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【中学受験】10歳からの考える力が育つ20の物語
「”同調圧力”について、お子様と話し合ってください」。塾の保護者会で先生が仰られたセリフです。
なぜ、”同調圧力”が中学受験の重要テーマに取り上げられているんだ? それが、中学受験素人の私には大きな疑問でした。
その答えを探すべく辿り着いたのが、この本です。
同調圧力に関係付けられた中学受験必読書(国語過去問の出典になるような小説系)は多々あれど、シックリ来ない。
同調圧力の存在は是として、その何が問題なのかを、子供向けに明瞭に説明した本として、息子に読んでもらうことにしました。
この本を息子に読んでもらった背景・理由
群れずに孤高の存在たれ、を美徳とする進学校が多い。結果として、同調圧力を否定する傾向がある。
SNS、フェイクニュースなど、民衆扇動的になりつつある社会変容が起きる中で、同調圧力に負けず自己の視点を身に付けてほしいという、入試問題を作る学校の先生からのメッセージがある(はず)。
同調圧力を課題視する根底には、日本人の国民性としての個人責任感欠如があり、結果として日本人は民衆扇動に弱い、ということを先生方が課題と考えている(はず)。
個別性と多様性を求める時代では、同調圧力は良くない、という論拠が非常に強い。だがその一方で、その論拠自体が大衆扇動性を有しており、同調圧力に対する批判自体が同調圧力なのでは?というアイロニーを理解出来たら、子供として立派。
もう少し書くと、同調圧力のポジティブな面である、日本経済の競争の源泉であった”阿吽の呼吸”や”暗黙知”が、失われた30年に染み付いた負け犬根性で、否定されてきたという時代背景も、考えられるようになってほしい。
この本を通じて理解してもらいたかったこと(親の期待値)
童話は、良い人と悪い人の、単純明快な二元論で語られる。誰にとっても分かり易いストーリーだから。けれども、成敗される側、批判される側の人達は、本当に一方的に悪い存在と決めつけてよいのか。世の中の単純明瞭なストーリーやニュースにこそ、隠された嘘や闇が潜んでいる。
立場によって、ものの見方は異なる。考え方も異なる。君が住んでいる世界の主人公は君だけど、君以外の人達もそれぞれの世界の主人公を担っている。
物事を正しく理解して判断するためには、自分の立場での解釈はバイアスが隠れていることを理解し、相手の立場に立った他己理解を進めるべき。
我々は西側社会の価値観にどっぷりハマっているが、世界中で起こっている経済・宗教・文化紛争を、自分の価値観、西側メディアの価値観、だけで捉えてはいけない。ニュースを見る際にも、常に違う視点での捉え方がないかを考えるべき。
童話という単純明瞭なお話においても、違う視点、違う切り口で、ストーリーを紡ぐことが可能。本書のような、異なる視点の創り方をケーススタディとして、現実世界で、自分ならではの違った視点を創り出すことが可能。違う視点を創り出す能力自体が、個人としての提供価値に繋がりうる。
息子の読書後の反応(結果)
感想は、「3匹の子豚の狼は、煙突から入って馬鹿な奴だな、と思ってたけど、狼なりの考え方あったんだね。違う視点で考えるという考え方は新鮮だった」です。
「正義の反対は、悪」ではなく、「正義の反対は、正義」かもしれない。というキーメッセージが刺さったようです。同調圧力をテーマとした小説を沢山読むよりも、多様な視点の有益性を直球で伝えることを目的とした本書を先に読む方が、効果が高いなと思いました。
息子は、まだまだ抽象化が出来てはいないので、世の中の出来事を違う視点で見てみる、には至っていないようですが、これは日々の頭の訓練だろうなと思います。
この本による中学受験への効用
大人の感想ですが、20個も童話を取り上げているためか、正直、新たな視点の示唆としては薄い話もありました。
本書で同調圧力を直線的に表現した「裸の王様」は、そもそも童話の主題が同調圧力だから、本書独自の新たな視点として主張するのは、無理があるんじゃないの?など。
親が、子供が読むお話を選定してあげても良いかもしれません。