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kotarostudio
【創作】弱者から見たソレは
とある日の音楽堂のステージで、合唱部による県大会予選が行われていた。
ポロン、ポロンと静かにピアノの伴奏が鳴る。流れ出したメロディーが空気に乗り、会場の1番奥まで音を届けた。
何もかもが大きく感じた。客席も、ステージも7人にはとても広く、大きい。同じ壇上にいる筈なのに、他のパートの声が届かなくなる事がある。隣にいる仲間の声も聞こえず、酷く孤独だ。
指揮者と伴奏と、視界に入る仲間の姿が私は一人じゃないと実感させるが、スッカスカの雛壇を埋めるよう、30cm程開かれた互いの距離が私を萎縮させた。
私の声、聞こえてる?
指揮者が落ち着くように指示を出すが、私達の気持ちは急いて、歌は走る、はしる、はしる。
あぁ。みんなも聞こえていないんだ。
私はステージが好きだ。スポットライトがキラキラ輝くこの場所は自分が主人公になれた気がして大好き。
ステージ上で余裕を持てるように、必死で練習すれば見れる景色があるという事を私は知っている。
あ、あの人寝てる。バレたら怒られるのかしら。なんて思ったり。余裕を持つってすごく大切。
聞き苦しくない音楽を作るのが最低ライン。
見ている人に楽しんでもらうのが最高目標。
賞を貰えたら嬉しいけど、初めから結果はわかってる。自分達が楽しむために、私達は歌うのだ。
勝つための歌は楽しかった。けれど仲間も敵に思えた。
勝てない歌は自由だった。互いの個性に文句を言いつつ、自分らしく歌うことを許された。
仲間と一つの作品を作り上げる楽しさを知った人間は、いくつになってもステージを恋しく思うのだろう。
例えそれが、結果に結びつかくても。
「〇〇高校の演奏でした。続きまして……」
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