“社長よ、勉強しろ。” 2社を上場に導いた『池本克之』が選ぶ必読7冊
(この記事は2019年に作成したものを再掲載しております。)
業界のトップを走る「プロフェッショナル」が薦める本とは?読書をもっと面白くする実名ソーシャルリーディングアプリReadHubが、独自インタビューをお届けするReadHubTIMES。ドクターシーラボ・ネットプライスの2社を上場へと導いた池本克之氏。池本氏がコンサルティングをする上で重要視する自立成長を実現するためにオススメする本をご紹介する。【Professional Library】
学びが組織の自立成長を生み出す
僕は現在、株式会社パジャ・ポスの代表取締役を務めており、組織学習経営コンサルタントとしてコンサルティングサービスを行なっています。実のことを言うと、大学在学中から漠然と、自分はサラリーマンを対象としたサービスを取り扱う会社を経営しようと考えていました。
現在のコンサルティング業に至るまで、様々な事業に携わってきたのですが、その話はこれからするとして、まずは組織学習経営がどのようなものなのかを説明しようと思います。
簡潔に表現すると、自律した個人が学びながら継続的に成長する組織を形成する、自律成長型組織による経営です。
これまでの経験を踏まえて、独自の確立したメソッドで、組織で働くメンバー個人に焦点を合わせて目指すべき将来像を相談し、学びを仕組み化していくといったものです。
組織の構成員である個人をどのようにマネジメントしていくのか。そして、その個々人がどのようにこの組織で学びを深めていくのか。そこをうまくできると自ずと組織は自立成長していきます。
これからの経営に必要なことだと考えているので、学びを組織の仕組みに組み込むことをコンサルティングの軸としています。
組織をどうしたいのかの基準を持て
組織学習経営の考え方のベースとなっているのが『最強組織の法則』(原題『The Fifth Discipline』。後に『学習する組織』という邦題で増補改訂版も出版されている)です。
学習する組織であるための5つのディシプリンが列挙されています。ただ、僕個人としてこの本の一番重要なメッセージは、「判断の基準を持て」ということだと思っています。
組織に必要なディシプリンを準備する以前に、経営の本質として「組織をどうしたいのか」を問い直す必要がある。その思いを基準として経営判断をしていき、最終的に学習する最強の組織になることができるということです。
この本の知識を自分の経験や知識と結びつけながら、現在のコンサルティングを日々改良しています。
Believe Yourself (自分を信じろ)
大学卒業してからしばらくは、サラリーマンとして会社勤めをしていました。最初に就職したのはノンバンクの金融業。銀行からお金が借りられないような人にお金を貸し出す会社ですね。
お金を貸していた会社がハワイにホテルを購入していたのですが、その会社がキャッシュでの返済ができず、そのホテルで物納で決着という運びになりました。ホテルの管理者がいないのではどうしようもないということで、僕がハワイに行くことになったのです。
そこで出会ったのが、それまでの日本的・銀行的な会社文化とはかけ離れた考え方をもつ濱崎さんです。日本でのペプシコーラ販売が、アメリカのペプシ直系だった頃の日本のトップをされてた方です。
アメリカの大学を出て、アメリカ仕込みのマーケティングを学んで実績を積んできた濱崎さんに、ビジネスのやり方からモノの見方に至るまで様々なことを学びました。
しばらく2人で営業回りをした時期を経て、僕が1人でやってみるという日に言われた「池本、Believe Yourself」という言葉に、ビジネスマンとしての基礎を学ばせていただいた感謝と嬉しさを感じたことを今でも鮮明に覚えています。
見栄を張っていた時期もあった
ハワイのホテルから戻ってみると、案の定そのノンバンクの会社はバブル崩壊の煽りを受けて倒産しそうだったので、生命保険会社へと転職しました。
その保険会社では、保険の売り方を代理店の人に指南するという部署についていました。なかなかうまくいかない人に売り方を教えて、売れるようになっていくということにやりがいを感じました。このやりがいが現在のコンサルティング業につながっているかもしれません。
そんな中、保険を販売する代理店の人の中に、どうしようもないくらい嫌々に取り組んでいる人がいました。内心、そんなに嫌なら辞めてしまえばいいのに…と考えていましたが、その時に読んだ1冊の本をもとにその人を変えることができました。
それが『仕事は楽しいかね?』です。物語仕立ての短編で読みやすい作品で、日々トライすることや変化することなど、特別なメッセージこそないものの仕事に対しての考え方を振り返ることの出来る1冊です。
仕事が楽しくなさそうな人をどのように変えるか。組織を引っ張る人でそのメンバーのマネジメントに困っている人は読んでみると何か参考になると思います。
大学在学中に考えていた、起業をしたいという思いからその生命保険会社は3年ほどで辞め、いくつか個人事業を起こしました。サラリーマン向けのコーチングビジネスなどをやっていたのですが、あっという間に新規の案件がなくなっていき、なかなか食っていけなくなりました。
ただ、自分でやっていることを知人に胸を張って話していて後戻りできない状況でした。後に、代表取締役として株式上場まで導くドクターシーラボとの出会いはまさに奇跡でした。
たまたま知人の紹介でドクターシーラボのオーナーの城野さんからお声をかけていただいたのですが、その当時の僕の会社はクライアントが一社もなく危機的状況でした。それでも知人に対するのと同じように、事業は絶好調であると見栄を張っていると、ドクターシーラボもみて欲しいとのことでした。
今週会えるかと尋ねられたものの、予定がないのにもかかわらず「今週は予定がいっぱいなので来週でいいですか」と言っていたのは思い返すと面白いですね(笑)。
心地の良い表現の本を読み込む
特にドクターシーラボに真剣に向き合うと腹をくくったきっかけとなった、『小さいことにくよくよするな』は自分の人生の歩みそのものに迷いを抱いてしまっている人は読んでみるといいと思います。
僕自身生命保険会社を辞めてから、事業をいくつか起こすもののうまくいかなかったので、これでいいのか何度も自問自答しました。小さいことにくよくよしない。そして、すべての迷いは小さいことだ。これらの考え方は「やりきる」ことの重要性を再認識させてくれる本です。
振り返ると、この仕事が全然なかった時期は人生のなかで一番勉強していた時期だと思います。読書を中心に学びを深めていました。
ペースとしては1日1冊。どんどん読むペースが早くなっていましたね。その時に気づいたのが、1つのトピックに関する書籍はたくさんあってもエッセンスは5~10個に過ぎないことです。
読書はインプットに過ぎません。だから、アウトプットに結びつかないとする意味が無い。そのため、僕は一旦たくさんの量を読んで、自分にとって心地の良い表現で論じてくれている本を見つけ出し、それを繰り返し読むようにしています。
事業の成長で組織の問題が生まれる
ハワイの会社の濱崎さんから学んだことや、たくさんの読書をしたことで得た知識があったので、ドクターシーラボのコンサルティングはかなり順調に進んでいきました。
僕がドクターシーラボの社長になった時は3億円ぐらいの企業価値で、従業員数が15名くらいでしたが、企業価値120億円で従業員300名というように成長していきました。そうすると組織の問題が生まれてきます。
商品開発やマーケティングのような外向きの業務に関しては、誰もが進んで取り組んでくれます。一方で、決算や人事、在庫管理のような仕事はなかなかうまく回りません。
オーナー企業だったので、社長に就任していた僕の指示とオーナーによる指示のどっちに従って行動すればいいのか、従業員も困惑してしまうような状況が続いていました。
それでも僕は食っていけていない時に、チャンスを与えてくれた企業(前編参照)に恩返しの意味も込めて内部管理の改善などにも必死に取り組みました。それでようやく上場が決まろうという時に社長の座から降りたわけですが、おかげさまで何億円かいただくことができました。
そこから少しの間は何もせずにブラブラと過ごすわけですが、人間がダメになってくる感覚があったのでちゃんと働こうとまた別の会社に入る運びとなります。
どんなことも人の問題に結びつく
その頃はちょうどITバブルの幕開けの時期でした。ネットプライスという会社を紹介され、執行役員として入社。その1年後に社長になりました。
そこでは、ドクターシーラボであまりうまくいかなかった組織の問題が起きないようにうまくやっていき、バブルの波に乗って勢いそのままに株式上場までに至りました。
結局3年くらい経った頃に、大赤字を叩いてしまい社長を引責辞任することになります。社員の半分以上をリストラするといったことを経験し、商品のやり取りなら感情がないから人を扱うよりよっぽど楽だと考えるようになっていました。
ネットプライスを辞めてからは、人の問題に関わらないように商品系のコンサルティングを専門に行なうようになりました。すると、ノウハウはあるのでうまくいくわけです(笑)。
でも、事業がうまくいって依頼人の会社にとっての「先生」のようになった僕は、組織の問題についても相談されるようになり、人の問題に向き合わなくてはならなくなります。それ以来、むしろそこを経験を絡めながら相談に乗ることができるコンサルタントとして活動しています。
選択と集中ができるかが重要
やはり、素晴らしいサービスを作り続けるためには、いい組織である必要があります。そして、それを実現するためには社長がどのように組織の中で振る舞うかということが非常に重要です。
『ビジョナリーカンパニー』はかなり有名な本ながら、読んでいないのなら読んでおくべき1冊だと思うので、紹介しておきます。成功した企業と失敗した企業が学術的な面から分析されているので、企業の成功の科学のようなところを知ることができると思います。
そして、この本でも書かれているのが「選択と集中」です。有限の時間の中で社長がとるべき行動は、大事なことに集中して全力をかけるということです。長期的に見て、良い会社であるために必要なことを学べる1冊です。
これに関連して『7つの習慣』も名著として一読の価値ありです。この本の中にある7つの習慣のうちの第二の習慣、「優先順位をつける」は社長、社長以外に関わらず社会人すべてに必要な習慣です。
指摘されている、目先のことは緊急性が高く表面的なことなのだがどうしても気になってしまう。それだけに終始していると大事なところに時間を使えなくなってしまって、結局いい結果にならないのは、この本が一番整理されていると思います。
最近読んだ本の中でも、『帝国ホテルの料理の流儀』という本は、また違った切り口から仕事を捉え直すのによかったです。
選択と集中にも親和性があるのですが、属人化は料理人の世界をはじめ職人の世界で多く起きています。でも、それを帝国ホテルの料理長が変革しつつある。会社でも、社長がやらなくてもいいことをあたかも社長しかできないかのように、取り組んでいる人は少なくないです。
社長という立場についている人だけでなく、様々な組織のリーダーを務める人は、いかに選択と集中を使いこなすことができるかが、結果に大きく結びついてくるのだと僕は多くの本から学び取っています。
読書はタイムマシン
書籍は、他人の経験をその経験した人が時間をかけて活字にしてくれたものです。すなわち、その人が何十年もかけて身につけたものを2,3時間でざっくりと知ることができるのです。なので、僕は読書はタイムマシンみたいなものだと思っています。
自分の中に情報をインプットし、それが自分の持っている情報とミックスされた時にどのようなことを感じるのか、どのように行動に移すことができるのかが重要です。僕の場合は、自分の中の話の引き出しが増え、セミナーや講演などでの話に幅が出てきた時にそれを実感します。
組織づくりにおいても、読書は活用することができます。方法は、組織のメンバーに同じ本を読んでもらって、そこで感じたことを少しだけでも共有しあってもらうだけです。すると、共通言語のようなものが生まれてコミュニケーションに幅が生まれます。
読書は個人の学びのツールでありながら、人と人との結びつきでもあると僕は考えています。
社長よ、勉強しろ
『「すぐやるチーム」をつくるたった1つの考え方』を始め、僕は組織を作る時に重要な考え方をまとめた本を多く書いています。その中で一貫して伝えたいメッセージが1つあります。
それは「社長よ、勉強しろ。」です。
会社の理想が何なのか。それを明確にするためには勉強をするしかありません。社長が努力をせずに無能であれば、そこには無能な人材が集まってきて、大したことのない売り上げだけが残ることになりかねないです。
間違っているかどうかではなく、とにかく一生懸命やってみる。努力しなさいと言いたいですね(笑)。
※インタビューをもとに作成
インタビュー:青木郷師、文章:高井涼史