美食の教養 世界一の美食家が知っていること ー浜田岳文
①栄養摂取 生存としての行為
②うまい 本能としての欲求
③美味しい 文化としての知的好奇心
美食は、文化をまるごと食べること。
食を通じて料理人というクリエイターの作品を鑑賞し享受することを目的にしている。
ガストロノミー Gastronomy
食事と文化の関係を考察する。
食や食文化に関する総合的学問体系。
食べ手としての思考や教養が足りなかったり、感じ取る努力を放棄しておいて好みだというのは、日々研鑽を積む料理人に失礼。
好き嫌いと良い悪いを混同しない
自分が思い入れのある老舗の定食屋や居酒屋を挙げても、思い入れに優劣はつけられないので対話にならない。
単なる感想であって、普遍性がない。
それはその人がそのお店と歩んできた歴史を踏まえての良さであって、追体験できない。
好き嫌いは感想を投げ合っているだけ、良い悪いは価値評価。
好み云々の話をするとしたら、ぞれは技術や思考を突き詰めた後。つまり、お店としてはどちらも最高峰だが方向性が違うという状況。
どこまで達していないお店に関しては、良い悪いは厳然としてある。改善点がある。
5万円のお店
場所代や店内の設え、人件費。高級食材。料理人の技術やアイデア。
高額になればなるほど限界的な美味しさは低減していくのが一般的。
100%を目指してそれに近づけば近づくほど、1%の差分にかかる対価が大きくなり、価格と評価は比例しない。
この量的には小さいけれど、質的には大きい差分を理解し、評価するのが美食の考え方。
いく価値がある店とは、料理人が突き詰めて考えている店。
いちごショートケーキとしての最上級の完成形をイメージし、そこから逆算して必要な食材を揃えるのが本来あるべき姿。
まずくなりようがない食材を大して手もかけずに出すだけのお店は、自らの存在意義を否定している。
同じ食材を家に取り寄せて食べればいい。
魚介に関しては昔より美味しくなるということはなさそう。
食材のポテンシャルに依存した料理は、同様に質が下がっていく危険性がある。
ただうまいだけの料理を賞賛することには未来がない。
<第1章 人生を豊かにする美食の思考法>
食は、口に入れるという時点で大きな制約がある。
最低限安全で、うまいを満たさないとレストランとして成立しない。
うまいを踏まえつつ、いかに美味しいを追求するか、ということになり、もっとも保守的なジャンルとなる。
音楽は一瞬で全世界に届いてしまうから、昔より消費されるサイクルが早くなっている。アーティストはその早くなるサイクルについて行かざるを得ず、クリエイティブに時間をかけることが難しくなっている。
逆に料理は一度に大人数に振る舞えないからこそ、長持ちするし、飽きられない。料理人は人生をかけてクリエイティブを作り上げていくことができる。
職人タイプ: 日本や中国に多い。ある程度、型のあるひとつの料理を、いかに上手に作るか。切る技術や火入れの技術をいかに突き詰めるか。
芸術家タイプ: 西洋に多い。料理人の仕事はオリジナリティを出す。キッチンを超えた社会的存在として料理界に影響を与えたり、社会をよりよくするためにメッセージを発信して貢献することである。
バイアスが自分の中にあることを常に意識し、できるだけそれを排除して評価しようと努力する。
自分の好みはあっていい。
ただ、国や文化によって好みが異なることを知らずに、自分の好みで批判するのは違う。
まずは感覚の違いがあることを知ることが大事。
どう美食を評価するか
①どれだけ考え抜かれているか
洋食のように食べ手のノスタルジーに依存せず、完成度の高さを志す。
考え抜いている人は、皿の上のすべての要素について、なぜそうしているのか、ロジカルに答えられる。
②どこまで料理に落とし込めているか
自分の口に合わなくても高く評価する価値がある。
寿司屋の握り、何を見るべきか
・魚介の扱い方、切りつけはどうか。並べ方はどうか
・握るときに魚介が適切な温度になっているか
・酢飯の米はどういう根拠で選んでいるのか。食感、風味などがその店に方向性に合っているか
・酢は何を使っているのか。白酢、赤酢、ブレンド、どういう考えを持っているか
・選んだ酢と米がネタに合っているか。ネタだけいいものを買っても意味がない
・酢飯の温度はどうか。酢飯を補充するお弟子さんとの息は合っているか
・酢飯と鮨種が一体になって、ひとつの料理になっているか。刺身ご飯になっていないか
・口の中でシャリとネタがほどけるスピードは同じか。どちらかが残ることはないか
<第2章 美味しさに出会う 美食入門>
情報収集
国内
口コミサイト
食べログ、Retty
レストランガイド
ミシュラン、ゴ・エ・ミヨ、TERIYAKI、デスティネーションレストラン
Googleマップ
SNS
インスタグラム、フェイスブック、YouTube、X、TikTok
口コミ
食べ歩き仲間、料理関係者
海外
口コミサイト
OAD、トリップアドバイザー、Yelp、現地口コミサイト
レストランガイド
ミシュラン、現地グルメガイド、La Liste、世界のベストレストラン50、The Best Chef Awards
Googleマップ
SNS
インスタグラム、フェイスブック、YouTube、TikTok
口コミ
食べ歩き仲間、料理関係者
ぐるなび、ホットペッパーグルメは広告ビジネス。宴会需要やクーポン割引が付加価値。
ガンベロ・ロッソ(Gambero Rosso)、レスプレッソ(L’Epsresso)
イタリアで代表的なレストランガイド。
ギア・レプソル(Guia Repsol)
スペインでは一択。
食べログ
アルゴリズムの特徴は、サクラなどの不正の影響を削ぐことを最重要視しているところ。
いろんなお店で実際に食べていて、影響力のあるレビュアーは、配点のウェイトが高い。そういう人が点数をつけると、お店の総合点が目に見えて動く。
影響力のあるレビュアーが力を持ちすぎる。
新しくオープンした注目店舗の検索に使える。
ミシュランガイド
地方自治体がスポンサーとして資金を拠出して調査費用を賄っている。
2020年度版より、一般から予約を受け付けない完全予約制のお店が非掲載になった。すきやばし次郎、鮨さいとうなどは非掲載。
東京のように完全紹介制のお店は多い都市においては、最高峰のお店が何軒も掲載されない。
特別なコネクションがなくても行けるお店が載っている「使えるガイド」舵を切っている。
必ずしもコストパフォーマンスが重視されていない。
料理人が日本から出ないのなら、あまり関係ない。ただ海外でイベントしたり、お店を出したりとなると、ミシュランの星を取っているということが他の称号より強い。
世界のベストレストラン50
世界各国の1000人以上の匿名評議員が自分がベストだと思う世界のレストランに投票する。
集計結果が第1位から50位まで発表される。第51位から100位のリストも事前に発表される。
評議員は、27の地域に分かれ、40人ずつ任命されている。日本はひとつの国でひとつの地域だが、アジアだと中国本土と韓国がひとつの地域、東南アジアは北と南の2つの地域に分けられている。
評議員34%がシェフとレストラン関係者、33%がフードライター、残り33%が世界を食べ歩くグルメ。ジェンダーバランスは50:50、評議員の1/4が毎年入れ替わる。
OADは、昔アジアに日本を含めてひとつのランキングを発表していたが、トップ50のうち8割が日本のお店という結果になってしまった。
その後、アジアと日本は別のランキングになった。
Googleマップ
特定の地域内でカジュアル店(カフェやスイーツ)を探すのに向いている。
カジュアル店こそ口コミは充実している。
特定の地域内であれば、総合スコアは気にせず、片っ端から口コミを見ていくことで、思いがけずよさそうなお店と出会えることが多い。
そして念のため食べログでもチェックしてみる。
インスタグラム
自分の好みに合いそうな人のアカウントをフォローして、その人がアップしているお店をチェックする。
自分が良いと思ったお店で検索して、そのお店がタグ付けされている投稿を確認する。数ある投稿の中で、自分と感性が合いそうなものや、コメントに共感できるものを見つけ、そのアカウントをフォローすればよい。
食材や料理名で検索する。
地域と料理ジャンルで切る。地方を食べ歩くときに、「○○市 かき氷」などで検索。
遠方からお客さんが集まるようなお店は、地元の人は行ったことない、もしくは知らないことすら多い。
本当に役に立つのは、他の地方も含め幅広く食べ歩いていて、地元のお店を客観視できている人のアドバイスのみ。
地元で頑張っているお店は大体その同じ地方の人が足を引っ張っていることがある。昔は行っていたが、今は予約が取れなくなってしまったなど。
気になるお店を見つけたら、まずは食べログで調べるのが近道。
Googleマップで口コミを見て、インスタグラムもチェックする。
ここまでやれば、どういうお店か大体わかる。
食べログに載っていないお店や海外の場合は、お店のウェブサイト、インスタグラム、Googleマップが中心になる。
インスタグラムのアカウントがない田舎のお店でもGoogleマップは間違いなくある。
写真でそのお店の特徴がわかる。
西洋料理のファインダイニングだと、料理が皿の中心に盛られているか、それとも端のほうに盛られているか。主となる食材が一目瞭然か、それともわかりにくいか。前者は伝統的な料理、後者は新しいスタイル。
シェフの年代。
海外の場合、ジェントルメンズクラブなどレストランではない業態を除けば、完全紹介制・会員制のレストランというのはほとんどない。
世界のベストレストラン50にランクインするお店で、どれだけ頑張っても予約が取れない店というのは少ない。
スペインのディベルソ(DiverXO)、アサドール・エチェバリ(Asador Etxebarri)、コペンハーゲンのアルケミスト(Alchemist)、ノーマ(Noma)。フランスで唯一予約が困難なのが、パリのプレニチュード(Plenitude)。
日本を除く世界中で合計50軒もない。
Foodies Prime
アプリ上で食事会メンバーを募集できる。
アラカルト頼むときは、そのときにシェフが食べてほしいと思っているであろうものを選ぶこと。
スペインやイタリアでは、地方にわざわざ行く価値のあるレストランが多いため、車が必須となる。
同じ時期に同じ食材を食べる。
季節や食材という変数をコントロールしながら、シェフの技術やクリエイティビティをより純粋に比較することができる。
ノンアルコールのペアリング
①料理と共鳴するペアリング
料理に使われている食材や調味料と同じものをドリンクの使うパターン。
②リセットするペアリング
マリージュの逆で、料理に印象をリセットする。お茶系、コンブチャなど酸味が強いもの。
BGM
わからないなら、プロに任せるか、無難なジャズかクラシックでもかけるほうが食体験を損なわない。
ライティング
光源が多すぎて複数の方向から光が当たると、その角度から工夫して撮ったとしても、必ず影が入り込んでしまう。
インスタグラムでは斜め手前だけでなく、真上からも撮影することが多いので、お客さんが座っている位置に対して、光源が頭上真上よりも少し前にあるというのがよい。
それが難しいなら、手元を照らすランプで他の光源の光を飛ばしてしまうのもあり。
化学調味料
味の素の原料はMSG。
うま味調味料っぽいと感じるのは、大量に使用されることで、風味のバランスが変わるから。
昆布にはMSG以外の成分も含まれているが、代用するために大量に使うと、MSGだけが突出して、他に成分が感じられないので違和感が生じる。
なぜ使うのか、使わないのかをお店のアイデンティティやストーリー性に基づいて説明でき、使う場合でもそれがバランスを崩すことがないよう巧みに使われているのが理想。
SNS
スマホに、食材、それがどう調理されているかをメモしておく。
ストーリーや生産者の話もメモする。
おいしかった、絶品という表現は使わず、なぜおいしいと思ったか他の言葉で説明する。
レストランやシェフ、料理ではなく、書いている人が主役になってしまっていないか。
<第3章 食から国の素顔が見えてくる 世界の料理総まとめ>
なぜフランス料理が世界中に広まったか
フランスが昔から中央集権国家で、王様や貴族に富が集中していたという歴史的背景が大きい。
富の集積が起きると、持つ人と持たない人が出てくる。持つ人は、人を雇って料理を作らせたり、食材にこだわったり贅沢をするようになった。
富が偏在する社会のほうが、食や音楽や絵画、舞台などの文化が進展した。
宮廷文化の中で、貴族たちが権力を誇示したり、外交を有利に進めたりするために、お抱え料理人が味を競い合った。アントナン・カレームなど。
その後宮廷の文化は、フランス革命などを経て、街場や庶民に降りていった。王族や貴族に雇われた人たちが職を失い、食べていくためにレストランを始めるケースも多かった。
オーギュスト・エスコフィエがフランス料理を体系化し、膨大なレシピを編纂した料理本を世に送り出した。
1970年代にはヌーベル・キュイジーヌが脚光を浴び、1980年代以降はキュイジーヌ・モデルヌが台頭する。
イタリア料理
イタリアは地域性がとても豊か。
本当のイタリアの料理を知るには、全州をくまなく回る必要がある。
イタリア人は家と同じレシピのものを、地元のトラットリアで食べる。
他の地域の要素を戸田に入れようものなら、怒られてしまう。食に関してはかなりコンサバティブ。
伝統的な郷土料理が守られている。
クリーナ・ポーヴェラ(Cucina povera )、質素な食材を使った料理がイタリア料理の根本。残ったものや安い食材やどこにでもある食材を美味しく食べる。
伝統的ピエモンテ料理はやわらかいものが多い。激しい肉体料理が求められ、歯がすり減って硬いものが食べられなくなった。
伝統を受け継ぐトラットリアとイタリアならではの料理を供する先進的なリストランテ。
スペイン料理
分子ガストロノミー
エスプーマ、低温調理など。
パコジェット。
コシナ・デ・アウトル: 分子ガストロノミーを踏まえた創造性の高い現代料理。
イベリコ豚、ガリシア牛。
バスク産ギサンテ・ラグリマ(グリーンピース)。涙豆。
ナバーラ産アスパラガス、ユキワリ。
カタルーニャ州の山奥の秋のキノコ。
多種多様な魚介を集められる。北のカンタブリア海のアンチョビやヒラメ、メルルーサ。西の大西洋だとタコやペルセベス(カメノテ)。東は地中海のガンバ・ロハ(バラモス産赤海老)。南のアンダルシア州沿岸はコキーナという小さな貝。キスキージャやガンバ・ブランカといった小さいエビ。
コシナ・デ・プロドゥクト(cocina de producto): 食材料理。食材フォーカスでそれをシンプルに料理する。
イギリス料理
ファット・ダック(Fat Duck)
The Araki
2010年代にイギリスのレストランシーンは驚くべき変貌を遂げた。最大の理由は外国出身者が増えたこと。
今やロンドンには、世界のベストレストラン50にランクインする店がある。多くは現代的イギリス料理。
洗練された現代的インド料理や、本場さながらの郷土料理の店が増えたりしている。
もともと食材は良かったのに調理が悪くてそれに気づけなかったのか、それとも生産技術や流通の向上でおいしくなったのかは不明。
イギリスは食材に恵まれている。仔羊や鴨、鳩、雷鳥。アカザエビやドーバーソール(舌平目)。
地方にレストランでは産地の近くで楽しめる。
ランクルーム(L’Enclume)、イェム(Hjem )。
北欧料理
ニュー・ノルディック宣言が発表されたことをきっかけに、世界から注目されるガストロノミーの最先端に躍り出た。
ニュー・ノルディック料理の核となるのは、ファーメンテーション(発酵)とフォレイジング(採取)。発酵食品や野にあるハーブやキノコなどの天然食材を積極的に用いた料理。
コペンハーゲンが世界有数の美食都市となった。
ノーマ、ゲラニウム(Geranium)、アルケミスト(Alchemist)、カドー(Kadeau)、ヨードナー(Restaurant Jordnar )。
シナモンバンなどのヴィエノワズリーは世界屈指。
昼ベーカリー巡り、夜ファインダイニングというのがおすすめ。
スモーブローはマヨネーズが重い。
アメリカで美食は厳しい。
自分が食べたいものを作れ、という文化。
アラカルトを好むお客さんが多い。自分が何を食べるか人に決められたくない。
クリエイターとしての料理人にリスペクトを持ち、それを味わいたいと思っている人が極めて少ない。
食べ手の意識の問題。
名店で修行したのに、うまいだけの料理をアラカルトでやるカジュアルなレストランを営んでいる。
大都市でこの傾向が強いのはロサンゼルス。
アメリカ人で国外に行く機会がない人にとっては、アメリカのレストランシーンは世界一だと言えるかもしれない。海外から訪れる立場で言うと、アメリカでイタリア料理を食べるくらいなら、イタリアに行けばいいとなる。
General Tso’s ChickenやBeef with Broccoliなど、アメリカナイズされたB級中華を知っているだろう。
テキサスバーベキューは素晴らしい。フランクリン・バーベキュー(Franklin Barbecue)
ラテンアメリカ
ニュー・ノルディック的な哲学が最も花開いたのがラテンアメリカ。
ガストロノミーがいち早く開花したのは、メキシコとペルー。スペインを中心とした海外で修行したシェフが帰国し、そこで培ったヨーロッパの料理を提供するところから始まった。
プジョル(Pujol)
今のペルー料理の原型はインカ時代(13-16世紀)に生まれた。ペルー原産のいも(塊芋類)は5000種類以上。唐辛子は300種類以上。
リマのアストリッド・イ・ガストン(Astrid y Gaston)、セントラル(CENTRAL)。
コロンビアのレオ(Leo)。
エル・チャト(El Chato)
ブラジルのドンDOM
グアテマラのスブリメ(Sublime)、ディアカ(Diaca )、フロル・デ・リス(Flor De Lis )。
中国料理
大きく8つの地域に分けられる。
高級料理というと基本は広東料理。中国四大料理のひとつ。
19世紀末から20世紀初頭にかけて、広東料理が海外でも知られるようになった。
当時広東省を治めていた支配者が食通で、有能な中国料理の料理人だけでなく、フランスからシェフを招くなどして、美食を追求していた。
20世紀にアメリカを中心とした欧米に移民した人は広東省出身が多かったそうで、それらの国々では中国料理=広東料理となった。
中国の美食都市は上海。
一零二小館(102 House): 2021年から広東省の仏山から移転。
遇外灘(Meet the Bund): 初めて福建料理をファインダイニングに昇華させた。
南興園(Nan Xing Yuan): 中国有数の四川料理店。
中国のレストランについて知るには、大衆点評というアプリをダウンロードして検索するか、Douyin(中国版TikTok)やWeiboを見る必要がある。
英語対応が可能な店が増えれば、より多くの外国人フーディーが中国本土に注目し、訪れるようになる。
韓国料理
ミングルス(Mingles): フランス料理の技術をベースに、部分的に韓国の食材を取り入れるところから始まったが、徐々に韓国料理の色彩を強めていった。
チョン・クワンという尼僧の精進料理。五葷(ネギ、ニンニク、ニラ、タマネギ、ラッキョウ)を使わない。キムチはアミ海老の塩辛を使わない。砂糖の代わりに果物を発酵させたジュースを使う。
アトミックス(Atomix): 2023年度の世界のベストレストラン50でアメリカ最上位。
韓国の料理界が飛躍するための課題は、生産者や卸。魚介の扱いが悪い。韓牛には和牛にない個性があるが、個人としては名前が挙がるカリスマ生産者がいない。
タイ料理
エクスパットが増え成長してきた。
ガガン(Gaggan): インド人ガガン・アナンドシェフ。現代的インド料理。プログレッシブ・インディアン。
ズーリング(Suhring): ドイツ料理をベースとしたガストロノミー。従来ドイツ料理とは庶民的な郷土料理を指すものであって、高級ドイツ料理は存在しなかった。ドイツ人は高級なものが食べたいときは、外国料理の店に行く。
テュルク・ファティ・トゥタク(Turk Fatih Tutak): トルコ人シェフのトゥタクのイノベーティブトルコ料理。
ナーム(Nahm): オーストラリア人シェフがタイの宮廷料理レシピを学んで始めた。
宮廷料理からインスピレーションを得たり、各地域の郷土料理をガストロノミーに昇華させたり。
ソーン(Sorn): ミシュラン二つ星。タイ南部の料理をガストロノミーとして完成させただけでなく、タイ料理で初めて、主となる素材の持ち味を生かす料理を実践した。
ヌサラ(Nusara ): タイ人シェフ。アジアのベストレストラン50で第1位。伝統的タイ料理の風味を現代的な調理と洗練されたプレゼンテーションで表現している。
ポトン(Potong): 女性シェフ。
韓国もそうだが、味付けが重要視される文化ほど、主となる食材に重きが置かれない。
ドバイ
2010年代に急速に発展し、世界中から観光客やエクスパットが集まる国際都市になった。
2014年にドバイフードフェスティバルが始まった。
砂漠のため地元食材はなく、世界中から食材を輸入して調理する。
シェフのパーソナルストーリーや哲学を軸にした独創的な料理が発展した。
オシアノ(Ossiano): アトランティス・ザ・パームというリゾート内にある。巨大な水族館に面している。
中東各国の料理を味わえる。政情不安や治安の問題で行くことが難しい国も多い。
ベイト・マリアム(Bait Maryam): パレスチナ出身の女性シェフ。
本場より美味しい料理に出会える可能性すらある。
オーファリ・ブラザーズ(Orfali Bros): シリアからの移民であるオーファリ兄弟がオープンした。シリアなど中東の伝統的な要素を取り入れながら、現代的な料理を提供している。
トレシンド・スタジオ(Tresind Studio): インドの各地域の料理や食文化を深く掘り下げている。
アヴァダラ(Avatara): ベジタリアン料理
ドバイの人口の約9割が外国人。
ベトナム
アンアン・サイゴン(Anan Saigon): ベトナムのストリートフードをファインダイニングに昇華している。
アクナ(Akuna ): オーストラリア人シェフ、サム・アイスベットによる。
インド
伝統的な料理が根強く支持されていて、なかなかそこから逸脱した料理は受け入れられにくい。
ナール(NAAR): ヒマラヤ麓の標高1500mの自然の中にあるデスティネーションレストラン。
台湾
JLスタジオ(JL Studio)
ムメ(Mume ) 台北
ロジー(logy ) 台北
盈科 EIKA
シナセラ 24(Sinasera 24) 台東
アカメ(AKAME) 屏東
マレーシア
デワカン(Dewakan ): マレーシア人ですら知らない固有の食材を発掘してきて独創的な料理に仕上げる。
フィリピン
トーヨー・イータリー(Toyo Eatery)
メティス(Metiz )
ハパグ(Hapag )
日本
アンソニー・ボーデイン「If I had to eat only in one city for rest of my life, Tokyo would be it.」
パルと比べると、レストランの数は3-4倍になる。
スペインやイタリアほどではないものの、それ以外の美食先進国よりは、地域的多様性がある。
魚介が美味しくなる条件の一つとして、川の存在があげられる。
山のミネラルが海に流れ込み、エサとなることで魚介類が美味しくなる。
川のない乾燥した地域では、魚介類はおいしくならない。
築地のように生で多くの魚種が揃う場所は多くない。
日本では多種多様なジビエを楽しめる。
中でも、熊肉は日本以外では基本食べられない世界に誇れる食材。禁漁もしくはプロフェッショナルな処理がされていない。
日本にはヒエラルキーがあり、上流階級が文化として美味しいものを楽しむ習慣があった。食文化の発展を後押しした。
茶道の影響も大きい。茶事で出された懐石料理を通じて、料理をコース仕立てで順番に出すというスタイルが生まれた。できたての温度感を大切にすることにつながった。
移民が少ないため、外国料理のバリエーションが限られる。
メキシコ料理は、恵比寿のTacos Barなどしかない。
本場の味が楽しめる店は少ない。外国料理は現地に行くより日本で食べたほうがおいしいと感じている人は多い。
「どれがおいしいですか」ではなく、「どの料理が人気ありますか」と聞く。
<第4章 美食家なら知っておきたいグルメ新常識>
ヌーベル・キュイジーヌ(Nouvelle Cuisine )
フランス語の単語で最初の文字が大文字になるのは、特定にスタイルの料理を表している。
1970年台、ゴ・エ・ミヨ創設者の1人であるアンリ・ゴが、シェフのポール・ボキューズやアラン・シャペルたちが取り組んでいた料理を指して呼んだ。
ヌーベルシノワ
1980年代に香港で凱悦軒というレストランのシェフが生み出した。
グランメゾン
日本でいうグランメゾンに当たる表現はフランス語にない。
白トリュフ
イタリアのピエモンテ州アルバが有名。
アルバ産白トリュフというのは高確率で間違い。白トリュフは森で採れるが、アルバには森がほとんどない。採れたとしても週に1-2個なので、日本に出回る可能性は低い。
現在のイタリアの法律で、イタリア国内で採れた白トリュフは、tartufo bianco del Piemonte もしくは do Alba もしくは di Acqualagna と呼んでいいとなっている。ピエモンテの白トリュフ、アルバの白トリュフ、アクアラーニャ(マルケ州)の白トリュフと呼ぶのは合法。
大きいものは珍しいが、大きさに関係なく鮮度が良ければ香り高い。
芯の部分のほうが美味しいというのは嘘。鮮度が落ちると表面に近い部分から水分が飛び、芯に近い部分まで掘らないと香りが残っていないだけ。
最も重要なのは鮮度、客の回転が悪い店だと1週間以上経っていることもある。
1998年頃のパリでは、高級レストランの白トリュフ尽くしのコースが4万円ほどだった。今ではこの3倍以上。
三ツ星レストラン「ピアッツァ・ドゥオーモ(Piazza Duomo)」のトリュフ単価は、2014年には1g7.5ユーロ、2023年には1gあたり14ユーロだった。
和牛 WAGYU
黒毛和種、褐毛和種、日本短角種、無角和種のなかで、黒毛和牛が海外に輸出され人気を博している。
海外のレストランのWAGYUは日本産でないことが多く、黒毛和種の血統を海外に持っていき、現地の牛と交配させたもの。この交雑牛F1がWAGYUの大半を占めている。
最近ではpurebloodと呼ばれるWAGYUもあり、これは黒毛和種と交雑牛をかけ合わせたもの。
アメリカやオーストラリア産のWAGYUが世界を席巻している。
日本産の黒毛和種は間違いなく世界で一番高い牛肉。
等級: A5など。歩留と肉質を表す。
BMS: ビーフ・マーブリング・スタンダード。12段階。サシの入り方を表す。
良い和牛とは
肉本来の風味が豊かでありつつ、雑味がなく、余韻が長い。
サシは入っているが、細かいので見た目はピンク色でなく濃い赤色に近い。
食べた後もたれない。
A4の場合もあるし、BMSも10以下かもしれない。
麤皮あらがわ:神戸。ステーキハウス。
市場を通さず相対で仕入れている。
ピラミッドの頂点を引き上げるのと同時に、ボリュームゾーンの質を改善していくのも重要。また別の価値観のピラミッドを作ることも大事。
イタリア料理=トマトではない
トマトが料理に頻繁に登場するのはローマのあるラツィオ州やその東のアブルッツォ州より南、中でも南イタリア。北部では伝統料理にはほぼ使われていない。
1970年代以降、北部にもトマトが流通するようになった。
北部でも大量生産しやすいトマトソースが給食に登場し、内臓料理などに代表されるピエモンテの伝統料理が好まれないという現象が起きている。
イタリア料理=オリーブオイルではない
北部ではバターを使う。
burro di malga: 高地の山にある草原で育った牛のバター。
コントラーダ・ブリッコーニ(Contrada Bricconi): 天然酵母パンと自家製バターのレストラン
パスタ
スパゲッティなどの乾麺は主に南、詰め物をするような手打ちパスタは主に北。
地域によって多種多様なパスタが作られていて、50km移動したら違うパスタがあったり、同じパスタが違う名前で呼ばれている。
フィレンツェの伝統料理にこだわっているトラットリアに行くと、パスタはない。パッパ・アル・ポモドーロ(pappa al pomodoro)というトマトのパン粥。ミネストラ(minestra )と呼ばれる野菜のスープ。観光客向けにフィレンツェのトラットリアもパスタを提供している。
ピッツァ
ピッツァ・ア・デグスタツィオーネ(pizza a degustazione): グルメピッツァ。北イタリアヴェローナが中心。イ・ティッリ(I Tigli)、レナート・ボスコ・ピッツェリア(Renato Bosco Pizzeria )など。生地にこだわっている。トッピングだけで料理として成立しそうなものもある。Pizza Bar on 38th。
ピッツァ・アル・ターリオ(pizza al taglio): 切り売りのピッツァにさまざまなトッピングをのせて、スライスごとに販売する。ローマのピッツァリウム・ボンチ(Pizzarium Bonci)。
ナポリ風ピッツァ: ノティツィア(Notizia)。ぺぺ・イン・グラーニ(Pepe in Grani)、イ・マサニエッリ(I Masanielli)。
パエリアはスペインを代表する国民的料理ではない。
バレンシア州発祥の料理で、バレンシア州を中心にその北のカタルーニャ州や南のムルシア州など周辺地域で食べられている郷土料理。
観光客相手の店に多い。
スペインの高級レストランでパエリアが出てくることは稀。
もともとの発祥はウサギの肉とカタツムリを使ったもの。農民が農作業に出るとき、大きな鍋を持っていき、畑でランチに食べられる料理として生まれた。
米料理はスペイン各地にある。イカスミを使ったパエリアのようなアロス・ネグロ。細くて短いパスタを米の代わりに用いたフィデウア。バスクには、アサリのおじやのようなアロス・コン・アルメハスがある。
スペイン料理とは、風味を凝縮させた料理。もとの食材が持っている風味を熱を加えるなどして凝縮させるのが、スペイン料理の大きな特徴。
とくにバスク料理。汁気のあるもの、出汁的なものを煮詰めて味を濃くしている。凝縮感やねっとりした食感こそがバスク料理。
粘度を高めることで、味わいを舌の上に長くとどまらせ、余韻が長く続く。
スペインは魚介に関して、ヨーロッパの中で最も理解が深い国。魚介味わい尽くす。
バスク地方のサン・セバスティアン
美食の街として世界的に有名。
バルホッピング: カウンターに並んでいるものや、メニューを見て注文したものが少しずつ出てきて、チャコリという発泡酒を飲みながら数品食べたら、次の店に行く。何軒かハシゴする。
アサドール: バーベキューのこと。肉や魚をシンプルに焼いて出す店。カサ・フリアン(Casa Julian)、エルカノ(ELKANO)。
フランス国境近くのライア・エレテギア(Laia Erretegia)、エペレタ・エレテギア(Epeleta Erretegia)。
パンプローナ郊外のビデア・ドス(Bidea2)。
tiede: フランス語でなまあたたかい、ぬるい。メニューに書いてあることがある。イタリア語だとtiepido 。
高級フランス料理やイタリア料理に熱々のものはほとんどない。宮廷料理をルーツに持ち、厨房とダイニングルーム距離が離れていたので、熱々で提供する文化が育たなかった。
中華の炒め物は熱々で食べるべきものの筆頭。
常連
通い続けているお店が、自分にとってのホームグラウンドになり、他のお店を体験するうえでのひとつの物差しになる。
日本のほとんどのお店は、季節によって食材が大幅に変わる。季節ごとに4回は訪問しないと、お店がわかったとは言えない。食材が強いときもあれば、弱い時期もある。弱い時期は、技術でどうカバーするか。それgs定点観測の醍醐味。
常連がやるべきは、料理人と一緒に成長すること。料理を定点観測して感想を伝えたり、料理人にとって勉強になるような課題を提案する。
自分なりに考えをまとめて、料理人の気持ちも考え、キャリアの中で今どういうステージにあるかも勘案して、伝えるべきフィードバックを返す。
<第5章 美食を生み出す一流料理人の仕事>
お客さんに愛され、長く続いていて、ガストロノミーとしての伝統文化や創造性を体現しているお店や料理人に共通している点。
①自分の料理がどういう料理か、定義できている。
地元の食材、薪を使って調理など。
何をやらないか、使わない食材や調理法などを定義できている。
自分自身のオリジナリティは、やらないことという縛りを設けることでより明確になる。なんでもやります、では逆に軸がなくなってしまう。お客さんも何を期待していいのかわからない。
利用シーンが思い浮かばない店は、特に悪いところがなくても、自然と足が遠のく。特に東京のようにレストランが無数ある市場においては、万人に受けようとすると、結果的に誰からも選ばれない店になる。
「何をやらないか」と同時に、「どういう人には来てもらわなくてもいいか」を決めるのも重要。
②自信があること
等身大の自分を理解している。
自信がない料理人は、食材を多めに盛り込む。高級食材をてんこ盛りにする。コース全体の皿数が増えがち。どれかがお客さんにハマってくれればいいと考える。
③常に進化している
伝統を守り受け継いでいるお店でも、一流のお店は進化を続けている。
お客さんの好みは時代とともに変わる。
お客さんの層は若返るし、常連さんに美味しいと言い続けてもらうためにも、レシピを微修正し続ける。
④やりたいことと求められることバランスが取れている。
シェフが自分のやりたい料理を提供し、それでお客さんが集まるレストランが理想。
世界中のほとんどの国では、レストランはお客さんが求める料理を提供することしか期待されていない。
レストランは商売。
食べ手と作り手の間には圧倒的な情報の非対称性がある。
ほとんどの料理人は、新しい料理の開発に時間と労力をかけている。
しかし食べ手は、出てきた料理を1-2分、短いと1分もかからずに食べてしまう。
食べ手として常に謙虚で、料理人が込めた意図の一部しか理解できていないかもしれないことを、心に留めておくべき。
一方で作り手も、食べ手との情報格差を意識して料理を作ったほうがいい。
アサドール・エチェバリ(Asador Etxebarri): 薪焼きを世界に広めた
料理人にとっては何百回作った料理だとしても、お客さんにとっては初めてかもしれない。
お客さんを楽しませることにモチベーションを感じたり、一見同じ食材に中日によって違いを出して新鮮さを失わずにいたり、自ら能動的に地元の食材を発掘したりできるのが、一流料理人。
フォリオリーナ・デッラ・ポルタ・フォルトゥーナ(Fogliolina della Porta Fortuna ): 軽井沢のイタリアン。小林幸司シェフ。濃厚なイタリアの香りがし、かつ誰にも似ていないオリジナリティがある。
生のサーモン
高級寿司店では見かけない。あるとすれば、鮭児や時鮭くらい。
普通にサーモンは、脂が強すぎ、風味も単調で強く、雑味も多い。
握りのコースの中で出すと、バランスが崩れ、油の余韻が、続く握りを邪魔する。
高級寿司店でしか働いたことがないと、大量に握るという経験がないまま独立することになる。
型ができるまで経験を積む、これも技術を本当に自分のものにするうえで大事。
サスエ前田魚店
静岡の魚介の仲卸。前田尚毅。
八木真という漁師に協力を仰いでいる。
青魚の臭いは劣化しているから出るもの。
漁獲方法、市場で魚介を泳がせておく水槽、セリ後の血抜き、神経締め、冷やしなど、すべてに気が配られている。
日本の野菜は風味が繊細でやさしい。味が薄い。
唐辛子は日本の酸性の土壌に合わず、朝鮮半島のアルカリ性の土壌に合う。
日本の唐辛子は辛さはあるものの、それ以外の風味が薄い。
グリーンピース
ギサンテ・マレズメ: カタルーニャのグリーンピース。冬の終わりから春にかけて出てくる。
ギサンテ・ラグリマ: バスクのグリーンピース。森のキャビア。
ピゼッリ・チェントジョルニ: イタリアのグリーンピース。ヴェスヴィオ山の麓で育てられる伝統野菜。
日本のグリーンピースは、皮が分厚く下に残り、みずみずしさがなく、青臭く、クセが強い。
日本の生産技術は世界有数。
ただ日本の土壌や気候で育つ野菜が、そういう方向性になる。消費者もそれを好んでいる。
国内では需要と供給がマッチしているが、海外で好まれる野菜の価値観とは異なる。
ヨーロッパの野菜は味が濃いので、塩、コショウ、オリーブオイルだけで十分にサラダとして成り立つ。野菜が主役で調味料は脇役。
一方、日本の野菜は風味が強くないので、ドレッシングで味を補わなければならない。
日本の野菜は出汁と一緒に煮たり炊いたりするのが一番合う。日本人は昔、野菜を生で食べる習慣はほとんどなく、煮物、汁物、漬物にして食べてきた。
デンマーク [ノーマ(Noma)] ーレネ・レゼピ
ニュー・ノルディック宣言を先導。
関わっている人たちが優秀で士気が高い。
レネ・レゼピのリーダーシップ。
料理人が自分で料理を運び、お客さんに自分で説明をする。
デンマーク [アルケミスト(Alchemist)] ーラスムス・ムンク
劇場型レストラン。
社会的なメッセージ。
スペイン [アサドール・エチェバリ Asador Etxebari] ービクトル・アルギンソニス
薪焼きの魔術師。
イタリア [アトリエ・モエスマー (Atelier Moessmer)] ーノルベルト・ニーダーコフラー
クック・ザ・マウンテン。
ドロミテ渓谷の中のブルニコという街。
その山のものを含めて近隣の食材しか使わない。
消化器系部位も使って三つ星を取ったレストランというのは、ヨーロッパでは初めて。
カジュアルな店で出すような食材を使って驚くような料理を出す。
コントラーダ・ブリッコーニ(Contrada Bricconi): 卒業生が山の食材に取り組む。
アマン・ヴェニス: クック・ザ・ラグーン
イタリア [リストランテ・ウリアッシ(Ristorante Uliassi)] ーマウロ・ウリアッシ
マルケ州アドリア海岸沿いにある。
もともとは海の家のようなカフェだった。
ジビエのコース。
年中ジビエのコースを食べられる店は、三ツ星クラスではここが唯一。
ペルー [セントラル (CENTRAL)] ーヴィルヒリオ・マルティネス
2023年度「世界のベストレストラン50」で第1位。
もともとガストン・アクリオというシェフがペルー料理のアンバサダーとして知られている。
ペルー固有の食材を徹底的に掘り下げている。
ペルーは海もあれば、標高5000mを超える山もあり、多種多様な生態系がある。季節の移り変わりはないが、標高によって気候はドラマチックに変化する。
高度をテーマとしてコースを構成し、異なる標高ごとに特徴的な食材を料理に落とし込んでいる。
ミル(MIL): クスコ郊外のレストランと研究所。ペルー固有食材の保全に力を注ぐ。
ヴィルヒリオは周辺の部族と交渉し、彼らが納得する形で作物を買い上げる契約を結んだ。
中国 [新栄記(シンロンジー)] ー張勇
グループで30店舗以上を展開し、ミシュラン三ツ星を筆頭に二つ星を複数の店舗で獲得する。
中国随一の高級レストラングループ。
上海から南に高速鉄道で3時間行った台州の臨海が本拠地。
自分で中国全土を回り、いろんな食材やレシピを見つけてきて、テストキッチンで実験し、台州料理に取り入れていった。
今までになかったひとつの中国料理を作り出した。各地のレシピを発掘し、編纂した。
台州料理の店なのに、北京ダックが美味しい。四川や湖南を連想させるスパイシーな料理もあれば、広東料理のような乾物を使った料理もある。
東京 [鮨 さいとう] ー齋藤孝司
日本の鮨において、現代における最高峰。
握りの姿が美しい。均整がとれている。構成要素が過不足なく、バランスよく配置されている。
口に入ったときのサイズ感が、大きすぎず、小さすぎず。酢飯と鮨種の大きさや量の比率も、ぴったり。口の中でほどけたときに、同じタイミングで儚く消える。
富山 [レヴォ (Cuisine regionale Le’vo)] ー谷口英司
日本を代表するデスティネーションレストラン。
富山とすぐ近くの山の食材を研究している。
ジビエ。熊は世界のほとんどの国で保護対象だが、日常的に食材として使っている。
穴熊や狸、猪など。天然のカエル。
金沢 [片折] ー片折卓矢
ほぼ毎日自分で魚市場に行き、自分で魚の目利きをしている。
野々市市のすし処めくみの山口尚亨に師事して目利きを学んだ。
<第6章 私たちは何をどう食べるのか美食の未来予測>
岩本徹三飛曹長「死んでは戦争は負けだ。われわれ戦闘機乗りは、どこまで戦い抜き、敵を一機でも多く叩き落とすのが任務じゃないか。一回の命中で死んでたまるか。俺は『否』だ」
大西中将が語る特攻の真意
一度でよいから敵をレイテから追い落とし、講和の機会を作りたい。
東京で講和のことを口に出そうものなら、憲兵に捕まり国賊として暗殺される。
特攻は九分九厘成功の見込みはない。
天皇陛下はこのことを聞かれたならば、戦争をやめろ、と必ず仰られるであろう。
いかなるかたちの講和になろとも、日本民族が滅びんとするときに、身をもってこれを防いだ若者たちがいたという事実と、これをお聞きになって陛下自らのお心で戦を止めさせられたという歴史の残る限り、五百年後、千年後の世に、必ずや日本民族は再興するだろう。
ニ〇一空副長・玉井浅一中佐と飛行長・中島正中佐は、特攻を積極的に推し進めた。
なかには歴戦の岡部健二飛曹長のように、特攻反対を公言してはばからない搭乗員もいたが、若い搭乗員が否の意思表示をするのは勇気がいることだった。
玉井中佐は情の厚い人で、部下思いで知られていたが、特攻作戦を指揮する立場になると、敵が発見できずに帰投した搭乗員を叱り飛ばし責め立てるなど、やや精神の平衡を欠いてきている様子が窺えた。
二度、三度と特攻出撃を繰り返しているうち、戦友がみんな死んでいるのに自分が生きているほうがおかしいと、だんだん意識が変わってきた。
出撃前の別杯も、最初はお神酒だったのが、次は水杯、あとになったらそんなこともしなくなった。
<第6章 私たちは何をどう食べるのか美食の未来予測>
日本のレストランビジネスは、世界一競争が激しい。
開業するうえでの参入障壁が低く、飲食店の絶対数が非常に多い。
ワンオペの店は、日本以外に各国では鮨屋などを除くとほぼない。
シェフとは別にソムリエがいないと成り立たない国が多い。皿洗いを雇うことも多い。
少なくとも3人の店。
パリでは新しいレストランを開くには、原則として既存のレストランの営業権を買い取る必要がある。
民家などを壊してレストランを建てることがほぼ不可能なため、店の規模は自動的に決まってくる。
プラントベース
イレブン・マディソン・パーク(Eleven Madison Park): 2021年にプラントベースへ全面転換。
ゲラニウム(Geranium): デンマーク。
ファロ(FARO): 銀座。ガストロノミーとヴィーガンを両立させている。
ティートン(TEATON): 会員制ティーサロン。ヴィーガンスイーツ。
大間まぐろの定義は2022年に変更され、大間沖で取れたものだけでなく、日本海や太平洋のものも、大間港に水揚げされたら大間まぐろとなった。
イカの回遊ルートが変わることで、マグロの生息地や味わいに大きな影響が及んでいる。
ヴェニッサ(Venissa): ベネチアにある外来種の貝などを食材に、地域の料理を参考に独自のイノベーティブな料理に落とし込んでいる。
農協を前提とした仕組みは、ビジネスに安定性をもたらす。
それだといくら良い物を作っても、そうでないものと同じ価格でしか売れない。
よりよくするインセンティブがない。
コストを下げることに注力してコモディティを大量生産するのであればそれでよい。
プロダクトアウト: よいものを作っていれば売れる発想。
いかに生産者が頑張っているか、その土地が恵まれているか、その生産物が素晴らしいかの発信しかないことがほとんど。消費者は数多くの選択肢がある中でどれかを選び取っているという観点が抜け落ちている。
発信というのは情報を発信することであって、相手が受信するかどうかはその言葉の意味に含まれていない。一方的な言葉。
マーケットインの視点があれば、まずは消費者のことを知ろうとする。消費者が比較対象とする競合はどこで何か。
梶谷農園: 広島。ハーブ。レストランが使うハーブを欲しいサイズで欲しい量だけ提供している。
富山県
レヴォ(Cuisine regionale L’evo)の谷口英司シェフが中心となり、料理人同士が積極的に交流しています。
使いたい食材があるが、生産者にそれを作ってもらうようお願いするには量が少なすぎる。そういうときに、複数のお店でその食材を活用することで、生産者としても経済合理性がある形で協力できるようになる。
静岡県
ガストロノミーが盛り上がっている。
サスエ前田魚店の前田尚毅が中心となっている。
漁師と連携してよりよい形で魚が市場に届くよう働きかけている。市場の一角で処理し、車で数分の距離のお店に運び、そこに近隣でお店を営む料理人たちが取りに来る。
新潟県
クリエイティブディレクターの岩佐十良。
ローカルガストロノミーという言葉を生み出し、新潟ガストロノミーアワードを立ち上げた。ローカルガストロノミー協会と新潟県観光協会が主催で、新潟県内の優れたレストランや宿を表彰する。
<フーディーとして生きるということ>
自分にとって食べる意味があるもの以外は食べない。
ちょっと小腹がすいたから、そこら辺にあるものを適当に食べる、ということは絶対にしない。
胃袋は有限の資源。