人類の運命はバクテリアと同じなのか
「スケール」(ジョフリー・ウェスト著 早川書房)を読んだ。上下巻あって、まだ上巻だけしか読んでいないのだが、生物の生と死、成長と衰退に関する普遍的な特徴が、都市や企業、経済にもあてはめて考えることができるといった考察がされていて、非常に興味深かった。著者は物理学者なのだが、50を過ぎたあたりから「人の死」について強い関心を持つようになったのだという。
物理学者というだけあって、生物という複雑で多様な世界にあっても、何か普遍的な法則を求めて、一級の生物学者達と議論しながら探索が行われる。
読者はその思考プロセスを著者と一緒に見ながら、「スケール」という普遍的法則の特徴や構造について知るところとなる。
一部、文字だけだとすぐに理解が難しいところもあるが、TEDで高レビューを博していたこともあり、文系の私でもある程度理解できるくらい、内容は極力分かりやすく書かれてあるように感じられた。
本書には「スケール」に関わるいくつかの法則が紹介される。例えば「クライバーの法則」というもの。
これは、猫とネズミを比べた時に、体重は、猫:3kg、ネズミ:30gで体重差は100倍ある。一方でエネルギーの代謝率は、猫:32ワット、ネズミ:1wで32倍しかない。これは比率で表すと3/4(質量の増加分に対する代謝率の増加分の割合)という形になるらしい。
そして、この3/4という法則は、他にも当てはまって、例えば大動脈と木の幹の断面積の成長率も3/4となるらしい。
その他、「フラクタル」や「インピーダンス」など、いろいろな法則や用語が登場し、ちょっと頭がくらくらしてくるが、中でも気になったのは次のような話だ。
我々の暮らす世界は、上記のような「スケール法則」に従って出来ているらしい。人の成長も、生物の成長も、そして企業や都市の成長といったものも、全てこの法則に従う。
これれは、ある一定期間の間は、指数関数的に成長していくが、ある時から成長がとまり、衰退していくことになる。図にすると、上がつぶれた逆U字形のような形になる。
例えば、閉じた空間においてバクテリアを培養させる実験を行ったとしよう。すると、最初の内はその数の増え方は目に見えないくらいの数なのだが、ある時から急にその成長速度が高まる。一気に増えた後は成長が止まり、その後は増える空間を失い衰退していく。といったものだ。
これを人類の未来になぞらえることは少々乱暴かもしれないが、資源の限られた閉鎖系に住んでいるという意味では、バクテリアも人類も変わらないかもしれない。
今や世界中に大規模な都市が増え、マネーも増殖し、エネルギー消費も拡大する中、まさに指数関数的に人類の成長は続いているように見える。
この先の成長の限界を乗り越えるためには、閉鎖系を越えて宇宙に出るか、人間の精神に変化を起こしていくしか道はないのかもしれない。
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