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解放
父親が死んだ。
あたしは泣かなかった。
火葬して実家に戻った時、あたしは空を見上げた。
人生で一番、青くて広い空だった。
やっと解放された…。心が空のように自由に広がってく気がした。
あたしは虐待サバイバーだ。
接客が好きなのは、色んな人に接して、あたしの中の毒を薄めたいのかもしれない。
「人間に対する嫌悪感」という毒。
葬式はしないと母と決めていたが、親戚の反対に合い、することになった。お金は出すから、葬式をしてあげないと可哀想だと、何も知らない親戚達は言った。
葬式に、あたしは行かなかった。
母が坊さんにもらってきた位牌を、あたしは父親の部屋に唯一残ってる箪笥の引き出しに隠した。
箪笥以外の、部屋にあったものは全て、何でも屋を呼んで捨ててもらった。
位牌には、外面の良かった勲章の戒名が彫ってある。
虐待野郎と彫ってあればいいのに。
こんな茶番に、坊さんに何十万も払った親族。
本当の事なんて、部外者は知らない。そして知らないやつほど口出しする。
馬鹿らしい。
「じゃあ、明日から仕事なんで帰るわ。」
あたしはひたすら駅を目指して歩いた。
さっきまで降ってた雨がやんで、雨上がりの匂いがした。
生ぬるい風が、あたしを包んだ。