見出し画像

149.価値のある勝利と、意味のある敗北

次男が所属しているバスケチーム“Tバスケクラブ”が地区新人戦を破竹の勢いで勝ち進み、ついに決勝戦まで歩みを進めていました。

過去の関連記事はこちらです↓

Tバスケクラブは何と今回、男子・女子チームとも決勝戦まで勝ち上がって来ていました。強いチームとはいえ公式戦での優勝経験がまだなかった為、指導陣も、応援に駆け付ける保護者達の士気も高く大盛り上がり。

にわか応援者だったピーナッツも珍しく、吹雪で視界の悪い道を走り、朝早くからアリーナ会場にやって来てきます。


現在、うまい子の多かった6年生も引退して世代が代わり、次男は新たに背番号6を背負ってこの場所に立っています。

男子の試合の前に、先に女子の決勝戦が執り行われました。


圧倒的な力の差を前に

女子Tバスケクラブと対戦するは、長年にわたって地区常勝を貫いているМチーム。市内中のバスケがうまい子がこぞってМに入部してくるので、地元のスター集団です。

あるチームでひとり抜きんでてうまかった女の子が、より高いレベルでやりたいからとМに移籍すると、そこではまったく歯が立たず、それまで得意になっていたその鼻っぱしを見事にへし折られ、同学年の下の方で燻っている…といった話も聞いたことがあります。
とにかく全く隙の無い、そういうチームです。

試合開始直後から、終始一方的な試合展開が続きました。

みるみるМは点を積み重ね、懸命なTの攻撃も全く点に結びつかない。

第2クオーターが終わった時点で、その点差たるや46-5。


(地区の1番と2番を決める試合なのに、両チームこんなにも実力差が開いているのかよ…)

女子Tの子達のプレーを眺めていて、苦しい気持ちになるピーナッツ。

彼女たちの苦境の中での一分一秒の攻防と、その絶望的な展開の連続をまざまざを見せつけられているうちに、ただ単純に勝つだとか、負けるだとか、そんな表層的な意味を超えた、もっと大切なことが眼前で繰り広げられているんじゃないか…次第にそんな風にも感じるようになっていきます。


強さってなんだろう…?

“試合に勝利する”こと以上に大切なことがあるんじゃないだろうか…?


私は、声としては決して届かないけれど、終始押されっぱなしで疲弊しながらも、諦めずに最後まで立ち向かい続ける女子Tの子達にそっとメッセージを送ります。


いまここで、自分達の点と点とを突き合わせて、数値でもって比較して、さあどちらが勝った、どちらが負けた、どちらが強くてどちらが弱い、そんな風にして比べて優劣を決めることは簡単なことだ。

でも、多分、きっと、これからの長い人生、いまこの瞬間の勝敗なんか以上にもっともっと大変な難題と対峙する場面はきっといくらでも出て来るだろう。その時が来たら、いまこの日の、大きな壁にぶつかって懸命にもがいているこの時間が、君たちに力を与え、必ず背中を押してくれるだろう。

自分達よりも実力の劣っている相手に優々と勝っていっときの良い気分に浸ることなんかよりも、もっと価値のある時間を君たちはいままさにここで味わっている。

諦めずに苦しみ続けている時は、確実に成長している時間。
俺は、君たちのそんな時間を最後までしっかりと見守ります…。


試合終了のブザーが鳴り響く。

79-13。


容易に覆し難い彼我の実力差。

ピーナッツの娘がバスケをやっていた2年前の頃、Мと競り負けた時もわずか1点差や2点差といった極めて惜敗程度の力の差しかなかった。

それがこの世代は、最早それどころじゃないどうしようもない差が開いてしまっている。これから一年間、この大きな壁と対峙し続けるのかと思うと、きっと複雑だろう。

…でもやっぱり、誰かと比べて勝った負けたを競うことなんかよりも、自分自身の弱さ未熟さいたらなさを見つめ、研ぎ澄ましていこう。

今日の敗北をスタートに、これからは強豪Мを鏡とした、自分との戦いが始まるんだ。


実力の差がほとんどない競り合いの中で

女子の試合が終わると、すぐに次男のT男子の面々がコートにやって来ます。

相手はSクラブ。

この時点で、前評判はTが若干の不利。

何故なら、今年のTは高身長の子が皆無の、チビ助集団だったからです。

片やSクラブには、既に大人と同じような高身長の子が少なくとも2人入っている。

身長差は歴然としている。
これは確かにちょっと不利。

高さのないTがどこまでもリバウンドを取りに行けるかが鍵です。


試合が始まると、先ほどの女子決勝とは対照的な試合の流れが展開されていきます。

最初から最後まで白熱の接戦に次ぐ大接戦。
守り主体がチームカラーのTは、相手に容易に点をやらず、Sもまた、Tの果敢のシュートをその有利な高さで阻んできます。
両者攻めあぐねが続く。

1クオーター毎に、終わった時点で2点以上の開きが生まれない緊迫状態のまま最終クオーターを迎えるも、33-33で膠着したままついにブザーが鳴ります。

延長線に突入。

この間、心臓バクバクで試合を観ていたピーナッツ。

そして迎えた延長、そこでもやはり点差が開かないなりに点取り合いの抜きつ抜かれつがまた繰り返されます。

ところで実はこの日、ピーナッツは観戦していて、薄々感じていたことがありました。それは、



あれ、なんか今日の次男…過去イチで絶好調じゃない(;^ω^)?



いつになく、好プレー、見せ場が多く、存在感を発揮していたような気がしました。
実際、当の本人も(もしかしたら今日、いつもよりも調子いいかも)と感じていたようです。



そして、残り時間あと1分弱の時点で、次男はもらったボールを気合でゴールに運びます。

2点リード!


いったー(゜o゜)!!


大歓声で湧き上がる応援席スタンド。

次男本人も入れた瞬間テンションが上がり、人差し指を立てて保護者応援席めがけて雄たけびをあげていました。いつも見せないようなそんな姿、彼は本当に嬉しかったようです。



優勝が決まった瞬間、次男等Tバスケクラブの子達は涙を流して抱き合っていました。


39ー37。


最後の最後までどちらに勝利が転ぶかわからないような試合でした。
ほんのちょっとの流れ次第で、負けていたのはこちらだったかもしれない。むしろちゃんと勝てたのが信じられないと妻も言っていました。

だって、背の低いチビばっかりのチームだったんだから。

体格差のハンディを乗り越え、そしてなにより自分達がチームを牽引する時代に掴んだ、今後の自信に繋がる、価値のある勝利。

父・ピーナッツも心が震えていました。

だけど、そういう気持ちを表情には出さないで、コート内でまだ優勝の瞬間をかみしめているこども達のことをじっと見つめています。
妻は他の保護者の皆さんに混じって大騒ぎ。

背番号5を背負っている、次男の相棒ともいえる子の母親が、感情を表にださず黙して試合を眺めて私を見て、

「ピーナッツって、こういう時どんな心境で試合見ているの?」

とつい言葉をかけてしまうぐらい、私は他の皆さんと少し違った波長でその場に佇んでいたように見られていたようでした。


女子Tの試合は悔しかったけれど、意味のある敗北だったと感じたし、次男の男子Tの試合は、実力伯仲、身長差をものともせずにしのぎを削った接戦の末の、価値のある勝利でした。


こども達には、本当に感動させてもらいました。

感動だけが、感動こそが人の胸から胸へ、深く伝わっていく大きな力を生むんだとそう実感させてもらった、ある雪の日の出来事でした。


【2025.2.24】



おまけ

一見すると、信仰と何の関わりもないようなエピソードですが…。

ピーナッツは思うのです。

信仰が、親から子、子から孫へと伝わっていくための大切な要素。

それは、“信じる”ではなく“感じる”なのだと。

わからないものを強く伝えて信じさせようとするのではなく、ただ純粋に、心の底から感動したものを胸から胸へと伝達していく、“伝わっていく”ということと、“感じていく”ということを。

今日の信仰継承の問題は組織や仕組み、伝統や教義上の強迫よりも、もっとシンプルに自分が感動したものが自然な形で子に繋がっていくことが大切だと思うし、その為にも、先ずは自分自身が深くなにかを見つめ、見つけ、“感じていく”ことがいいんじゃないかって。

ふと、そんな風に思えました。



少々まとまりませんが…。

本日はここまで。
長文お付き合いいただきありがとうございました!
それではまた(^O^)

いいなと思ったら応援しよう!