeau Michelle(常温保存可)は、年間通して購入可能

ボトルのラベル、伴野酒造HPより引用

🍸️この物語はフィクションですが、登場するお酒 ボー ミッシェルは実在のお酒です🍸️

 見つけていただき、お読みいただき、ありがとうございます。
「ちいさなしあわせ」の物語の掲載は久しぶりになってしまいましたが、これからもゆっくりと不定期で続けていきたいと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
 感想、アドバイスなども、もしよろしければお寄せいただけますと幸いです。
 

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ジャスミンティータイム
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