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【中学受験】はじめての地政学

日本では長年禁止されていた学問「地政学」。

グリーンランドが欲しい。ガザにリゾート地を作る。戦争を始めたのはゼレンスキー。なかなかエキセントリックな主張をする人が、現職のアメリカ大統領を担っている。
チェンバレンの融和政策により、ドイツのポーランド侵攻と第二次世界大戦勃発を招いてしまった過去の反省も忘れ、ロシアによるウクライナ侵攻を是とした停戦交渉がスタート。

賢者は歴史から学ぶのではなかったのか。そんな帝国主義的な姿勢で、望んでいるノーベル平和賞はもらえないのじゃないの。
21世紀とは思えないような、アメリカ・ロシア・中国の帝国主義的発想への回帰。

キナ臭い世の中になってきましたが、ウクライナ侵攻が開始された直後、息子から「プーチンに、もう止めときなって誰か言ってるの?」と聞かれました。
ロシアとウクライナの関係性、あるいは、各国の複雑な立ち位置を、私から息子に伝えるのは困難。時を同じくして良い本が発売されたため、息子に渡しました。


この本を息子に読んでもらった背景・理由

  • 2025年は、昭和100年、終戦80年の節目。中学受験的に節目のイベントは要チェック。

  • 昭和と戦後で考えると、各国の帝国主義思想から平和思想転換と、戦後の経済発展、近年の宗教・民族紛争から、直近の大国の帝国主義回帰。このあたりの時事問題が重要テーマになる匂いがプンプン。

  • 入試問題を作る学校の先生方は、確実に大国の帝国主義には批判的な立場。ただ、先生らしく捻くれているのか、直線的に取り上げるのではなく、関連する周辺テーマを取り上げる傾向がある。

  • 例えば、駒東が出題した「マイスモールランド」は、在日クルド人の問題提起。これ、クルド人が置かれている状況と、日本の難民対策の問題点を把握してないと分からない。

  • 受験するエリート君たちには、単に歴史事件を知っているだけでなく、国際問題への深い背景理解と批判的問題意識を持つような人材に育ってほしいと、学校の先生方が期待値している(なはず)。

この本を通じて理解してもらいたかったこと(親の期待値)

  • 各国には様々な立場がある。異なる立場を理解し相互尊重しないと、国際融和は進まない。
    そしてそれは、人間関係構築でも同じこと。

  • ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」ではないが、各国の経済発展は、国民の優秀さではなく、各国の置かれている地政学的状況により決定される。
    今後様々な国籍の人に会うだろうけど、その人個人を見るべきであり、出身国への偏見・バイアスを持って判断してはいけない。

  • 地理・歴史・公民、なんだったら、国語・理科・算数も、別々の独立した学問としてではなく、相互に関係付けられたものとして捉えてほしい。そうすれば、机に向かうことだけが勉強ではない、と分かる時がきっと来る。

  • 様々なニュースに接する際、歴史的背景への深い理解が前提にないと、誤った情報認識をしてしまう危険性がある。ニュース解説は必ずしも正しくない。有識者の意見も批判的に見ないといけない。
    自分で判断できるモノサシを育成するために、背景理解を深めていく。そのような姿勢を身に付けてほしい。

  • 君が立派な成人になるまでは、大国利益が優先されるような事件が多発すると思う。そのような事件に触れたとき、毎回立ち止まって想像してほしい。
    君たちの世代が、どんな時代を作るのか、ということを。

息子の読書後の反応(結果)

何度も読み返すほど、面白かったようです。
本人曰く、地政学自体がザックリと理解出来る点、国を擬人化したイラストで表現している点、主要な国の地政学的な立ち位置が分かる点が、気に入ったようです。

国際情勢の全体概況がザックリと頭に入ったようで、中学受験界隈の必聴番組、池上彰のニュース解説も、興味を持って視聴できるようになったので、効果的な一冊でした。
実は、「世界史と時事ニュースが同時にわかる新地政学」という本を先に買ったのですが、息子には難しくて読んでくれませんでした。成長したら読んで欲しい、乞うご期待です。

この本による中学受験への効用

東西冷戦の絶妙なパワーバランスで、表面的な平和を謳歌出来た時代。圧倒的戦力を有するアメリカが、世界の警察を担ってきた時代。そして、アメリカが世界の警察を辞めた後に起こった数々の内戦と、国家間戦争。
時代に移ろいは必然ではありますが、人類は愚かな歴史を繰り返すのか、それとも、歴史に学んだ賢者として、新しい解決策を見出すのでしょうか。

私が息子の年齢の頃に、湾岸戦争が勃発しましたが、子供心に移った戦争は、ステレス戦闘機による空襲とイラクの対空砲火の映像で、まるで「花火」みたいでした。
戦争報道もずいぶんと様変わりしました。戦争の実態がセンセーショナルに発信されたベトナム戦争。その反省を生かした湾岸戦争での情報統制。SNSを活用したイスラム国の情報発信。さらには、国家同士であるロシア・ウクライナ双方のプロパガンダ・フェイクニュースの応酬。

自分の頭で判断することの大切さが、とても求められる時代。その判断力を育成するには、背景を理解する力と、相手の立場を想像する力、その両立を身につけていくことが大切ですね。

大人の感想ですが、ランドパワーとシーパワーは併存出来ないため、陸軍・海軍両立が日本軍の敗戦理由、とは、なかなか俊逸な解説でした。
息子が大好きな戦国時代に代表されるように、日本は陸軍同士の内戦を続けた結果、陸軍が発展してきたが、本来的には島国の海洋国家として、シーパワーの国であるべきと。その帰結が敗戦。
ということは、元来ランドパワーな中国は、一路一帯なシーパワー獲得作戦の末に失敗する、と示唆しているのでしょうか。
それとも、シーパワー優勢な近年ですが、シーパワーに加えて最近は宇宙でも頑張りそうなアメリカを、ランドパワーの他の国が凌駕する時代が来るのでしょうか。興味は尽きないところです。

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