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【1035文字の物語】 #23大好きだよ #せつない、あるいはかなしい
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#23 大好きだよ
僕にとって、部活のバスケが高校生活の全てというくらい、バスケに懸けていた。
最終学年になった僕らは地区大会を準優勝で勝ち抜いて、県大会へ進んだ。目標は、インターハイ出場だ。最高のメンバーと最高のシーズンにしたいと思っていた。
「僕たち、勝てるかな。僕が足を引っ張ってるから」
ある日、つい不安を口にした僕を、君は励ましてくれた。
「大丈夫だよ。今年のチームは最強なんだから。心配すんなって」
僕はその頃、スランプだった。せっかく君がくれた絶好のシュートチャンスにはずしてしまうし、スリーポイントは全然入らないし。そんなことが繰り返され、だいぶ弱気になっていた。
「カラオケでも行く?」
君が誘ってくれて、僕は半分気乗りしないままついて行った。誘ってくれたのは嬉しかった。でも、疲れてる君に悪い気がしたし、気を遣わせてしまっているのが申し訳ない気がした。万一、僕のスランプが感染ったりしたら大変だし。
だけど、君のお陰でいい気分転換ができた。ふたりで思い切り歌って楽しかった。何か吹っ切れた。バスケについても前向きな話ができた。
君はキャプテンとして、チームメイトとして、僕に気を遣ってくれたんだよね。ありがとう。おかげで僕はポジティブになれて、スランプを乗り越えられた。
君が4番、僕が8番を背負った僕らのチームは、県大会でも勝ち抜いていった。
「颯也、ナイス」
試合の後に君はいつも言ってくれた。
「次も勝ってインターハイ行こうぜ」
君の笑顔は眩しかった。君のためにもがんばろうと思えた。
僕らは実力以上のものを出せた。監督とキャプテンの君のお陰だ。
しかし、僕ら以上に強い学校がいて、残念ながら北信越大会に進める4校には入れなかった。最後は惜しい試合だった。ダブルスコアにされた61対30を、後半に77対62まで詰めたけれど、追いつけなかった。負けはしたけれど、いい試合だった。その時の相手校は優勝した。
インターハイ出場の夢は叶わなかったけれど、僕らに悔いはなかった。
ありがとう、チームのみんな。
ありがとう、キャプテンとして引っ張ってくれた啓太。
僕は最後の試合が終わった後、啓太に言った。
「啓太、今までありがとう。大好きだよ」
「おお、俺も大好きだよ、颯也」
そして僕たちは抱き合って健闘を讃え合った。僕は泣きそうになった。実は泣いていた。
僕の好きと君の大好きは、たぶん違う。きっと違うと思う。
でも、いい。
僕は今のままでいい。
今のままがいい。
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※「#せつない、あるいはかなしい」 をお読みいただき、ありがとうございました。
第23話をもちまして、このシリーズ連続掲載は休止し、今後は不定期で24話以降を掲載したいと思います。その節はまたお読みいただければ幸いです。
今後、新たに「ちいさなしあわせ(仮題)」シリーズを連載予定です。
そちらもどうぞよろしくお願いいたします。
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