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【山行】越前岳(愛鷹連峰)

沼津にそびえる愛鷹(あしたか)連峰、その最高峰越前岳。
1504mと低山ながら、景色も癖も重量級。東京から車で二時間、エンジン、やる気ともに満タン。沼津の秘宝を男4人で登りにいこう。

入口横の神社。参拝していきましょう。

延期のおかげで天気は晴天、雲一つなきその空に、我々4人は胸をなでおろし、ほの暗いスギ林へ足をすすめる。傾斜はゆるく、土は柔らかい。テンション上がりペースも上がる。絶好の登山日和だ!そう思った直後、山一つ越えた下界より、高い銃声が鳴り響く。

しばらく登ると迫撃砲がとどろき、機関銃の音も聞こえる。よもや流石のオーバーキルさに、自衛隊の訓練だと気が付いた。実はこの越前岳、富士を望むその眺望の端に、演習場があるのである。登山日和は演習日和、幸か不幸か我々は、日の出る間ずっと銃声と、移動をともにすることとなった。

先輩によると富士山は裾野を拡大解釈していけば無限らしいです。
今日からお前は、富士山だ!!!!!

スギ林を抜けてブナ林を進み、遂に黒岳へたどり着く。開けた野原にベンチが二つ、それと日本一の山。裾野の森からその頂まで、ありのままの姿でそこにいた。山頂の小屋が見えるほど富士に近い、この光景は越前岳の、比類なき持ち味といえるだろう。

少し休憩をして越前岳へ。この頃はもう銃声にもなれ、迫撃砲は花火のようで、マシンガンはリズムを奏で、乙な空気を醸し出していた。単調な景色にはいいスパイスだ。そんなこんなで、富士見峠に到着した。富士は雲にかくれてはいたが、心眼によれば絶景だった。ブナ林にはカエデが交じり、紅葉の時を心待ちにする。山道の、隅に青く咲くトウリンドウや、すらっと伸びるヤマシロギク。秋の草花に彩られ、愉快な気持ちで歩いていると、段差で枝に頭をぶつけた。痛い。低い横枝が多いこの山、前や上をよく見るのが大事だ。イバラも多く、棘にも注意だ。

山頂はやや広く、360度パノラマ。


越前岳の山頂からは、富士山に加え沼津市内、駿河湾が一挙に見える。人が多いのも納得の景色だ。地域に慕われる山である。そもそもこの愛鷹連峰、山岳信仰のこる山、海からは陸の目印となり、里山としても歴史が深い。アルプスなどの高山よりも、人の息吹がこもっている。

・・・・

呼子岳へは尾根線に沿い、起伏のある道をいく。分かれ道がやたらと多く、出会ってはまた分かれていく。別解が多いほど良問ならば、この山もまた「良い山」だろう。それに加えて足場は脆く、地面がザレ場なこともあり、注意しなければ岩が転がる。なかなか手ごわい道である。





呼子岳から先は苔だらけ。

呼子岳でほっと一息。切り立った山頂は6畳ほどだが、愛鷹連峰を一望でき、沼津のまた違った一面、ゆっくり堪能できるだろう。

嘘みたいに綺麗。これで道迷い中なのが一番嘘みたい。

少し下ると沢に出た。岩場を伏流する水が作りだすゆったりとした流れであり、苔むした岩がへりに鎮座し、なかなか幻想的な空間だ。ピンクテープとケルンを頼りに沢に沿って下りていく。沢はしだいに大きな川となり、ダムから落ちる滝となる。ダムの隣を三回通り、石橋を二回渡ったすえに、まっすぐ整えられたスギ林がみえる。

ついに戻ってきた。


幻想的な森林と、人工的なスギ林の、二つを分かつ大きな川。唯一の渡渉箇所である。浅く足場もあり難なく渡れ、無事にこの世に戻った我々は、先輩の車にすぐさま乗り込み越前岳を後にした。

・・・

しかし沼津の山はこれで終わらない。すぐさま我らは千本浜へ。今さっき登った愛鷹連峰をバックに、後ろはマツ林、前は駿河湾、それと夕日のコラボレーション。山と海を一日で楽しむとは、なんと贅沢胃もたれ不可避。満身創痍で花火もないが、最高の秋を過ごせたといえよう。

実はさわやか216分待ちにショックを受けてうなだれてます。


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