【378文字の物語】 #18 涙のバブルバス #せつない、あるいはかなしい
#18 涙のバブルバス
バスタブにバブルバス用のバスミルクを入れた。バスタブは白いあわあわのバブルバスになった。
バブルバスに体を沈め、私は泣いた。子どもみたいに。
彼が好きだった。好きでたまらなかった。好きすぎて、いつからか重い女になってしまった。その重さで彼を苦しめてしまった。
「嫌いになったわけじゃない。でも、僕たち別れた方がいいと思う」
彼は最後まで優しかった。
ほんとは私、知っていた。あなたの心にもう私はいないことを。気づかないふりをしていた。あなたを失うのが怖かったから。
あなたとの思い出を忘れてしまえたなら。
あなたを失った悲しみをバブルと一緒に流してしまえれば。
そうすればきっと楽になれると思った。
でも、私はまだあなたが好きで、忘れたくないって心が叫んでいる。
バブルバスの泡はやさしく私の体と心を包んでくれる。だけど泡は消えていくの。
私の恋みたいに。
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