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【中学受験】北海道とアイヌ民族の歴史
ウニ・カニ・ホタテ、ラーメン、ジンギスカン。大人の胃袋を刺激する地名、北海道。
歴史教科書的には、坂上田村麻呂による蝦夷の制圧、榎本武揚による旧幕府最後の意地、明治政府によるロシア対策としての入植促進、そして、田中邦衛の名作「北の大地」に代表される人々の開拓の努力。
本土目線で語られがちな北海道ですが、そこには、どのような生活が刻まれてきたのでしょうか。
中学受験界隈では、多様性と受容性がやたらと出てきますが、その手の小説は、息子はなかなか読んでくれません。
多様性と受容性、その中でも、一般的日本人に手触り感が薄い人種や民族というテーマ。中学受験的には避けて通れません。歴史マンガが大好きな息子に、歴史マンガのフリをして、社会問題としての人種・民族差異の背景理解を植え付けたかったので渡しました。
実は「ゴールデンカムイ」も考えましたが、人が死にまくるので、違う本を探しました。
この本を息子に読んでもらった背景・理由
近年、多様性・公平性・包括性(DE&I)は、人類共通の価値観として育成されてきたが、トランプ大統領がいきなり否定。やりすぎトランプ。これに、受験問題を作られる先生方が反発しないわけがない。
というわけで、DE&Iは、2026年中学受験の、最重要テーマに上がると勝手に予想。
多面的な論点を有するDE&Iだが、イスラエル・パレスチナから類推される民族問題の理解も避けられない。ただ、一般的に、日本人にとって民族問題は、遠い国の話に捉えがち。
日本が多民族性を有していることを理解し、民族問題を身近な話として興味を持ってほしい。
この本を通じて理解してもらいたかったこと(親の期待値)
単一民族国家と認識されがちな日本にも、アイヌ民族と琉球民族がいる。もう少しいうと、ヤマト民族以外にも、熊襲や隼人もいる中で、同質化してきた歴史。
蝦夷の地は、ヤマト政権が手の及ばない独立政権として、アイヌ民族が歴史を刻んできた。そのアイヌ民族がどのように、ヤマト民族と関わってきたのか。なぜ、現代日本では、他国のような民族問題を抱えていないのかを考えてみてほしい。
よろずの神として、あらゆる神々を受け入れてきた日本、あらゆる食文化を独自の解釈でシンプル化してきた日本。この融和精神は、どのように生まれてきたのか。これは、21世紀、グローバルの多様な人種・宗教・文化を融合するための、精神的主柱になりえるのではないか。
人種・性別・年代・民族・宗教・文化の違とは何か。その違いが、なぜ争いを生み出すのか。その違いは、争いの材料ではなく、全人類を発展させる材料にはなり得ないのか。
アメリカ的文化への一方的な傾斜によるグローバル一体化という分かり易さ時代は崩壊した。君たちは、相互の多様文化を認め合う中で社会を前進させていく、という全く新しいスキームを作り上げるべき世代。高い矜持を持って、勉強に励んでほしい。
息子の読書後の反応(結果)
やはりマンガの力は偉大でした。一気に読破。
そして当初目論み通り、民族問題として捉えてくれたようで、「和人と蝦夷の人の関わりが分かった」というのが、息子の感想です。対比構造で歴史を捉える習慣が付いてきたようです。
この本による中学受験への効用
文字を持たないアイヌ言葉を、後世に残すための努力した金田一教授の存在。こんな所でも、歴史を刻む先人達の努力を感じられます。
日本の歴史に与えた影響として世界の出来事を見るように、北海道の歴史に与えた影響として日本の出来事を見る、ということは、歴史構造の把握に有益と思います。
中学受験をしていない私、高校では歴史ではなく地理を専攻した私、そんな私が全く知らなかった「シャクシャインの戦い」が塾のテキストに出てきて、中学受験のマニアック性に驚いたのですが、息子はマンガで知っていたので、先行学習としても効果を出したようです。
大人目線での感想ですが、明治維新後に、東北を飛び越えて、北海道に巨額投資した新政府。
歴史に「もし」は禁物ですが、新政府が、北海道ではなく東北に投資していたら、東北はどんな地方に育っていたのでしょうか。新政府嫌いの司馬遼太郎が、その趣旨の文章を書いていたことを思い出しました。
特定地域に特化した歴史マンガは、稀有な存在なので、貴重な一冊です。