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【225文字の物語】 #3せつない、あるいはかなしい


#3  細く頼りない糸は切れた


「申し訳ありません」

いつも堂々としていてダンディーだった彼。
あんなふうに汗をかきながら謝っている。
テレビ画面の中。
フラッシュがたかれ、容赦ない質問が浴びせられる。

「妻に申し訳ない」
そう聞こえた。

遠い人になった。
細く頼りない糸は切れてしまった。

覚悟していた。
愛してはいけない人を愛してしまったのだから。

後悔はしていない。
せめて別れの言葉を聞きたかった、なんて言わない。

あなたには帰るべき場所がある。



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ジャスミンティータイム
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